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>>176
[神の誅戮の剣として形づくられた男は、それに答える要を感じなかった。
必要とあらば、生命を捨てることも修道騎士の使命。
己の生死も魂も、はなから神と教会に委ねている。]
>>178
[視線を向けられても、その硬い面は変わりなく儼乎なまま。
アデルのもの問いたげな様子にも、聖女の怯えにも、気付いていなくはないのだろうが。
少年少女に安堵を与える言辞は、ついぞその唇から出でることはない。]
私は魔を滅せんがために此処に在る。
それ以上でもそれ以下でもない。
[分かりきったことを言わせるなと言いたげな眼差し、端的に答えた。]
>>231
[同じ魔物殲滅を標榜しつつも、聖騎士を輩出した名家サイキカル家と修道会は立場も思惑も異とする。
故に互いに一朝事あらば袂を分かつと了承しつつも、バルタザールはこの一見軽佻な剣士に背後を委ねるを躊躇しなかった。]
……貴様がこの討伐隊の帥だ。
好きに使うがいい。
[最も合理的と判断した陣形ならば、と黙して後尾から前に歩を進め、聖女と神子、二人を守れる位置につけた。]
[もっとも、城に突入し、乱戦になれば、超常の魔物どもを相手にどれほど彼、彼女を守れるか、分かりはしないのだが。
虚偽を嫌う男は、心の内に何を秘めようと、気休めや方便で軽々しく約束を口にしない。]
>>265
[アデルの声やソマリとのやり取りは、前に位置どった修道騎士の耳にも入っていたのか、]
お前にそれを振らせないために私がいる。
[振り返らない背が、ぼそりと告げた。
歩を緩めることなく進む。]
だが、心構えだけはしておけ。
――そこらへんにしておけ。
[短い囁き。
ちょっかいを出している将に釘を刺す。
掌握のためと察すれど、藪を突いて蛇を出しては元も子もない、と。]
俺は子供でも使う。
君も使う。
覚悟も使う、信念も使う、信仰も使う。
義務を果たすとはそう言うことだ、親友。
俺が言えた義理じゃあ、全く無いが。
―――…君もつくづく不器用な男だな。
[坦々と囁く声。
最後ばかりは、気安い溜息を空に吐いて漏らした。]
私は主の御心に従っているだけだ。
[呵責なほどの純粋さゆえに、外観に心を配ることも無く。
逆に、揺るぎなき信仰を持つバルタザールには、貴顕の責務にこだわるソマリに、焦りにも似たものを感じていた。]
己で何もかも背負うは、不遜に通じるぞ。
[聞こえるか聞こえないかの低い呟きは、傍らの戦友へのもの。
親友と呼ばれるは面映く、またそんな言葉で表現できる間柄ではないとも思う。]
言辞を弄して私を動かそうと思うな。
貴様は
[叱り付けるが如き、鋭く短い囁き。]
[やがて梢の先に、聳え立つ城のシルエットが垣間見えるようになり。
木立の切れ目から覗く、不吉に赤い、茨の城。
決戦の刻は近い。
修道騎士の顔には緊張も高揚も無く。
ただ鋭く見据える眉間の辺り、薄らと研ぎ澄まされた気が漂う。**]
[神が無垢で素朴な魂を愛でられるのならば、彼ら神子、聖女をあるがままにしておかねばならぬ。
神聖なる単純さ。
それでこそ、彼らは十全に神の栄光を体現する機関となろうと、そう考えていた。
それは優しさという感情とはかけ離れていたが、結果として、少年少女を困難や暗部から隔てようという心情に繋がった。]
―森の中―
[城を目前にすれば、血気に逸る使徒もいる。
漸く、と呟くオズワルドの呟きに重ねて、クレステッドの力強い首肯が聞こえてくる。
そこに絡みつくような熱望を感じ、ソマリ配下となった奴隷騎士の経歴を記憶から呼び起こす。
数多の戦場を渡り歩き、名声と悪名を恣にした騎士。
失墜して奴隷身分にまで堕ちたが、その戦闘能力の高さと尋常ならざる闘争への渇望を買われて、使徒の一員に加えられた。
バルタザールは、以前退魔の騎士としてクレステッドの名を聞いていた。
共闘の経験はないが、所属する隊が修道会の任務の途中で、別方面からの依頼で動いていた彼と鉢合わせしたことがある。
その折に、隊長から彼の名を教えられ、ちらりと顔を見る機会があった。
当時は、騎士の未来は順風満帆に見えた。
だが、彼が次第に人間相手の戦争にも手を出すようになり、度し難い戦闘狂として知れ渡るようになると、修道会では殆ど噂を聞かなくなった。
自身、顔をあわせるまで忘却していたほどだ。]
>>345
[城を観察しながら、使徒たちの様子も窺っていたバルタザールは、聖女の指すものに気付くのに一呼吸遅れた。
既に周囲の気配は探って、差し迫った危険は無いのは確認済みではあったが、一応の警戒はして、対象の小動物を睨み据える。]
……あれは。
栗鼠、だ。
木の実を食する無害な生き物だ。
魔に汚染されていなければ、特に脅威ではない。
[教会の中だけで育てられた聖女に、教える。
もっとも、自身も幼少時に小動物を愛でた記憶など無い。]
[ユーリエの「解放する」>>350という言葉の意は、修道士には理解できなかった。
だが、何がしかの決意のようなものは感じ取り、ただそれを無下にしないために小さく頷いた。]
[聖女が、何であれ意欲を持って使命を果たしてくれるなら、それでよかったのだ。
信仰に外れた言動でないなら、取り立てて口を挟む必要はない。]
[魔物の棲息する領域の生物は、一見無害そうに見えても油断は禁物だ。
体内に低級な魔が潜んでいたり、使い魔に改造されていたり、罠を仕込まれていたりと、悪質なやり口は枚挙に暇が無い。
直接攻撃はしてこなくても、偵察監視に使われれば対処はしにくい。
魔術の痕跡が無ければ、察知は難しい。
駆除もひとつの方策ではあったが、]
[暗色のマントは銀鎧を覆い隠し、意外な調和を以って木陰の薄暗がりに溶け込む。
茨に囲まれた城を見据えて、聖将に問う。]
――ソマリ。
結界の展開には、どのくらいまで近付く。
[隠身など期待できない神子と聖女、
封鎖の範囲と完了までの時間を考えれば、早いほど良い。]
[バルタザールがクレステッドを見る目は決して穏やかなものではない――そも誰に対しても、冷厳として険しいのであるが。
男の内部では、彼への感情は、実験体ふたりに対するより更に冷ややかだ。
修道騎士にとっては、奴隷騎士の行状は堕落の極み。
力に溺れて、神より賜った恩寵を自ら損ない、魂を危機に晒した。
使徒として、その能力を使って教会のために奉仕するは、贖罪の機会となったやも知れぬが、当の本人に敬神と悔悟の心がなければ、兇暴な野獣に暴れる場を与えてやったのと何ら変らぬ。
それでも、彼が神の力の一部であることに変りはないし、教会はそれを肯定している。
ソマリならば「使えるものならば何でも使う」と表現するだろう。]
貴様には何も期待していない。
全力を以て害邪を蹂殺しろ。死力を尽くせ。
貴様が狂乱して牙剥くならば、私が滅してやる。
[峻烈な一瞥とともに投げるは、そんな言の刃(コトノハ)。]
君に言われるとお終いだと思うのだが。
[硬き心と身体を持つ相手の言葉をそのまま返す。
彼は己が持つ義務から外れる珍しい相手であった。
彼に護られようとも思わないし、
彼を護りたいとも思わない。
そういった強弱を超えた信を寄せる相手であった。]
君が俺の言葉を聞いてくれているのは知っているよ。
俺の心の臓を見る君の目に、今更腹探りなんてさせやしないさ。
[軽く笑って、掌揺らす。
利己と打算に塗れた腹内を、大儀有する彼に見せることも厭わない。
己の信とは、常に対する者を試すに似る。
そして、彼は唯一、この世界で試すに足る男だった。]
――ならば、私の役目は盾か。
[ソマリの返答>>400に、城門を見据え、更に前へ進み出る。
鎧を隠すように纏っていたマントを跳ねのけ、肩から流す。
ふわりと残影を残して――覗くは弓手に握る鞘。]
[鋼鉄の刃の如く、ひとつの目的の為に極限まで研ぎ澄まされた男は、己の脆さに気付いてはいない。
その脆さは、接した誰にでも分かるものなのか、それとも、心に隔てを置かない者だから気の付くものなのか。]
[己を刃と見做す男は、振り返らず後背の神子聖女らを守る位置に陣取る。
左右へ展開する使徒たちを気配だけで確認し、圧し掛かるように影落とす城を前に、突き立てた剣の如く屹立して、その瞬間を待つ。]
[ス、と剣先を彼の背中に向け。
十字を切る。
彼がそれに気付くかは知らない。
その上、自身は神を余り信じていない。
ただ、信頼する背中に、彼の信じる神の祝福を切った。
名ばかりの血に穢れし、聖将は、少しだけ。
彼に加護と言う名の、信を掛けたのだった。]
[満ちる神聖な気を背後に感じ、腕を前方に伸ばし鞘に納まった剣を掲げる。]
大いなる全能の神にして、その御名は万軍の主。
[低く唱えた聖句は、高圧の霊気で軋む大気に消え。]
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