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― 厩舎 ―
フォアライター、お前もここに来てたのか。
[在学中の良い相棒だった栗毛の馬を見つけ、首筋を叩く。
甘える仕草は仔馬の頃と変わらないが、
筋肉の張りも毛並みも、脂が乗った壮年のものだ。]
おまえが死んだんじゃなくて、
俺の心の中から出てきた夢だったらいいのになぁ。
[話しかけながらブラッシングしてやる。
馬は答えず、気持ちよさそうに首を振るわせるだけ。]
― 青い大地 ―
[フォアライターに鞍を乗せ、手綱を引いて外へ出る。
学校の外には何もないかと思ったけれども、
大地は青く霞みながらも遠くへ広がっていた。
馬に跨り、駆けていく。
草原へ、街へ、気の向くままに。
人や動物は、ところどころに見かけた。
気付かれることもあれば、すり抜けることもあり、
彼らが生きているのか死んでいるのかは判然としない。
何度か、じっと立ちつくす兵士の姿も見た。
足元には、彼の体が横たわっているのだ。
そんなときは決まって周囲に散らばる無数の遺体が視えた。
馬上で短く祈りを捧げ、静かにその場を後にする。]
[いつしか、馬の足は鍾乳洞の前へと辿り着いていた。]
懐かしいな。
レトとせんせいと一緒に探険したのが最後だっけ。
[馬から下りてひょぃと覗くと、奥から何かがすごい勢いで走ってくる。]
うわ。おまえまだここにいたのか!
[うなり声を上げながら飛びついてくる白いもふもふを
両手で抱き留め、盛大な歓迎に声を上げて笑う。
歓迎というか、噛まれているのだけれども、
痛くないと思えば痛くない。]
せっかくだから、おまえも一緒に来るか?
せんせいも喜ぶし。な?
[にこやかに決めつけて羊的もふを小脇に抱え、
学校に帰る道へと馬を走らせた。]
───そうか。
[彼が引き継いでくれたのだ。
納得と同時に、熱いものが迫り上がる。
ならば自分も共に往こう。
ごく自然に、馬の足を隊列へと向けていた。]
おまえは、連れていけないからな。
[その前に、と抱えていた羊モンスターを地面に下ろし、
メモを書き付けた布を首に結びつける。]
いいか。これを学校のシロウせんせいに届けるんだぞ?
ついでに、もふもふされてくるといい。
きっとご馳走もらえるからな。
[言い聞かせて手を離せば、もふもふはたちまち走り去る。
メッセンジャーの成果は、正直あまり期待していないけれど、
別にそれでも構わなかった。
『戦いの行く先を、この目で直に見てきます。』
託したメッセージは、半ばは自分の覚悟を固めるためのもの。
何が起ころうとも目を逸らさない、という。]
[ソマリの声が、風に乗って部隊の隅々まで響いていく。
弔い合戦ではない。その言葉>>111に、何人もが背を正す。]
目指したものを、掴むために。
大切なひとが、笑顔でいられる明日を ─── …。
[言葉を噛み締め、胸に収める。
見回せば、兵たちの顔がさっきよりずっと引き締まっていた。
仇を取るのではなく、願いを繋ぐために。
未来を勝ち取るために戦う。
前を見据える想いに貫かれて、部隊の心がひとつにまとまっていく。
部隊の端でそれを聞き、高まる空気を感じ取って、
自分もまた、胸が熱くなるのを感じた。
この人たちは、自分たちの想いも抱いて戦ってくれるのだ。
戦場に散った、たくさんの心と共に。]
[対する相手は、公国の竜騎兵団。
あそこには、ディークがいる。
広がる公国の陣のどこかには、
ベリアンも、レトだっているだろう。
そう言えば、ウェルシュはどうしているだろう、
と、視線が帝国の陣へと泳ぐ。
彼もまた、残された者の戦いに身を投じているのだろう。
力になれない自分がもどかしい。
今なら、近づいていって肩を叩き、
励ましの言葉のひとつも言えるだろうに。
───何に縛られることもなくなった、今なら。]
[なだらかな曲面描く盾は、実に効率的に銃弾の軌道を逸らした。
ソマリへと向かう弾をいくつも空へ弾き、地を穿たせる。
殺させはしない。
気迫だけで現実へと干渉していた。
生きていて欲しい。死なないでいてほしい。
一念を抱き、不可視の護り手となって傍らを駆ける。]
[ブラオクヴェレの盾は、未だソマリの傍らにある。
両軍の陣容が互いを凌がんと形を変え、激突するのを
奇妙な俯瞰視点で同時に眺めてもいた。
翼を広げる竜の懐へ飛び込んでいく獅子。
それぞれがひとつの生き物となって激突する陣の中では
個々の命が火花を散らしている。
凄惨さの上に、陣の美しさを見てしまうのは、
軍人という生き物の
[ソマリへ届きそうな流れ弾を密やかに弾きながら、
公国の陣中にある師匠へ視線を注ぐ。
親しい部下の一人がディークに斬られるのを目撃し、
ほんのいっとき、目を伏せた。
ディークにもソマリにも無事であって欲しいと想う矛盾。
それでも、生きていて欲しいと強く願う。]
[激突する騎馬隊の傍らで、中央の軍がぶつかり合う。
そこで旧友ら二人が激突しているのは、今は知らぬこと。
みな、無事で。
知っていれば、ただそう願っただろう。]
[刃を交えるソマリとディーク。
その側に影となって付き従い、
彼らの戦いへ水を差そうとするものを打ち払う。
彼ら同士の戦いがどう推移しようとも、
そこへ干渉するつもりなど無かった。
全身全霊をかけた戦いの末に、どちらかが斃れるならば、
それが運命というものだろう。
残された側が、斃れた者の意志と共に生きていく。
自分の心を、彼らが確かに継いでくれたように。
どちらが生き残ろうとも、必ず相手の心を受け止める。
それは、信じて見ていられた。]
[ それでも
願わくば、二人とも生きていてほしい。
生きて、未来を掴んでほしい。
切なる願いを抱きしめて、二人の戦いを見守る**]
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