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『 旗には風を、姫には愛を、王国には繁栄を。
如何な形であれ民を想う巫女姫の御心をお待ち申し上げつつ…。
ソマリ・フル・アレイゼル―』
― アレイゼル軍 本陣 ―
[東の空へと巫女姫へ向ける言葉が届けられるのを見送る直後。
オプティモの北門が開き、白旗を掲げる従者と、整然と行進するクレメンス軍の将兵すべて。
数を見れば随分と甚大な物だ。被害の報告をみれば、アレイゼル軍とて被害のすべては決して2000を降るまい]
[白旗を掲げ本陣へと近づく従者の姿。その手には書状だ]
状況を見るには降伏を受け入れてくれたのだな。
然しこの書状は。
ああ、以前に私が無茶を言い渡した…。
[然し書状はともあれ、クレメンス軍は降伏を受け入れた。
最悪、未だ戦いが続くかと緊張を孕んでいたアレイゼル軍の兵士達は歓喜し、戦勝に湧きだした。
投降兵達にはひとまず無碍にせぬ処遇を与えつつ、それらを背景に男は書状に目を通す]
[先の勧告の返事ではないが、書状に記されていたのは実質的な降伏宣言]
… … … …是非も無い。
既に王国の動きは大きく二分され、実質的に、使節団を潰す行いは不利を招く側面も出てきた。か。
ならば良いだろう、全ての条件を、アレイゼル領主の名の下に…?
… … … … …。
[然し書状の文末をその目にとめて、微かに三白眼が歪んだ]
…クレメンス卿はどうされているのだ。
私は卿と対面する必要があると感じるのだがね?
[告げれば、兵を率いた隊長がから、退去の猶予を望まれている事を教えられる]
… … … …よもやクレメンス卿…
[信書の文脈と、微かに不振な事情を聴き、不穏な想像を男は微かに浮かべた。
そして暫し男は悩むだろう、彼の卿に従い待つべきか、僅かな手勢と共に、念の為に領主館まで踏み込んでみるべきか と**]
― クレメンス・クレメンス邸 ―
[待ちきれず、僅かな私兵を伴い男がクレメンスの領主館へ訪れたのは
館の主が此処オプティモから離れて後の事]
クレメンス卿! 何処に居られるか!?
… … … …やられた。
終戦までこの邸で静養していれば、戦後の処理を分担できた物を。
[書状の文面から、彼の卿がオプティモに大人しく留まる気が無い事を予想はしていたのだ。
微かに、敗戦を受けて自裁など良くある流れも過ぎりもしたが、その様な玉では無さそうだ。邸に残された人間に問えば、既に出立されたとの事でもある]
…まったく、あの方は。
元々傑物にも関わらずのらくらして。
[ふつりと愚痴文句ひとつも吐きたくなる感情を珍しく覚える。
何処に赴いたは知れぬが、行方は捜す以外無いだろう]
…クレメンス卿の行方を捜しておけ。
結論オプティモの領主は卿でなければ勤まらん。
…戦後以内に潰し没落させる貴族諸侯の隠し財産二割。
及び別荘、愛妾館の数箇所をアレイゼル家名義で買収。
多少裏細工が必要にはなろうが卿の懐は対して痛まん。
その辺りで適当に茶を濁すのが、妥当な抗争賠償といった所か。
…この期に製菓専門の学院でも経営させてみるか?
[一拍置き。男は溜息を微かについて漸く、彼に振り返る]
…それでカナン・リリ大使殿。
君は何故、卿のいない邸で待っていたのだ?
…後、その仮面は何だ。共和国の流行か?
[領主館に残る男。逃げる事も無く、その建物にいた共和国の大使を見て、不思議ながらも困惑混じりの表情を微かに窺わせた。
視線はまだ大使の傍らにあるだろう仮面へ訝しげに注がれていた]
さて、それでは大使は私に何のお話があるのかな。
安心したまえ、貴公等の保証は、クレメンス卿との約定に含まれるが。
[然しそうではないらしい。安全を求めた人物の固有名詞に眉を顰め]
『巫女姫』、或いは『姫殿下』、だ。慎まれよ、大使殿。
[だが刺した釘は対して重要でもない]
…その心は如何に?
大使殿もご存知であろう通り、姫殿下は我らナミュールの魂そのもの。
さしもの解放軍とて、玉体に危機が及ぶ愚挙はそうそう犯せんと私は考えるが。
[紅茶を傾けるその三白眼が、意図読めず訝しげにカナン・リリを見据える。
大使は態々、取引、と云う言葉を使ってまで巫女姫の安全を求めた]
… … … … … … … … …それもそう。
[果実のコンポートのまろやかな味わいを愉しみ、片目を伏せてみせる]
あれほど美しく全臣民から愛される姫殿下を傷つけるなど王国の損害。
姫殿下も今や御年二十の御年頃。
輝かんばかりの神聖なる麗しさに跪くは星の数以上で… … …。
[そして。ちらりと大使の表情を盗む様に見た//]
[巫女姫で無く、私人と看做しシルキー個人を対象に。
表面的に見れば、当然余り見過ごしていい話ではないが]
… … …ほう。
[言葉を継ぐ時の反応で、微かに考えが頭を掠めた。
後の王国の事を考えれば、実は問題がなくなる方法がひとつ出来るのだ]
… …ああすまない独り言だ。続けて戴きたい。
[促し聞く話は、戦場に立つ事を決めた巫女姫についての偶像性]
ふむ。姫殿下は確かに出陣なされている。
この有事、ブラバンドの民はとても心穏やかではいないだろうな。
元々、彼の姫はナミュール史上でも稀有な巫女姫だ。
此度の動乱、近い将来揺らぐ結界の絶対性。
臣が人事を尽くして支えねば、巫女姫という神聖に響く恐れもある、と。
…クーデター…か。
悲しい物だね、対して王府にのさばる貴族共が忠義の臣とほざくのだから。
[王府にいるだろうそれらを思い、微かに三白眼が殺気を帯びたがすぐ解け]
さて。現に私は王府へ反旗を翻し、クレメンス卿始め、既に幾つかの貴族諸侯を排除した様な反逆者だ。
暴徒を操り、まつろわぬ民に囁き、王国と事を構える準備は万端。
残すは王都に迫り我こそが正義と謳い… … …。
… … … … …いや。回りくどい言葉は最早無駄か。
[言い回しを訂正する様に、瞳をひとつ伏せて、紅茶のカップを卓に置く]
…結論から言わせて頂こう。 可能だ。
[クレメンス家の者が、筆記を持ち出すのを横目に]
元々、私が解放軍に組みする事を決めたそもそもは。
クロード・ジェフロイの熱意と展望に心動かされた所もある。
然し私は、彼の様にとても熱くはなれない性質でね。
クロードも姫殿下も、未だ青い所はある。
それでいい。
彼等は、万の民に希望を与え、国を導く事はできるだろう。
然し、私やクレメンス卿、またはアレクシス・ユレの様に、裏から権謀術数を尽くしその屋台骨を支える臣ではない。
私が解放軍についたのはもうひとつ。
この内戦を程好い所で収束するように調整する役割を担う為と、解放軍も王府軍も潰れぬ落とし所を用意する為だ。
姫殿下の地位、御聖性、民衆の信奉。
まずはそれらを揺れなく保証する事は出来るだろう。
その点は、私、アレイゼル家当主の全力を持って誓おうとも。
あるとすれば、姫殿下の玉体に対する万一の不安だな。
クロード・ジェフロイは最低限のラインは弁えていようが。
件の姫殿下御自身の御心までは私に量れるものではない。
最終手段では、私自身が薄汚い蝙蝠を演じ、土壇場で姫殿下を御守りする事も理論上は可能だが。
…さて。その場合の私の命運には余り期待できないね。
[気安く嘯く様にして、再び紅茶のカップを指に掛けた]
…良いだろう、記したまえ。
共和国大使として、他国の元首の保証を依頼する信書ならば。
やがて到る開国後において、異邦の各国は決してナミュールを無碍には出来なくなる。
共和国大使は、王国元首、シルキー・カノエ・ナミュールの安全保障を依頼する。
対し、王国貴族アレイゼル当主は、その地位と実力、必要あらば武力を用いて、姫殿下の安全に尽力する事を誓う。
この誓約は、両国間の国交が結ばれた際、当該信書を以って、両国間の友好の証が一つと為す。
…貴公のその意志に偽り無ければ、文章を起こすと良い。
[そして、男は手を差し出した。取引と云われた通り、契約締結の握手を求める様に//]
― オプティモ・クレメンス邸 ―
[書記官が認める文書を良く確認する。確かに間違いなく。
"必要な"四文字もしっかりと添えられている事に小さく綻ぶ]
ふふふ、これが私なのでね。
例え時代や技術が先に進もうとも、人の種の性質は
王国も共和国もそう対しては変わりあるまい?
[観念した様な面差しを浮かべる大使をみて、にこりと友好的な笑みを浮かべてみせた]
… … … … …なるほど。
公人のみに限らず我らが巫女姫の御幸福を願われる。
大使殿は真に天晴れな優しき御心をお持ちな様で。
その御心にきっと姫殿下も感銘の意を受けるでしょう。
最も我が王国の臣民一同は、姫殿下を尊き方と深くお慕いしておりますゆえ。
では、文言の訂正を、書記官…。
[書記官に視線を配せて、男は柔和な笑顔を浮かべている。
…ひとつ。ひとつだけ。この書状には重大な誤りが記されていた。
今の所、彼は目敏く気付いていなさそうだが、無意識か。
そう、重大な誤りは]
(… … … … …ち… …色男の理想に阻まれたかな… …)
[実は公式におけるナミュール王国の現王国元首。
それは永代国王たる姫王陛下である]
…いやいや、私はその辺りは気にしていないとも。
何せ大使殿は国家の第二王子である。
女性の扱いに対する心得は十分にある事など既に承知済み。
無論、文化による男女間での慎みに対する扱いなどの差異は多少あろうが。
なに。大使殿の優しき御心は、姫殿下もきっと感銘を受ける所でしょう。
菓子の誘いならば、どうぞ何れ時期をみて姫殿下と。
必要とあらば、私が姫殿下にご提案申し上げようとも。
[甘いコンポートの最後のひときれが、口の中で柔らかく溶けた。
こうして笑うと中々に様にもなる、浮かべて見せた笑顔と共にだった*]
仲良き事は美しき哉という格言がある。
姫殿下が外界から訪れた貴公と強い信頼と絆で結ばれていれば、それは両国の…おっと。
[これ以上下手に突くのは止めて、話を切り替える。
より実直に、利と不利の計算を要する本来の外交にだ]
… … …友好条約の前提は理解した。
内実を見ねばわからぬ物の、それを他国にも行われる例あらば、その信頼性は疑うべくもなかろう。
今の所は。
[鋭い三白眼で見定めるのは、その奥へ一歩。肝心の共和国の主張。
以前、副使と対したのみでは完全に要領を得られずにいたが]
… … … … …武力背景は、予測できたな…。
それは恐ろしい。王国始まって以来の国難だ。
一刻も早く臣民を纏め、開国へと団結せねば。
… … … … …という反応がマチュザレムの希望だろうが。
さて。王国臣民には周知の事だが。
我が国の結界は、姫王の宝珠により維持されている。
つまり結界の破壊を他国が試みるには、結界を突破し、我らが王国が護る中、宝珠を叩き割る必要がある。
[こつ、こつ、と卓を指で突きながら、思案の表情を浮かべて見せる]
もうひとつ、結界の外からこのナミュール島ごと焦土と化す。
という方法は想像上ありうるが。
まあ、貴国の軍事力がそれほどまでに高ければ、その時には既に無傷での結界の突破が叶う技術があるはずだね。
結界にて消耗しきった異邦の侵略者を撃退する。
意外と王国の国力にも不可能ではないかもしれないね?。
結界を越え、宝珠を破壊しようと試みた方々は、嵐の露と消え。
然し数年後、大使殿率いる使節団と共にナミュールは開国に乗り出す。
時間を掛けたが、見事に共和国と王国の国交樹立を果たした大使殿の手前があればそちらの無茶もできる。
嵐の奥を知らねば、共和国の弾劾もすべて「言いがかり」でしかないし…ね?
だが十年は、最悪厳しいかも知れないだろうな。
然し数年の猶予ならば、無理矢理抉じ開けることも不可能ではない。
[王国貴族のひとりとして、自信すら窺える冷たい視線が鋭さを見せる]
… … …と云うのは飽くまで私個人の判断でね。
[微かに生まれたろう緊張を、そして男は自ら壊す]
内乱を速やかに終息させる事は規定路線。
大使殿の忠言通り、速やかに国家を開く
或いは私の述べた通り、数年の猶予は捻出する方法もある。
その辺りの最終的な判断が委ねられるのは、英雄たる国の指導者だ。
姫殿下なのか、解放軍盟主殿なのか、それは私にも知れぬがね。
あぁ。クロードは中々前のめりに急く面もある。
彼が王国の舵を取るつもりならば、ほぼ間違いなく即時開国を選ぶだろうがね。
[肩を竦め。まだ見ぬ王国の選択に微か想いを馳せて]
…然し、気付けば私も随分と大役を背負ってしまっていたものだ。
時折、菓子に囲まれた怠惰な生活も夢見るだけはするのだがね。
[此処で弱った様に観念した様に、そんな表情を軽く浮かべて、カナンの手をしっかり握り返した]
貴公の協力に感謝する。大使殿。
私はオプティモの安定を図りつつ、ブラバンドの対処に乗り出すだろうが。
貴公の身の振りは一任しよう。
私、ソマリ・フル・アレイゼルが、貴公の保全と便宜を約束しよう
[そうして漸く契約が締結された頃、アレイゼル兵伝いに報告が入るだろう**]
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