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…ウェントス族のルディよ。
私はこれから、熱き炎を運ぶ解放の風と共に歩むつもりだ。
今ある君の。ウェントス族の意志を聞かせてくれないか。
今の私達は、同じ風に吹かれているのだろうか?
願わくば、王国と古の民の関係を進め、やがては同じ風の導き先へと行きたい。
それが過日の約束、私が今願う、私達の『恵み』だ。
[締めくくり、友誼を結びたいとそう告げた、古き民の青年の意思に問いかけた**]
私は此れより、王国の為の戦争を始める。
[吹いた風に揺られた白金の中、曇り無き瞳を男は覗かせる]
此れまでと比べ物に為らん大規模な物となるだろう。
中では決して無視できん数の血も流れるだろう。
然し、これが今、ナミュールと云う王国の為には最善と。
私はそう信じて戦いを始めるのだ。
[それは王国の為と云う意志に、揺らぎの無い瞳の熱。
男は善者でも徳物でも決して無い。然し王国を思う心だけには何の偽りも含まれてはいないからこそ。
今、三白眼の双眸は熱をあげる。来る戦いの気運に高まる様に]
ウェントスのルディよ、君達の戦い方は君達自身に委ねよう。
解放軍は、私の動きに呼応して、戦局の舞台をこの北王国へ移すだろう。
北の街道を抜けた先では、ラクス族の同胞と会う事も出来よう。
如何なる方法か、北上する解放軍と足並みを揃え彼等と戦う事も出来る。
無論、君達の決意あらば、私と共に戦場を駆け抜ける事も私は受けよう。
君達自身の意志の風向きにそれらは委ねよう。
古きに留まろうとも新しきに飛び出そうとも。
それこそは変わる事の無い、君達が君達としてある所以なのだろうから。
[青年にもし人を指揮する才覚があれば、千、二千、その辺りを貸すも想定圏内だ。
尤もそんな機会は始めてだろうが、人手はあるに越した事は決して無いのだから]
では、いよいよ私達は向かいだすとしよう。
これより先は、薄暗がりの知恵や憂慮など、大した役には立たない。
必要なのは炎。人々と王国と意志を変える炎の熱さと。
それらを、千年紡がれた祈りの果てまで届ける、時代の風なのだから。
[男はそして、身を翻す。いよいよ準備の全ては整えられた。
王国の未来を変える為に、この戦いは不可避が故に。
だからこそ、この戦の行方以上の血を流さず、王国の未来を定められる事を願って*]
『 私、ソマリ・フル・アレイゼルは栄えある王国臣民のひとりとして
天地人の義は解放軍にこそありと認め、これに加わる者とする。
それは王国へ反逆すると云う意味では断じて無い。
文化と伝統と歴史とをより豊かにし王国の繁栄を願い
近くも遠い将来、やがて我らが王国を今再び襲う外敵の脅威に
我ら姫王が祖霊の子孫たる王国臣民が今ぞ一致団結し
栄えある王国の未来に奉仕する改革と解放の戦士達である』
『古くも悪しき因習は此れよりのナミュールには不要。
森の奥底、山の向こうとの対立も今やそこに深き溝は無く。
この島に住まう者達のすべてが我らが楽園を想いて集う時が来たのだ。
王国を愛し未来を見据える心ある諸侯達よ、我らが元へ集え。
その正義の刃が切り裂くべきは巫女姫に非ず。
古くも悪しき因習に固執し繁栄の妨げとなる悪逆の徒を討ち果たし
奸臣共の魔の手から我らが敬愛すべき巫女姫を御救い奉る事にこそあり。
我らが元へ集え、諸侯よ。
始祖たる姫王が千年祈られ愛されたナミュールの衰退はこの戦にこそあり』
― アレイゼル軍中 オプティモ行軍 ―
[行軍の最中にも私兵軍は慌しく人を行き交わせる。
戦の最中だ、当然少なくない間諜が囚われ処理されてしまう事だろうが、既にオプティモからはそれに見合う分の動きが伝えられていた。
最も足るものは、アレクシス・ユレ操る王府軍が援軍を派遣し
クレメンス卿が此れを受諾。これにより対外的には、クレメンスは王府軍派に付いたとも取れる情報だ]
… … …なるほど。そちら側の方針で来たか。
[報を受けた時、男は確かににやりと口端を歪めた]
私が解放軍として動けば、アレクシス・ユレは必ず動く。
起こりうる方針は、ふたつにひとつしか無い。
クレメンス卿と仮初の手を結び、私達と相対する対立の構図か。
解放軍と王府軍が争いつつもオプティモを狙う三つ巴の構図かだ。
これもまた、解放軍の名乗りをあげた『利』のひとつだ。
そして此方の方針ならば諸侯共の勢力図も二分される
[それは正に、敵地オプティモで未来図を描きて笑う男と
全く同じ思惑に浮かべた会心の笑み]
この大戦に乗じて、我ら敵同士が互いに互いに殺し合う。
王国に有用足る者と愚物共の振るい分け。
無能な諸侯に有害な者共、それらを纏めてだ。
我が思惑を汲みしは刃交えし者にこそ。
狐の敵は古狸 か 。
[貴族らしかぬ奔放とした振る舞いに奇抜な発想と行動力、敵も少なく無い彼の卿がそれでも好きに振舞えるのは。
王国貴族クレメンス家は、間違いなく王国二分の旗を努めるにも相応しき、ナミュールの最も力ある貴族のひとりなのだからだ。
王国の為には避けて通れぬその思惑に、北西より至る白金の狐が笑みを浮かべた]
― オプティモ北 ―
[北西より到るアレイゼル軍はやがてオプティモの北門を目指す。
南島より北上する解放軍の軍勢は南か西を攻めるだろう事も予期すれば尤もな方針だった。
オプティモの北正面は、北西のドルマール湖に到るまで大地の高度が緩やかに下がる地形となる。
地の利があちらの物なのは当然。然し兵の物量はアレイゼル軍がまだ上回る様だ。
アレイゼル軍の編成は、最低限の領地守備隊以上を出陣させ、歩兵3500、弓兵1000、騎兵400が集い、領地で徴集された非正規民兵が1500である。
民兵の錬度は大したアテには成るまいと判断するが、然し本命は最後。
歩兵500、騎兵100。各50名規模の小隊と、騎兵10歩兵50から成る混成小隊5隊から成る、ソマリ・フル・アレイゼル選りすぐりの私兵軍だ]
[全てを合わせ、凡そ7000の兵力に加えて、幾つかの攻城兵器が持ち出された。
数は有限、使い所の困難な、攻城戦の要とも呼べる]
四基の攻城塔は、指示あるまで前線の射程外へ。
投石器の的になる事だけは赦さん。
此方側の投石器五基は横列に展開。
前線が押し上げられ次第、城塞を打ち壊しにかかれ。
[陣容を構えるアレイゼル軍は、微かな高低差を城塞に感じる程度の距離から始まる。
後方の本陣から正面に、騎馬200を中核に構成される突破陣が組まれる。正面は1500から成る歩兵の盾に守られた弓兵300が続き、両翼に到るまで1000ずつの歩兵が翼を為す。
翼の両端には更に騎馬が100騎と弓兵が200ずつ控え、400ずつ程の民兵がそちらへ配置される。
本陣を守る、100の近衛歩兵も考えると、クレメンス軍の雑多な印象とは対象に、比較的規律正しさと基本の忠実さが映る陣容だ]
一気呵成に攻め落とし、我らが手に勝利を掴みとるのだ!!
翼央騎兵歩兵隊、敵正面へ向けて突撃せよ!!
眼前に聳えるオプティモの盾を突き崩せ!!
[その強き号令にあわせる様に、アレイゼル軍は突撃を開始する。
正面の200騎兵と1500歩兵軍が突撃を始め、それらの後を追う様に、両翼の翼が尾を引きながら足並みを揃えて進軍を開始した。
それらを待ち構えるのはオプティモの兵士達。そしてやがて時代をも変える虎の子の存在を、男はまだ知らずにいた]
[敵は気骨も気概も溢れるだろうクレメンス軍だ。
故にこそ男は当然、正面同士の兵が激突する物と信じていた]
…隊を開けただと?
翼央前列盾構え! 恐れずに敵を打ち破れ!
[襲い来る矢の雨は行軍を緩める、幾兵かの騎馬が矢を浴びせられ倒れる。
然し未だそれも許容できる範囲だ。危険な役割と理解しているが故に、中央の騎馬200には錬度の高い騎兵を集めたのだから。
天より襲い掛からんばかりの矢の雨を睨み、はたと男は眼前の光景に瞳を瞠る]
… … …中央を丸ごと空ける…だと?
愚かな。正気の沙汰では… … っ!?
[異常過ぎる。その戦略戦術として常軌を逸脱したクレメンス軍の動きに、幻視した。
海原の水底まで引き落として獲物を喰らい尽くす、恐ろしい大蛇の牙を]
下がれ…翼央騎馬隊、後退しろ!!
何かを隠している。追い縋るな!!
右翼、左翼、弓隊伴い前線へ突撃せよ!!
両翼に射撃!!
中央の後退を救援するのだ!!
[奥も見透かせぬ暗い水底に巣食う大蛇から逃れようとするも。
止まれない、命令が届き騎馬隊が逃げるよりも、猛毒の牙が届いてしまうそれが先//]
[天から轟く大蛇の咆哮が、まるで魔法の様に兵の命を奪った]
… … …なん…だと…。
ほんの数える程の寡兵に…。
[唯一、敵陣正面に残された敵兵は、その数、十。
勇敢で錬度の高い兵は、例え弓矢にも臆さない。鎧や盾の守りと調練の技術により、弓矢は、ある程度耐え凌ぎ、防げる可能性もあるからだ。だが。
鎧を引き裂き、盾を食い破り、守りと云う守りを貫通した謎の武器は。
アレイゼルの勇敢で勇猛な兵を、嘘の様に地に墜とした。十名分]
[然し動揺を見せすぎる事は将には赦されない]
…っ 翼央後退しろ!!
中央騎兵は最前線への突出を控えよ!
両翼共に、中央の後退を援護しろ!
弓隊、撃て!!
[無理矢理にでも、己が気を引き締めて、兵に命令を下す。
その意識を回転させて男は考える。あの異常な新兵器の正体は考えるだけ無駄だ。中央以外にもあれらは配されているのだろうか。
何にせよ緒戦の頭を押さえつけられた形。両端を率いる正規の歩兵、弓兵は兎も角、従軍する民兵が天劈く轟音に怯みすら見せているが、とても責められまい。
後退する中央、前進すると同時に、分かたれた両端のクレメンス軍へ矢の雨を射掛ける両翼は、丁度横並びの横列陣へとその陣形を変える事となる。
戦局を変えかねない、理不尽なほどの新兵器を目にし、一事アレイゼル軍は中央を下げつつ、次なるクレメンスの出方を窺う//]
[中央の後退に伴い、陣形が横列に移る頃には、敵中央は再び兵が再配置された。
然し再突撃しても遅い。再び同じ手を喰らい無駄に兵の命を散らすだけだろう]
古狸め、異邦人達からあの様な隠し玉まで…!
[正面をガラ空きにした無防備な陣形かと思えば、とんでもない]
…攻勢には出ないか。然し時間稼ぎは寧ろ我らの利。
ならば、クレメンスの奴が考える事は… …。
[水底の蛇は鎧に覆われている。必殺の時にその牙で飛び掛る。
貴族として幾つもの謀略を好み、立ち回るのがアレイゼル領主である自分だが。
忘れては決していけない。今己が戦う相手は、男の父と同世代の老獪なる先人であり。
いざ腕を振るえば、謀略の深さも戦略の冴えも、己を上回る大敵であるのだと改めて認識する]
…今の命令は取り消す。
投石器を横列に出し、二機の攻城塔を中央へ纏めろ!
両翼、全隊前へ進め。
騎兵は突出を控え、敵弓兵の隙を窺え。
[アレイゼル軍の動きに変化が出る。両端の隊が、横合いからの守備を無視する様に前線へ出始めて、横列は鶴翼へと移り変わる。
然し防備を固めているとはとても言い難い。民兵の手により前線近くにまで投石器が押し出され始め、同じ投石返しや弓による破壊も恐れず、敵陣へ向けて投石を開始したのだから。背後でも何やらの櫓らしき二基が動き出すが敵本陣にも窺える事だろう]
― アレイゼル軍・本陣 ―
[戦争の歴史は、常に強き武器を持ち出した者が勝利を収めていく。
剣に始まり、長柄の槍、投石、弓に到りやがて機械弓という武器も生まれた。
恐らくクレメンス軍が擁するあの虎の子は、それら武器の歴史に続く、戦の異端児となる技術なのだろう]
それらを相手に勝つならば。
此方も常軌を逸した戦いで出迎えねばならんだろう。
投石器などはくれてやろうではないか。
[アレイゼルが繰り出した突飛な動きに、クレメンス両翼が動く。
騎兵が散開し、弓隊が投石器を狙う為に前方へでる。その動きを望んでいた]
[今だ。背面側面からの奇襲を無視できる、戦局を変える攻勢は今だ]
今だ、 攻城塔を出せ。
全軍突撃!!
両翼騎兵隊は敵弓兵を打ち滅ぼせ!!
[敵の弓兵が、投石機を狙うが、投石機は後退もせず、破壊される寸前まで、敵軍に被害を与えようとするだろう。
ひとつ、ふたつ、操作する民兵や兵器その物が破壊されて機能は停止するかも知れないが。
いっそ構わない。
その敵弓兵を狙う様に、両端100騎ずつの騎兵隊が、歩兵を引き連れて激しい攻勢に繰り出す]
[そして、アレイゼル軍に齎された命令は、『全軍』突撃。
敵陣両翼の矢の雨を抑える隙に、然し未だ変わらぬ異国の兵器が待ち構える、正面部隊も突撃を敢行した。
彼等、正面隊の背後には今度は別の兵器が存在する。
攻城塔。前へ進む櫓には弓兵、全軍攻勢で敵を抑えるその背後から、異国の兵器を持つクレメンス軍の虎の子を狙う、弓の弦が引き絞ると同時に。
その木造の高き巨体が、飛び道具の障害物となる事を期して、前へ前へと前進してくる。
此れならばどうだ。今、搾り出せる限りの策の成果を見定める男が、つ、と戦場の端へとその眼差しを向けた時。
遠く正面戦場の端で認めた、あの特色ある色鮮やかな衣の翻りに、瞳を瞠り。
近すぎる、離れろ、そんな警告など遠く離れた場所まで届くはずがなく。
劈く轟音が敵陣から放たれるのを見た**]
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