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[唐突に温もりから引き剥がされれば、そこにはいつものコンスタンツェがいただろうが。
「うん、さっさと倒してしまおう」
リヒャルトと共に周囲に警戒を振りまきながらそう言おうと唇を動かした時、ふと、動物のものではない血の匂い。
相手の腕の傷に気がついたのと、視界の高さから相手が消えたのは同時であった。
警戒を強めつつ、目を剥いて相手の肩をそっと支える。
再び立ち上がるリヒャルトを見上げた。
どうやら、ゆっくり治療をしている暇は無いらしい。]
わかった。
[痛みを抑えて剣を構える、その背中に回り込む。
そのまま、周囲の敵に突進した。]
[跳ねて此方に飛び込んでくるその木の根をひょいと避けて、抱き締める。
飛び込んで来たままに、その巨大を地面に叩きつけた。
飛び散る木屑の奥には、先と同じハウンドが数匹。
木の根をそのまま振り回せば、ハウンドと共に何体かの小さな魔物は潰れただろう。
狼は覚束ない足取り、しかし殺意と悪意に満ちた眼で二人を見据えている。
リヒャルトの傷が頭にこびりつく。
同じ険しい、恨みすら篭った眼で睨めつければ、次いでリヒャルトの近くにいる魔物も薙ぎ払い、一つの場所に集めて。
コンスタンツェだけでは、これだけの魔物を一度に殺す事など出来ないから。]
リヒャルト、打って!
[補給した魔力の端で、一度だけ魔法を飛ばして貰おうと後ろを振り向く。
その時であった。]
<font color= gray>「 繋がりは毀たれよ。 欲望を解き放て。
闇に染まり、絶望に咽び、略奪を楽しみ、
強者となれ。 」</font>
[跳ねて此方に飛び込んでくるその木の根をひょいと避けて、抱き締める。
飛び込んで来たままに、その巨大を地面に叩きつけた。
飛び散る木屑の奥には、先と同じハウンドが数匹。
木の根をそのまま振り回せば、ハウンドと共に何体かの小さな魔物は潰れただろう。
狼は覚束ない足取り、しかし殺意と悪意に満ちた眼で二人を見据えている。
リヒャルトの傷が頭にこびりつく。
同じ険しい、恨みすら篭った眼で睨めつければ、次いでリヒャルトの近くにいる魔物も薙ぎ払い、一つの場所に集めて。
コンスタンツェだけでは、これだけの魔物を一度に殺す事など出来ないから。]
リヒャルト、打って!
[補給した魔力の端で、一度だけ魔法を飛ばして貰おうと後ろを振り向く。
その時であった。]
「 繋がりは毀たれよ。 欲望を解き放て。
闇に染まり、絶望に咽び、略奪を楽しみ、
強者となれ。 」
ー回想ー
[ 奥様の部屋を出た時であった。
不意に訪れた、まだ小さかった手の温かな体温に目を見開く。
いつからそこに?
そう聞こうとした声は、震える声に飲み込まれる。
頬を緩めて、汗ばんだ髪を優しく撫でながら、]
大丈夫、二人でいれば怖いものなんて何もない。
……でも、リヒャルトが怖かったことも、私は知りたいな。
[肩をそっと抱き締める。
相手を包み込むつもりで。]
[プツン。
何かが切れる音が頭の中で響いた。
嫌な予感。目を剥いたまま、冷や汗が流れた。
リヒャルトと、コンスタンツェの間に魔力が流れる感覚がない。]
………っちゃだめ。
[態勢を立て直した魔物がリヒャルトの方へと向かう。
身を乗り出して、鋭い牙が揃う口を腕で抑える。
腕に牙が食い込み、半ば食われたようになりながら。]
やっぱり、魔法は使っちゃダメ…!!
[今使えば、リヒャルトの魔力切れが早まる。
歪んだ眼は、目の前の魔物の奥から向かってくる他の魔物を捉えていた。
大きな口を押し返そうと、気持ちは急いで、しかし巨大の狼も押し返されまいと足を踏みしめているようだった。
[ 死ぬ とは、こんなに身近にあるものなんだ。
魔物の口に呑まれようとするその瞬間、絶望を超えた何か、走馬灯のような幸福が、脳裏を過る。
無表情にそれを享受した。
背後にあるリヒャルトの気配にだけ表情をぐしゃりと歪め––––––
真っ暗になった視界に、唐突に指す光。
血すら出ないその一閃に視界が奪われる。
魔物の牙から腕が抜ければ、全身が痺れてその場にへたり込む。
剣先から血の線を引き、力強く地を蹴るリヒャルトの姿を見つめたまま。
全てが終わって、息を切らすその姿を見ていた。
名を呼ばれて、口を開けて、凛々しい佇まいが地に伏せて、ようやく自分の身体が動く事を知る。]
ー回想ー
[膝を折り曲げて合わせようとした視線から涙が零れている。
しかし、自身を抱きしめながら守ると言ってくれる相手の其れを拭う事は無かった。
そっとリヒャルトの小さな肩を抱き締める。
子供の、甘いミルクのような匂いが鼻腔を擽った。]
リヒャルトの側にずっといる。
まだ、私がリヒャルトを守ってあげる……だけど、
[視線を床に落とす。
二人を照らす外灯の灯は、リヒャルトの顔だけを照らしていた。]
私が、危ない時には……側にいてね。
[守って欲しいとは口に出来ないまま、しとしとと雨音のする夜が耽る。]
………っ
[歪む事を隠さない表情は、果たして相手に見えただろうか。
倒れたリヒャルトを背中におぶる。
死体が転がる拓けた場所を抜け、鬼気迫る相貌へと変わった眼は隠れる場所を探す。
幸運にも魔物に出会う事が無いまま、大きく抉れた洞窟を見つけたのだった。]*
[リヒャルトが倒れたのは、コンスタンツェから供給される魔力の経路が経たれたせいであった。
それは同時に、契約が解消されている状態であることを意味している。
リヒャルトをローブの枕で寝かせたものの、もとより弱い身体をこれ以上冷やしてはいけない。
木の枝で簡易に描かれた魔法陣に向かって魔力を流せば、小さなの火が立ち上り始めた。
リヒャルトの左腕に触れれば、膿んだ傷がそこはかとなく熱っぽい。
傷口にそっと唇を付ける。
そこから魔物の放った瘴気だけを吸い取った。]
(まだ瘴気でよかった…毒だったなら、私にはどうしようもできない。)
[ポーチから取り出した包帯をぐるぐると腕に巻きつけて、治療は終わる。
あとは、]
………どうやって、元に戻そう。
[何者かに経たれた契約の通路を。]
[本来ならば犯人の命を葬るのが最も手っ取り早いであろう。
しかし、今の渓谷を取り巻く状況を作り出した大元がその当人ならば……到底コンスタンツェ達では敵わない。
首筋に、手に付いたリヒャルトの地で魔法陣を描く。
簡易な契約の魔法陣、そこにコンスタンツェの血を垂らせば口付けただけで魔力の供給が可能なのだけれど…]
……なんでかな。
[魔法陣に何の反応もない。
この結界内ではどんな契約も無効になるのだろうか。
リヒャルトを見下ろせば、泣き出しそうな顔で唇を噛んだ。
すん、と鼻を鳴らして、ローブの代わりに膝に乗せた相手の頭を、優しく何度も撫でるのだった。]
/*今からエピにかけてリヒャルトを完全にコンスタンツェより優位に立たせるかつ信頼関係元に戻して、
エピにて完全に理性とばそう(ゲス顔ダブルピース)
伏線だけもりもり張っておく!!ぞ!!リヒャルトかわいい!!!!!とうとい
[不機嫌そうに歪む顔。
怒られる、と思った。嫌われる、とも。
案の定「触るな」などと言われて、泣きそうな顔をキュッと引き結んだけれど。
それでも抱きしめたくなる衝動のままに、暫く肩を掻き抱いていただろう。
息も途切れ途切れの相手に気づけばそっと身体を話して、不甲斐なさそうに首を垂れる相手の頬に片手を添えた。]
いいよ。
[ここ最近、無愛想であった顔がようやく笑う。少し躊躇いがちな笑みではあるけれど。
昔に見た子供に向けていたものと、同じ顔。]
コンスタンツェはリヒャルトの物だから、何をしても、何をさせてもいいんだよ。
[そうして、もう一度相手を抱きしめた。
もうコンスタンツェよりも大きくなった肩を抱き締める。
自身の服のボタンを、一つ、二つ、丁寧に外して首筋を露わにする。]
飲めば、魔力をリヒャルトにあげられる。
[自身の血を飲め、と。
コンスタンツェは貴方の「力」なのだから躊躇うことはない、と。
並べた言葉は、自ら相手に服従したいというもの。
飲むか飲まないか、その選択すらも相手に委ねた。
やんわりと頬を緩ませながら。]
[ 困惑顔のリヒャルト。
笑っている理由が分からないから、だなんて想像もしていない。
もし「なぜ」と聞かれても、たぶんコンスタンツェは笑って誤魔化すだろうけど。]
吸う……じゃないね。舐めるだけでもいい。
どうしてそんなに死にたがりなのさ。
[腕の中で動く身体を、少し強い力で抱き締め直す。
"どうして"と、問う口調の最後が震えた。
理由はわかっていた。]
コンスタンツェの主はリヒャルトしかいないのに、代わりはたくさんいるだなんて。
………リヒャルトは頭はいいのにばかだなぁ。ほんとに、馬鹿だよ。
[今日、リヒャルトがこんなにも弱々しいのはどうしてだろう。
否理由はわかっていた。
明日はリヒャルトの、20歳の誕生日。アインパール家の呪われた吉日。
それが苦しくて、相手の背中越しに表情を暗くするのだ。
抱きしめて、柔く細い髪に指を通しながら。
リヒャルトが首筋に歯を立てるのを待つ。
もし血を摂ってくれたならば、素直に腕は離すつもりで。]**
[ 唇は物言いたげに開いては、閉じるを繰り返す。
詰めた息は浅い。
不規則に揺れるのは、闘いの名残か、それとも他の要因によるものなのか。
それは考えないようにした。
背骨を辿るように腕を相手の背中に這わせる。
辿々しい動きで、引き結んだ口元を、]
“リヒャルト”は幾らでも、いる。
[使わない。
空いた片手で相手の首筋に爪を立てる。
そのまま浅く皮膚を傷付ければ、中指の腹で掬う。
そのまま指先で自分の唇を撫でれば舌で湿らせる。
じわり、と足裏から気力が戻ってくる感覚に一息吐きながら、口角を上げて囁いてやろう。]
[ 安堵は無い。
物に傷を付けるかのような手つきに思われた。
目元が痙攣して、吐息を飲み込む。
腕が辿った背骨が今更になってむず痒い。
腕の力が抜ける。
"そんなのただの子供だましの言い訳でしょ"
そう言ってしまいたかった。
視線はただ呆然と虚空を見つめる。
何の表情も称えないまま。
コンスタンツェの中の何かが、蓋を開けて片足を出そうとしている。]
ー回想ー
[ ニンゲンの身体は、思ったよりもずっと心地が良かった。
緑に寝転ぶと草が髪に付く。
鼻の頭に露を落とす蕾。
自分の手で囀る小鳥。
黄色の双眸に反射する煌びやかな宝石。
何でも触れた。
感じるこころがあることを確かめるように。
傷付きながら、傷つけながら。]
[ わかってる。
私は望んでこうなった。
薄い毛布の中で、寝たフリをしながら呟く相手の声を聞くこころが欲しかった。]
( ぼく、でも…リヒャルトでも……)
[ 何度も心の中に押し込む。
相手に触れるたびに肺を真綿でしめつけられる心持ちで。
どうしてだろう、この身体は、思ったよりもすごく重たい。
過去の産物として捨てられる悲しみは、深い水底で息が止まる程に苦しかったから。]
[ 先より強い力で押し返す腕に合わせて、首がぐらんと揺れる。
切られた傷口はみるみる塞がっていくのに、胡乱な眼は地面を見つめていた。
不可抗力で腕を離せば、抜け殻のような人間の身体がそこに座り込んだまま。
剣を抜いて先を急ごうとする相手の声で、ようやく我に返った。]
ぁ、うん……早く行こう。
[剣を持てるようになるまでに回復した相手に笑みを浮かべる。
それは、少しぎこちないようにも見えるだろうけれど。
立ち上がって先行く相手の背中を追う。
落ち葉がリヒャルトの着物に付いているのに気がつけば、くすりと笑って払う為に手を伸ばし、]
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