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お疲れ様でした。
いえ、おかげでバランと対決するのに集中できましたから…。
[声の温度に反して、冗談めかした台詞にもちゃんと答える。]
そうですね。
こちらにも何人かいますので、責任を持って連れ帰ります。
では、また後ほど――。
[彼を助け起こそうしてみるが、
人間としての生命を無理矢理に終えさせられ、
家族も恋人も、夢も希望も――。
もう取り返せないものを奪われた者にとって。]
[>>216差し出した手は、はっきりとした強い意志を持って拒絶された。吸血鬼同士の抗争に巻き込まれただけの彼にとっては、バランも己も、同じように見えるのかも知れない。
小さく溜息をつくと、一度瞼を閉じてからアレクシスを見やる。]
……大丈夫なら、いいんだけど…。
[そう言うと今度はもう手を差し出す事はせず、代わりに彼の傍らでじっと挙動を見守る。
彼の視界にバランの死体が映らぬよう、さり気なく位置取って。
彼自身の意志に任せつつも、気遣うように見つめる瞳は、
生まれた直後の仔馬が、初めて立ち上がる様を見守るのと似たような色を湛えていたかも知れない。]
…行こう。
[逡巡した後に、もう一度手を差し出した。
人間としての希望を取り戻す事は出来なくても、
今、命を失わなければ。]
一緒に来てくれないか……。
[いつか、新しい光りを見つける事だって出来るかも知れない――。
口をついたのは血親ですらない、懇願するような、何も強制力の無い言葉。
それでも視線は、彼から外さずに――。]
[>>298 "そやつはつれていけ"
そう告げる銀髪の純血種に、心得ています――と、
目線で頷いて、伝えた。]
[了解を示したトールに、純血種の鷹揚な態度は変わらず、あたえた任を変わらず果たすことを疑いもしないで、呆気なく...はその場から転移した]
…俺はトール。
[アレクシスの耳元に唇を寄せると、クレステッドが再三読んだ名前だ、彼もとっくに知っている事だろうが、改めて自分の名を告げる。]
――君の名前は?
[そうしてから、こちらを見ようとしない彼の、
艶やかな黒髪を撫でて、問いかけた。]
[身を寄せる事でより近くなった声は、その名を告げた。
何度ももう一人が呼んでいたものではあったが、バランの支配を
受けていた時で半分以上の意識が沈んでいた為に記憶に
残っていなかった。]
―――…アレクシス。
[相変わらず彼の顔は見ようともしないが、
名乗られ、訊ねられたなら答えない訳にはいくまいと
拗ねたような声音で自身の名を呟いた。
温かみなど欠片もないだろうに、撫でられる感触は
ささくれ立った感情を平坦にする。
しかし今置かれた状況を思うと認めたくなくて、
小さく頭を振って抵抗を試みた。]
――アレクシス。
[相変わらず顔を見せようとはしてくれないが、今はそれで構わなかった。
名を問いかけて、答えてくれたことが。
純粋に嬉しくて――。]
良い名前だね――。
[彼の耳元に囁き返す。
まるで"好きだよ"と、想いを告げるかのような。
どこか甘さを含んでいるように響くのは、単に声質のせいか。
あるいは――]
―――…そう、ですか。
[名を復唱し、恐らくは嘘偽りの無いだろう感想を紡ぐ彼に、
気恥ずかしさを覚えて曖昧な返事をするだけに留まる。
何がそんなに嬉しいのだろう。
何がそんなに温かい感情を抱かせるのだろう。
わからない。
知りたい。
泣くことを堪えていたその顔は、今や心地良さに彩られた。]
― 城館 ・ホール―
遅くなりました、申し訳ございません。
[評議会の所有する城館に着けば、もう殆どのマスター達が集まっていた頃だろうか。
先に到着した長生者のうち、まだ誰かがホールにいたなら、彼らに丁寧に頭を下げる。
それから腕の中のアレクシスから静かに手を放し、
身体も離れようと数歩、下がった。]
決定が下るまでは、ここがしばらく君の居場所になる。
どなたの元に行くかは、まだ分からないけれど。
ここは君と同じ血兄弟達がいるだろうし――、
それまで、彼らと交流を深めてみるのも良いかも知れない。
[どこか離れがたい感覚に捕らわれながらも、簡単にここでの生活についての説明をする。]
大抵の者なら用意できるから。
何か入り用であれば、いつでも近くにいる者を呼ぶといい。
[必死にしがみついてきたのは、初めての魔法による恐怖からで。
本当は必要上に触れて欲しくはないのだろう――と、思う。
それでも名残惜しげに、もう一度だけ夜色の髪を撫でると、
近くを取りかがった小間使いを呼び寄せる。]
ああ、そこの君。
彼を用意された部屋へ案内してあげて欲しい、くれぐれも大事に扱ってくれよ。
[柔らかい口調でいいつける。
わざわざ言わなくても、これから里親へと引き渡される雛を乱暴に扱ったりしない事は分かり切っていたが。
それでも尚、念のために釘を刺してしまった。]
ゆっくりおやすみ、アレクシス…。
[別れ際に、たった一言を残して。
彼の姿が廊下の奥に消える前に、背を向ける。]
さて――、"これ"は評議会に持っていかないとな…。
[バランの心臓が入った球を呼び出すと、それをふわふわと空間に浮かべながら、独りごちた。**]
― 城館・少し前 ―
[一歩、二歩――。
離れたこちらへと歩み寄ろうとする、彼の意外な行動に内心驚いたが。
それを表情には出さず、穏やかな表情で見つめていた。
まだどの雛を受け持つか分からない以上、あまり1人に手をかけるのは良くないだろうと判断して、
再び彼へと差し出しそうになる手を、意志の力で抑え込む。]
アレク――……。
[>>395小間使いの後についていく彼に淡い寂寥を覚えて見送れば、
こちらを振り返った彼と初めて視線が合っただろうか。
喜びに口角が上がる前に、すぐ向こうを向いてしまったけれど。]
(…君が新しい幸せを見つけられる事を、祈っているよ)
[彼の姿が視界から消えるより前に背を向けて、身勝手な吸血鬼の祈りは心に閉じこめたまま。
長命者も雛も別なく、その場に残る者達に会釈をして、
評議会にバランの心臓を届けるべく、姿を消した。*]
―暫く後・城館 ―
…少し手間がかかったな……。
[評議会を訪ね、無事議長にバランの心臓を受け渡した後。
此処へ戻る前にある場所へ赴いて一作業終えて来た男の両手には、ワインボトルの様な瓶が握られている。]
君、長い黒髪の青年がどちらの部屋に案内されたか教えて欲しいんだが…。
そう眼鏡をかけた子だ……
わかった、ありがとう。
[廊下を行く使いを1人捕まえて、アレクシスの部屋がどこかを尋ねると、その手に瓶を一本握らせた。]
これを――もしまだ"血"を飲んでいない子がいたら、あげて欲しい。
それから、アレクシスの部屋にグラスを持って来てくれ。
[決して無理強いしない事と、中身は『人間の血ではない』事を伝えると、アレクシスの部屋へと向かう。]
― 城館・アレクシスの部屋 ―
――アレクシス、いるかい?
[教えられたとおりの部屋を訪ねて、繊細に装飾が彫り込まれた扉をノックする事、数回。
中から返事が返るのを待つ。
もしかしたら、まだ館内を散策しているかも知れないが。
その時はこの土産を置いていくつもりで。]
本当は人の血の方が、いいけれど…。
["人の血は"――美味しさも、栄養面でも、何もかも。
こんな風に飲みやすく加工された動物の血より、ずっと価値がある。
吸血鬼にとって人の生き血は必要不可欠だ。
いずれ遠からず、彼も人の血を摂取しなければならないだろう。]
…まだ、抵抗があるだろう?
[人から魔へと変化した者にとって、人の形をしたものに牙を突き立てる覚悟は、
なかなかすぐには、決意しずらいものがある。]
人の血には敵わないけれど、飢えで動けなくなったり、
理性を失う事は防げる…。
[それでも、何も摂らないよりは随分マシだ。
あるいは同族や養親から血を分けてもらう事も手段としてあるが、今ここで己の血を与えることは憚られた。
まだ彼の養親は決まっていない。]
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