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───こうした森の民の中でも、最も優れた狩人に与えられるのが『熊殺し』という称号である。
この称号を持つ者は少なく、記録に残っている者はさらに少ない。
その1人として、サシャ・カリュオンという人物が知られている。
彼女は聴覚を持たなかったが非常に優れた視力をもっていた。
夜の森の中で50m離れた場所から熊の目を射抜けたともいう。
森の民に今も伝わる「ハゲ熊に手を出すな」という言葉は彼女の言葉だとされる。
体毛が薄くなるほどに年経た熊は危険極まりないため、これを避けなければいけないという戒めである。
─── 『森林狩猟民族の文化・風俗』
この独立解放軍には"影"と呼ばれる者がいた。
諜報、潜入、内部攪乱、果ては盟主の影武者までこなしたと言われるが、"影"という名称が特定の人物を指すのか職能集団だったのかも不明である。
カークという名のみ、いくつかの私的な文書に残されている。
彼ないし彼女が"影"に関わっていたことは複数の資料によりほぼ確実と見做されているが、活動の実態については不明なままである。
なお、この地方で密偵のことを菓子売りと呼んだ。
菓子好きとされる将や武人の中にも、この"影"と関わりがある者がいたのかもしれない。
─── 『密偵の世界 陰で歴史を動かしたものたち』
世ニ「セイガ」ノ一族アリ
草ノ根ヲ枕トシ 風ヲ褥トシテ流離フ
命ニテ命ニ報イ 生涯変ワル事ナシ
霧雨降リテ
サレド我ガ魂ノ誓イ無窮ナリ
(石碑5:
台座にクレステッド・セイガ・フォラータと刻まれている。)
─── 『石碑 深淵なるその世界』
こうした軋轢の結果、平原の民・森の民を中心とする反乱が起こった。(ディ=カルストの乱)
主導者は前領主の子供であるダンクラード・ハーゲン・ディ=カルスト・ヴァン・ラモーラル。
この乱により辺境伯は討ち取られたが、その子・オクタヴィアスによって乱は短期間で鎮圧され、主導者は処刑された。
だがダンクラード・ハーゲン・ディ=カルスト・ヴァン・ラモーラルが唱えた誇りある独立という精神が、このあとのラモーラルを独立へと向かわせる契機となった。
─── 『歴史 (中等学校教科書)』
オクタヴィアス・ノイアー (xxx年〜xxx年)
ラモーラル中興の祖。王国支配下時代の辺境伯の子。
数年間を人質としてウエストマール王国首都で過ごすが、ディカルストの乱を機に帰国。乱を鎮圧して実権を握る。
乱の後もウエストマール王国に留まるが、大蜂起の年に独立を宣言。
以後、ラモーラルの指導者として改革を推し進めた。
彼の指導の元、ラモーラルは民主制国家として舵を切り───
─── 『歴史人名事典 Maa〜Zyt』
(おまけ)
ラモーラル復興の謎 -隠された墓と血筋の紋-
───一般的に知られているのは、このような歴史だろう。
しかし、実際は違っていた可能性を示唆する遺構がある。
それがこの墳墓だ。
一見何の変哲もない石塚に見えるが、よく見ると───
───つまり彼は死後再生を果たしたのである。
彼はもともと「森の柱」として贄に選ばれた人物だった。
彼の身体はこの祭壇にて森のパワーエナジーを浴びて復活した。
蘇った後は再び乱の盟主として立ち、ついに王国から───
─── 『月間△ー 3月号』
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以上、最終日生存者に捧げる書の数々でした。
一部まだログ化されていないところが書物になっていますが、後世の歴史はいくらでも誤認され得ると思っていただければ幸いです。
一見荒唐無稽と思われる書にも、"事実"が紛れ込んでいるのが興味深いですね。
多くの者の思いが集い、ふたつの意思がぶつかり合う。
春の陽のごとき光と、激烈な炎が出会って生まれたのは、
新しい国、新しい時代の萌芽だった。
忍耐強く時を待ち育み続ける力と、
時至れば高く大きく燃え上がる力とを
ラモーラルは同時に手に入れたのだ。
雌伏の時を経て、ラモーラルはついに動き出す。
新たな歴史は、ここから始まったのである。
─── Nigel Buhler 『ラモーラルの戦い』 終章
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