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二度はないよ。
約束する。
[愛しい弟の髪を撫でる。
幾度も、確かめるように。]
おまえに触れられないのも苦しかった。
もっと、触れさせておくれ。
[弟からもたらされた知らせに頷く。
その名に覚えはなかったが、
名乗らなかったものたちのどれかだろう、と見当はつける。]
そうだな。厄介な相手ばかりで困る。
[誰にせよ、いずれ劣らぬ実力の持ち主だった。
弟の見解に同意して、肩を竦める。]
[血の糧を、との誘いに弟は首を振った。
その表情に微笑んで、血の付いた指先を唇に触れさせてから引く。]
ああ。おまえがそう言うなら縛ってしまおう。
[茨で周囲を包んだまま、手近な部屋へ入る。
あとから影たちが手に手に荷をもって部屋に入っていった**]
後で、だね。
たっぷりと―――。
期待、している 。
[首筋を啄み、ほんのりと赤い痕を残して微笑んだ**]
どうして、いやなんだい?
言ってごらん。なにがいやなのか。
[頑なに抗おうとする心に、ゆるく首を傾げた。
抗うほどの何かが、彼の中に残っていたのかと。]
[自分が最後に"視た"彼は、
千々に壊れた心と記憶が、空虚な器に入っているのみだった。
アレクシスより「初乳」を与えられ、
無垢な命が記憶の欠片を握りしめ、名を告げる。
そこまでを知るのみ。
神と、聖将の名を口にする彼は、
捨てたくないとかぶりを振る彼の中には、
今、なにが入っているのだろう。]
アレクシスになにか言われたのかい?
――― いや。かまわない。
おまえの中にかつての心が残っているのなら、
それこそ、私が求め欲したものだ。
おまえの思うようにしてごらん。
私の可愛い子。
おまえが大事にしているものを取り上げたりはしない。
それごと、おまえを欲しいだけだ。
私はいつまでも待とう。
おまえが、私を受け入れられるようになるのを。
おまえはもう、私から離れられはしないのだから。
[今は押すべき時ではない。
彼の中に残っている、あるいは新たにつくられた何かを
再び壊してしまうのは、本意ではない。
恐懼に縮こまっている心から、一度指を引く。
それでも、見ている、との存在感は残して。]
[包帯はギィ自身の手で施されるを願う。
「縛る」と囁いて肌を滑る手指は、「後」の期待をいやがおうにも連想させた。]
…ああ、
[首筋に牙が触れた時、洩らした声は承諾というよりは喘ぎに近いもの。]
[支度を整えた弟の姿をじっくりと眺める。
黒を基調とした服装は、端正な彼の立ち姿をより引き立て、
彼の髪と同じ色の胸甲は、不退転の意思を示すようでもあった。
規律と品性に彩られた姿に、満足の息を零し、
行く先を問われれば、視線を横へ向ける。]
まずは、
渡しそびれたものがある。
[共に来るかどうかは任せると、視線で告げる。]
……?
[つながっている感覚が、不意に痛みを伝えてきた。]
どうした―――?
[小さな声上げた気配を探す。何が起きているのかと。]
[視線をあげてどこかを見つめ、わずかな間、瞑目した。]
……いや、やはり私が
すまない。
おまえはこれを、ジークに届けてくれるか?
[手のひらに差し出したのは、血赤に脈打つ薔薇の花。]
私の血の精髄だ。
…私の死と共に咲いた。
[唇には微かな苦笑]
本当は
呪が遅れたらしい。
ジークがまだ血を厭うているのだろうけれども、
今はそれでは自身の身も守れないだろう。
せめて、これを、と。
ジークは、今、サロンにいるようだ。
…あの子を頼む。
[弟の手に血の芳香纏う薔薇を握らせたあと、
ひらと身をひるがえす。
次の瞬間には紅い風となってその場から姿を消していた。]
[響き合う世界に、怒りと戸惑いの色が零れる。
痛みは共鳴して、いまや己の身を貫くほど。]
まだだ。まだ―――
[意識せぬ言葉が染み出す。]
貴様ら……っ!
[もはや、手遅れなのは一目でわかった。
ほとんどが灰となった体は、回復のさせようもない。
怒りと衝動が、体を突き動かす。]
よくも私の、
―――っ。
[唇を噛み、走り寄る。
曲刀構えた聖将へ。
我が子を滅ぼしたものへと、報いを与えるべく。]
私はおまえを諦めない。
決して、あきらめたりはしない。
だから、戻れ…っ。
[想いの手を伸ばす。
こちらに向かう手をどうにか掴もうと。]
[生まれたばかりの幼子を殺した聖将も、
それを助ける教会のものたちも、
全ては敵に変わりなかった。
だから、飛び込んでくるものがあろうと足は止まらない。]
それが望みなら、もろともに死ね。
[聖将を守ろうとする男の剣ごと、身体ごと、
全てを貫き通してしまえと、紅い剣を突き出す。]
ちっ。
[主を守ろうという意思は、鎧よりも固く刃を拒む。
一撃を阻まれ、なおも反撃されて、
舌打ちをしながら飛び下がった。
防御に掲げた左腕の鎖鎧がはじけ飛び、
血と共に飛び散る。]
[手ごたえはあった。
放っておいても、あの男は倒れるだろう。
だが、復讐の刃を阻まれた怒りが再度向かう。]
ならば貴様から先に逝け。
それなら文句は無かろう。
[確実にとどめを刺すべく、心臓を狙いすまして再度剣を突き出す。]
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