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[言葉を交わす三者。目覚める騎士。
彼らの声を聞き、様子を見つめて、
死せる城主はいくつもの驚きを重ねる。
アデルがアレクシスと既知であったことは、納得できる。
だが、アレクシスはなんと言った?]
私を、連れ戻す……?
[満身創痍の吸血鬼が、なにを言っているのだろうか。
眉を潜め、頭は大丈夫か?のしぐさをするが、
どうせ相手には見えていないので、途中でやめた。]
そうまでして私を殴りたいのか?
[答えがないのを承知で、茶化すような問いを投げる。
彼の来歴と能力とこれまでの言動がひとつに組み合わさっていくのを、あえて、意識の下に沈めた。]
[アレクシスと騎士が見せた交わりも、驚くべきものだった。
生まれたばかりの仔に獣が乳を与えるような、
それよりはもっと官能を帯びた食餌の光景が、
不器用な薬師と空虚な騎士の間で繰り広げられる。
かれらの間に交わされた会話は、半分ほども聞こえなかった。
ただ、そこに生じる"想い"の強さを見る。]
………。
… ずるい。
[誰に聞こえるわけでもないけれど、思わず声を低くして呟く。
自業自得なのは、承知の通り。]
私が欲しかったのは―――。
[言いかけて、言葉を切った。
もはや言っても詮無きこと。
雛に血を与え、吸血鬼としての性を教えるアレクシスから
視線を外し、意識を閉じた。]
[意識開いた眼差しが捉えたのは、
天井が崩れ、調度が焼け焦げた部屋の惨状。]
まったく。どこもかしこも…。
[己の城に加えられる数々の仕打ちに、軽く憤る。
だが、その場にいるものたちの姿を見れば、
そんな思いは吹き飛んでいた。]
/*
実はろくに読んでないので、戦闘場所違ってたらごめん。
墓下だから対して影響ないだろうとか思うと、
いろんなことが適当になるねw
[部屋の中で刃交えていたのは、
アプサラスの子供と、襲撃者の1人である剣士。
戦う彼らの間に、殺意以外のものを感じ取って
何があるのかを見極めようとする。
しかし、それより先に呼ばれた名と声が胸を締め付けた。]
…君にそんな顔はさせたくない。
私に、できることがあればいいのだけれども。
[意識を凝らして手のひらに白い薔薇を一輪咲かせる。
アプサラスの髪にそっと置いたそれは、
造り主の手が離れれば、溶けるように消えた。]
[慰めることもできない自分に嫌気がさして、
そのまま部屋に空いた穴から外へと漂い出る。
そろそろ、意識の体を動かすのにも慣れてきていた。]
[外に出てみれば、相変わらず頭上は結界に覆われている。
近づいてみたが、聖性の力が強くて触れられもしなかった。]
忌々しいな。
……まったく、忌々しい。
[結界を見て呟いた言葉を、下を見てもう一度呟く。
見下ろせば城のあちらこちらがひどく崩れ、
荒れ果てた様相になっている。
野茨が散り失せた城は灰の白に染まり、
ひどく殺風景で、荒涼として見えた。]
─── 取り戻したいものだ。
[すべてを。
あるべき姿を。
願いが想いに共鳴したかのように、不意に意識が引き下ろされる。
見えない糸で手繰り寄せられた先は、自室の中。]
[城主の部屋もまた、主の欠如によって
白い灰にあちらこちらを覆われていた。
薄く積もる灰の上に足跡を残すことなく、
絨毯を踏んで歩き、扉に近づく。
そこに、声があったから。]
[扉の向こうから響く、アレクシスの声。
それは、自分へと語り掛けているように聞こえた。
世間話をするような穏やかな調子で、
ただ、その声には明らかに力が欠けていて、]
アレクシス。
[何か言おうとして、唇を閉ざす。
そのまま、扉に背をもたれさせるようにして、聞いていた。]
[たたずみ、耳を傾ける心に、別の響きが微かに伝わる。
それはひどく遠く、切なく、
ただ狂おしいほどの想いを響かせるもの。>>*12]
ヴァンス、…
[弟が苦しみもがく気配。
すぐにも飛んでいきたいと心が逸るが、
意識体は、縫いとめられたようにその場から動かなかった。]
……っ。
[歯噛みし、拳を握り、ひたすらに意識を澄ませる。
扉の向こうで何が行われているか、
もはや嫌が応にも理解していた。
魂が縛られている。
儀式の呪に。
もはや、すべてが終わるまで待つしかない。]
面倒だと思ったことなどない。
私は、私が思うままにしただけなのだから。
だから、君が恩に感じることはないんだ。
[届かぬ言葉をいくつも綴る。
そうせずにはいられなかった。]
君は、君の生を生きてよかったんだ。
こんな…
―――ああ。こんなことをさせたのは、私だったな。
[細く暗く長い路を通って吸い込まれていく感覚。
遠く微かに見えるのは、紅い、紅い、闇の光。
先へ行こうともがくごとに、路は狭く苦しくなるが
前へ進む力が弱まることはなかった。
手を引くものがある。
やさしい、あたたかい手。]
[最初は何も見えなかった。
肉体の動かし方も忘れたというように、
指先ひとつ、瞼ひとつ上がらなかった。
やがて、身体のすべてに意識が通い、
肌の感覚も取り戻す。]
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