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此処は遺体の御前ですので。
[弔意以外の話題は避けたい。と暗に続く話題を抑制し。遺体に関しては、此処は人の出入りも多い玄関脇部屋、できれば彼女が使っていた部屋に安置するか、若しくは地階はどうだろうと。]
食料庫は流石に無理ですが、その脇にも倉庫のような部屋がありました。現在は施錠されていますが、おそらく鍵と思われるものは見つけましたので、使えるかどうか、確認して参ります。
[そう報告すると、踵を返し地階へ向った。]
[応接室の扉を抜けると、思い出したように振り返り、ダーフィトへ声を掛ける。先ほど顔を見た際は、船に関する報告が頭を占めていた為、渡しそびれるところだった。]
遅くなりましたが、カメラの受領書をお渡しします。
責任を持ってお預かりしておりますので。
[自分に割り振られた部屋、机の鍵の掛かる引き出し。それは上官も知らないだろう。鍵は荷物の内ポケットに仕舞われていた。]
…残念です。
[写真を見たい(>>0:284)、と言った言葉に嘘は無かったのだろう。私情が零れたのは船の未着が、張り詰めた気の落とし所を失い綻びが出た為か。そのまま地階へ続く廊下へと姿を消した。]
[何でも、の言葉は既に素直には受け取れないだろう。その不信のまま見詰める視線でカークにも伝わっただろうが]
物置はありますが、地階を提案したのは主に冷暗所的な意味合いです。物置なら…彼女が使っていた部屋にせめて…
[床に横たわったままのユーリエの遺体に視線を向けると、目を伏せた。民間人を護れなかった責は、端々で心を噛む。]
何でしたら、一緒に来ますか?
[何かしらを探っている事は先の言からも伺える。ならあるものを見せてしまえば納得するのか?少なくとも、目の届く範囲に置いておけば、昨日の様な自体は防げるのではないかと、こちらからもひとつ提案をした。]
管理人の遺体も、そのままです。
[目を伏せたまま言う。2日の間に2人が亡くなった。もうこれ以上が無ければいいと思うのは軍人からの意のみではなく。]
ではこちらに。
[断られるかと思ったが、案外すんなりと受け入れられて、何処か安堵した表情を見せる。宿泊所地下に、大層な傷を負うものなどないだろうがそれでも。ましてや隠さねばならないものなど。]
ローレルさんは軽傷でした。命に別状はないかと。
[背中を向けたまま階段を降り、すぐ左手の扉に、手持ちの鍵を差し込む。既に一度解錠されているとは知らず、錆が詰まったのか、うまく咬み合わない。屈んで鍵穴を確かめ。]
あら…?この鍵で、合ってると思うんですが…
[困惑したようにカークを見上げ、試してみて欲しいと言うように鍵を手渡す。]
…死因が、異なりますので。
[不審死と事故死。同様に扱うことはできないと。]
…監督不行き届きです。もう少し、ちゃんと見ていてあげればよかった…!
[前日に、きちんと案内すると言ったのだ(>>1:109)。押し殺して押し殺して言う悔恨だが、最後だけは悲鳴のように漏れた。どんくさい、の言葉にむっとしたような表情をするが、カークも似たような結果だった。]
いえ…昨日確認した時は、錆の詰まっている様子は無さそうでした。誰かが、入ったのかしら…。
[戸惑うところに、放り投げられた鍵を慌てて受け取る。裸電球の地下の廊下で、如何にも軍人らしい彼女の爪先が、似つかわしくなく淡紅色に染まっているのは気付くだろうか。]
恐らく後に、検死が入ると思いますので…
[尋常ではない死因の管理人に関しては、語尾を濁す。]
わたしは、軍の人間ですから、あなた方を護るのが、使命ですから…!
[管理人部屋の哨戒という任務があった。それはわかっている。しかし、身についた、それこそ生まれ持ってそこを目指した軍属意識が、成されなかった結果を責める。]
[しかし、鍵一つという、理念ではなく、非常に現実的な指摘をされると、意表を突かれたように見返し、思わず、泣き笑いの様な笑みを漏らした。]
カークさんだって、開けられなかったじゃないですか…。
[迂遠なりに慰められているのは伝わったようだ。]
[戻らないか、の言葉にこくりと頷き]
あの…
[と恐る恐る声を上げる。それは様子を見た推測でしかないのだが]
何か、探してるんですか…?機密に関する事はお答えできませんが、わかる範囲の事でしたらお答えしますので、あまり、危険な場所には近寄らないで…
昔の島の様子も、父から聞いた範囲でならわかりますので。
[これ以上、誰にも危険な目に遭ってほしくないのは真意なのだ。特に船上から、何か掛かりのあったカークには。]
[どうかした?と問われるのに自分でも気付いたように爪を見返し]
あぁ…なんでしょう、これ。何処かにぶつけたのかしら。
[それはネイルのように均質ではなく、場所によっては濃紅と、マーブルというには不吉な斑を爪の上に描いていた。]
だったら大人しく、護られてください。
[照準合わせてくる一回りは大きい男に、それくらいの不服の諧謔返せるくらいには、気分は持ち直したようだ。男の加護への失心はどうであれ、等しくそれは護るべきものだった。]
診療所ですか…。あ、あぁ、[あの、軍の、と口中で呟き]…南側になる筈ですよ。
最も、炭鉱の閉鎖や島民の現象で、かなり前に閉鎖された筈ですが。展望台の、少し向こうです。あの辺りは道の崩れもないと思いますが…あまり、ひとりでの行動は慎まれるように。
[その紅い指先で、この辺り、とでもいうように空中に地図を描き。進言にはやはり軍人らしい固さがあったが、中尉に、という言葉にふふ、と笑った。]
大袈裟ですよ、痣ぐらいで。演習だと、身体中もっと酷い痣になります。
[では、戻りましょうか、と階段を上りかけ。くるりと廻ると、カークに向けてただ普通の礼をぺこりとひとつした。そしてそのまま、階段を駆け上がっていった。]
准尉 ゾフィヤは、准尉 ゾフィヤ を投票先に選びました。
[実際、爪よりも身体を苛んでいたのは、身内に抱えたような鉛の冷たさと重さだった。地下からの階段を駆け上がった後、はぁ、と一つ息をついた。カークもすぐに上がってくるだろう、リネン室に身を隠すように寄せると、しゃがみ込んで息を整えた。]
(貧血かしら…)
[額に手の甲を当てると、身体は冷たいのに、じっとりと変な汗を掻いていた。ゆっくり立ち上がる。船はまだ来ない。指示に従うだけの自分より、上官たちの責任の重さは如何ばかりと思うと、これくらいの事で更に負担を掛ける気にはなれなかった。]
[リネン室向かいの洗面室に入り、「平常の」顔を確かめると、幾度か頬を叩き、玄関方面へ足を向けた。]
[応接室を覗くと、そこにはもうユーリエの亡骸はなかった。ダーフィト等が運んでくれたのだろう、誰も居ない空間に向って礼をする。]
[伝言板を見遣り…→展望台 3h と記入する。展望台に行くには長い。どうせなら、その先、下見をしようと思ったのだ。何かあるか事前にわかれば安心だろう。]
姫なんていう柄じゃないわ。
[くっと喉奥で笑い、何があるか報告してやれば悔しがるだろうかと、意趣返しではないが、そう思うと多少愉快だ。]
[そう思っていると、背後から掛けられる声に振り向き(>>164)、敬礼する。]
は!外にでる民間人も多いようですし、今から少し、見廻りを行う予定でおります。
[腹腔の重さを堪えて、あくまで健常を装い応答した。医官である、上官に隠し通す事ができるはわからなかったが。]
ご配意、感謝致します!
…その上で僭越ながら、まだ明日があるからこそ、……ユーリエさんの事もありましたし、出来るだけ外部の安全の確保に努めたいと思います。
[仮配属の身としても、此れだけ気遣いを頂ける上官を持つ自分は幸せものだ、と思う。だからこそ、少しでも身を砕いて努めたい。一心にその思いを込めた目で上官を見詰め返した。]
[巡見の許可を得られると]
有難うございます!
[と一層敬礼の指先に力を込め礼を述べた。玄関扉に手を掛けた際に拾いあげた声に振り向くと、上官は背を向け立ち去るところだった。]
ご期待に添えますよう、全霊を込めて…!
[この短い任務の間にも、口少なとわかる上官からの言に身を震わせると、その背が消えるのを見詰めてから、外への扉を開いた。]
[陽は中天を過ぎ、西へと暮れ急いでいる。中尉との約定を守るためには、急がなければならないようだ。駆けるのはさすがに辛く、早足で歩を進めるが、息が乱れる。確かに座学はできても、演習は苦手だったが、こうまで疲れやすかっただろうか…?やはり初任務という重圧が身体に不調を起こしているのか。歩きながらまた頬を一つ叩いた。]
[名所だった展望台近辺は舗装が残った道がある。その先、島民の居住区に近くなる程、複車線の道は単線となり、やがて、舗装もされないままの道になった。それでも、幾分残った轍を辿って歩く。それもそのうち、草で覆われ]
…あそこか…。
[これは流石に、立ち入るのは無理だ。背伸びして、向こうを伺うが、足を踏み入れる隙もない緑の障壁。]
[これを素直に伝えた所で、受け入れるかを考えると溜息が出る。ふ、と息を吐くと重い身体を引き返した。]
[ただ少なくとも此処までの道に危険はなかった。それはよしとしよう。そう思いながら道を引き返しつ、展望台の前まで来た。]
………
[伝言板には展望台と書いたのだ。入れ違いなど、齟齬があっては問題だろう。そう思うと、何度目かになる展望台への階段を登る。調度時間がずれていたのか、フレデリカとダーフィトはまだそこに姿を見せて居ないようだった。]
[展望台を目指す、緩慢な階段を上がっていると、また蹴躓いた。今度は以前の様に(>>2:262)不意に足場がぐらついたのではない。街路樹に手を着くと、息を整え、流石に、何処かしら自分の不調を自覚していた。]
[とはいえ、管理人の亡骸も直接は見ず、ダーフィトから接収したカメラの中身も確認していない為、その爪の斑が、季節外れの濃い桜が指先に乱れ咲くようなその病症が、直接の死因である事など知らずに居たのだ。]
[ローレルとともに来た時はまだ夕暮れ前だった。一人で前に訪れた時は夜だった。今はまさしく夕暮れだった。]
[絶海島。ただ広がる眼前に、海面に溶け落ちていく太陽以外は、ただ海しか見えない。この先にはもう、何もないように。父が、あの島にはこの名しかないと言っていたのがわかる気がする。それ程までに、こんなにも美しいのに、もう此処から何処にも、迎えは来ない気持ちにさせる。]
[新兵だった父はこの島に来た。やがて、元島民であった母と婚姻をした。それがどの地の事であったのか、既知か偶然であったのかもすら、兄達も誰も知らない。この島でどのような任務に当たっていたのか、軍務の事は家族内でもタブーが多い。勿論そういった事に口軽い父ではなかったが、絶海島の事は尚更。]
[ただ、任務に関係ない、この島の華やかなりし頃については、懐かしむように偶に話してくれた。若かりし頃を過ごした思い出として。だからけして、それは、悪いものではないのだと思っていた。]
[絶海島に任務で、と報告した際、低く頷く事しかしなかった父。]
[そして今、無力と消耗と、それでもわずかな希望を尽くして、若かりし頃の父と同じ海を見ている自分。]
[宿泊所に帰り着いたのは、陽が暮れた頃だった。暗くなる前に、との中尉の言葉だったが、存外足取りの重さに遅れ、その顔を見れば謝罪しなければ、と思う。玄関ホールには誰か居ただろうか。伝言板の、行き先表示を黙って消す。]
[腹底の鉛は、冷たさか熱さか、よくわからなくなっていた。早めに身体を休めよう、と湯に浸かったが、一向にその奇妙な冷えも熱さも消えなかった。]
[脱衣場で軽く髪の水気を吹き、自室に下がる。今日の報告書を作成しようとして、ふと、ダーフィトのカメラの保管場所を誰にも告げてなかったな、と一人ごちる。
鍵を持つと、同じ並び、廊下の端、『八重』の扉をノックした。フレデリカの部屋だ。]
[フレデリカの事を思い出すと、目眩に似たものを感じた。]
[頭の中で反響する、これはモールス信号だろうか?眉間に指を当て、しばし耐えた。]
[扉を叩いて暫く待ってみたが、応答はない。外出しているのか、伝言板を先に確かめればよかったと思い引き返す。]
[が、すぐ側の、玄関ホールへ続く階段を降りる気力はない。引き返し、自室の扉を閉めるとその扉に背を預けついに蹲る。は、は、は、と浅く呼吸が漏れた。]
(熱?風邪?そんな場合じゃないのに…)
[蹲ったまま、頬を何回か叩くと、扉に手をつき、備え付けの家具を伝って窓を開ける。海風が部屋を吹き抜け、一瞬だけ気分が良くなった気がした。]
[窓の桟に掛けた手を見ると、爪先の色の濃さが、先よりも濃くなっているように感じる。場所によっては、血の塊の様に。風呂に入ったせいかと、反対の手で爪を撫でた。]
[倒れるように寝台の中に潜り込む。薄く固いベッドだが、横たわること、シーツの冷たさが心地よく、胎児の様に丸まった。浅い呼吸が漏れる。何故だかこのまま、目を瞑ってもいい気がした。眼の奥の闇に、その向こうに、身を委ねてもいい気がした。]
[ヒュー、ヒュー、と、いつか唇から息が漏れていることも気付かなかった。]
父様、兄様…
[口をついて出たのは、呼び掛けでもなく。自分はちゃんと、軍に連なる一族として、その本懐を遂げられているのかということ。溌剌とした学兵(>>0:7)、彼女に何かを伝えてあげることはできたのか、口少なに、それでも此方を見てくれていた上官(>>175)、そして]
(ああいう方のように、なりたかった)
[出会った初日の、金糸の上官の厚情に触れ(>>0:275)。尽くしたいと思ったこと。喉から漏れる息の熱さに襟元を弄るが、不思議と顔に苦悶はなかった。]
[ヒュ…と最後の息が漏れた。]**
フレデリカ…?
[意識が途切れる前、何故かまた、初めての部下の顔が思いよぎった]
(どうしてそんな顔をしてるの?あなたのいいところは、その笑顔でしょうに。)
[ヒュ…と、ゾフィヤの生の最後の吐息が、フレデリカに届いただろうか。]**
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