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……とはいえ。
きみたちなら、流されたり呑まれたりする心配はないだろって。
俺たちは、信じてるけどね。
[笑顔と共にきっぱりと言い切り、白銀がきゅーい、と鳴く。
ティアナが呆れたように息を吐いたのは、とりあえず見ない事にした]
『……まったく、何年たってもお気楽なんだから』
[落ちた愚痴にもとりあえず知らぬ振りを決め込んでおく。
そんな様子にティアナは一瞬ジト目を向けるものの、紅い瞳はすぐに扉へと向いた]
『ま、いいわ。
それじゃ、開けるわよ』
[宣言の後、扉の中央にある窪みに薔薇色の宝珠がはめ込まれる。
扉は一度大きく震えた後、ばたん、っと音を立てて奥へと開いた]
― 虚無の深淵 ―
[開いた扉を潜り、進んだ先には何もなかった。
薄墨色の虚空が広がるだけの、文字通りの虚無的な空間。
そして、その空間の奥にそれはいた]
……思ってたよりも、大きくなってる、な。
[空間との境界も曖昧な、巨大な球体。
それは侵入者たちに気づくと、ふるふると震えた]
……あれは、『虚無』。
かつて、世界の全てを呑み込もうとした『翳り』。
そして、今再び、地上に溢れようとしているもの。
……今の内に鎮めてまた眠らせないと、神代の繰り返しになる。
けれど、それは避けなきゃならないから……。
……天と地を結び、繋ぐ絆の持ち主たち。
その力を示す事で、虚無を鎮めて欲しい。
……この世界の光を、翳らせないためにも。
[静かな口調で紡がれる願い。
それをかき消すように、ぐるぅぉぉぉぉぉぅ、という唸り声にも似た音が響く。
音の源――虚無の身体がぶるる、と震え、直後に、同じような薄墨色の球体がいくつも空間に浮かび上がった]
『……その前に、まずは分身を鎮めないとならないみたいね。
あまねく精霊の力、霊王のいとし子たる我に応じよ。
彼の深淵へ挑む者たちに、祝福と守りを授けたまえ。』
[薄墨色の空間に詠唱が響き、それは薔薇色の光を帯びた風を生み出す。
光が与えるのは、各自の特性強化と持続回復の術。
先に青年が与えたものとよく似て、少し違うもの]
『あたしは、現世との繋がりの維持に集中するから。
……皆、お願いね?』
[にっこり、と微笑んで告げた後、ティアナはす、と後ろに引く]
ん、後ろ、頼んだよ、ティア。
[下がるティアナに呼びかけた後、青年は改めて球体とその分身たちを見据え]
……これが、最後の大一番だ。
……いくよ!
[号に合わせて、白銀が高く高く、きゅーぃ、と鳴いてその翼を大きく広げた。**]
― 虚無の深淵 ―
[深淵に踏み込んだ若者たちの反応は様々。
けれど、それに対して言葉をかける事はない。
先に、信じてる、と言い切った。
それ以上は必要ないから]
……にしても、相っ変わらずおっもい、な!
[圧し掛かるような大気の圧。
そこにあるのは、ただ、他の存在を全て飲み込もうとする意志――或いは本能]
とはいえ、二度目でへたばるのは、格好つかないから、な。
……いくよ、ヴァイス!
[呼びかけに応じる白銀の声。
羽ばたきの音が響き、舞い上がる白銀に追いすがるように触手が伸びていく。
それをぎりぎりでかわしつつ上昇を続け、ある一点で唐突に反転した。
真っ逆さまに下降する先には触手を伸ばす分身の一体]
[突き出した切っ先は分身を貫き、球体が一つ、塵と化す。
背後に迫っていた触手もざあ、と音を立てて崩れ去った。
それでも、白銀の勢いは止まらない。
更に下へ向けて飛びつつ、白銀はくわ、とその口を開いた]
― 虚無の深淵 ―
[放たれた聖なる光は伸ばされようとした触手ごと、二つの分身を焼き尽くした。
そこで一度息を吐き、周囲を見回す。
ふと、目に入ったのは戈を振るって黙々と虚無を切り払う姿。>>251
視線の先に気づいた白銀がきゅ? と鳴く]
……いや。
ああいう事聞かれたの、さすがに初めてだったな、って。
[呟きと共に思い返すのは、先の領域での出来事]
― 霊王の領域 ―
[開いた扉を潜る前。
投げかけられた問い>>242に、紫水晶と紅が瞬いた]
……んー、俺とヴァイスは、別の場所を護るのが本来の役目だから、ずっとここにいた訳じゃない、かな。
ここを守り続けてるのは、ティアの方。
『……とはいえ、あたしも護ってる、っていうのとはちょっと違うわね。
あたしの役目は、いうなれば楔や鍵そのもの。
あと、一応人としての天寿は全うしてから、違うものに転化してるの。
……誰かさんは、どう考えても天寿じゃなかったけどー』
……その話、今必要?
[ジト目と共に向けられた言葉にこう返して、それから]
……うん。
最初から、なすべき事は変わっていない。
騎竜師として……天と地を結ぶ絆持つ者として。
この世界の在り方を保つために、力を振るってほしい。
[変わらない、という言葉に対して向けるのは肯定。
ついてけねーと言う突っ込みにはだよねー、と言いそうになったが、さすがにそこは抑えておいた。*]
― 虚無の深淵 ―
[かつて世界を呑み込まんとした『翳り』は、当時、人の心にも大きく翳をさした。
絶望や不安を掻き立てられ、それによって力を得た虚無によって更なる澱みに落ちていく。
そんな負の影響は、少なからず出てはいるようだけれど]
……さすがだね。
[誰一人、屈する様子を見せない若者たちに小さく呟いて。
それから、き、と上を見た]
[こちらを捕えんとするかの如き動きの分身。
とっさ、大剣を振り抜く事で払いのけるものの、分身はその状態で器用に触手を伸ばしてくる]
……そういう芸達者ぶりは、いらないって……!
[突っ込みつつ、大剣を戻そうとするもあちらが僅かに速い]
[大剣に先んじて振るわれたのは、白銀の爪。
それは伸びた触手を払いのけ、上へと振るわれた大剣が分身の本体を叩き切る]
……ふう……ありがとヴァイス、助かった。
[短く紡いだ礼に、きゅーう、と声が返る。
まだ終わってないよ、と訴える声にわかってる、と返して。
紫水晶の瞳が周囲を見回した。*]
― 虚無の深淵 ―
[若き騎竜師たちと、その相棒たちの乱舞は、薄墨色の分身を消し去っていく。
それに憤ったのか、『虚無』本体がぶるん、と震えた。
合わせるように、球体の本体から触手が伸び、薄墨色の球体は更に異様な態になった]
……このままだと、消耗戦か。
そうなると……。
[最終的には、『虚無』の中央にある核を打ち砕かなければならない。
それには、相応の重い一撃が必要になる。
自分でもやれなくはないが、こちらには散らした後のあれこれもあるし……と。
そんな思案を経て]
みんな、聞いてほしい。
『虚無』の本体が本気を出してきた……このままだと、泥沼の消耗戦に突入する。
だから、こちらは一撃必殺を狙うべきなんだけれど。
あれの核を砕くには、相応に重い一撃が必要なんだ。
斬ったり突いたり射たりするよりも、叩き壊す方が通るというか、何というかでね。
[昔はそれで苦労したよなー、なんて思考が横道に入りそうになるのはちょっと抑えて]
俺のこれでもなんとかなるとは思うけど、確実性を取りたいから。
……『虚無』の核を砕く役目、きみたちの中の一対に託させてほしい。
勿論、俺たちも全力で援護するから。
[一度自身の剣を見た後、改めて若き騎竜師たちを見回して。
告げる声音は、静かなもの。*]
― 虚無の深淵―
[こちらの言葉に対して幾人かの視線が動く。>>299 >>301
それを追って視線巡らせた先には、鎧竜と共にある騎竜師の姿]
…………。
[やらせてほしい、と。
皆の力で届かせてほしい、と。
願う姿>>303に、眩し気に目を細めたのは刹那の事]
……わかった。
『虚無』の核の撃破、きみたちに託す。
最後の仕上げは、俺たちの役目だから、そこは心配しないで……全力を尽くして。
[一礼の後、告げられた宣。>>304
それを真っ直ぐに受け止め、頷きを返す。
直後、『虚無』の本体が奇怪な音を立てて蠢いた]
……何はともあれ。
まずは、核への道を拓く!
あの触手、中々しぶといから注意して!
一回や二回切られた程度じゃ再生するからね!
[今なすべき事と、注意すべき事を告げた青年は、剣を握り直して『虚無』を見る。
紫水晶の瞳にあるのは、なすべきをなさんととする意志の光。**]
― 虚無の深淵 ―
……あのねー。
[それぞれに動き出す若者たち。
どさまぎ的に言われた何かには思わずジト目になったが、それは一瞬]
……さて。と。
上と周りは任せてよさそうだし。
[ならば、自身が向かうは下。
白銀が大きく羽ばたき、球体の下方へと降下する]
……通らせて……。
[当然の如く、迎え撃つかのごとき触手が迫るが]
……もらうよっ!
[それに対するのは、まだ距離がある内からの横薙ぎ一閃。
振るわれた剣から、三日月型の刃のようなものが飛び立ち、それは強引に触手を切り払っていく]
ヴァイス、覚えてるよな!
[球体を下から見上げる位置まで飛んだ所で、白銀へと問う。
返るのは、もっちろーん! と言わんばかりの甲高い鳴き声]
……下から一撃、全力行くよ!
[叫びつつ、白銀の上に片膝ついて、大剣の刃を自身の右下へと流す。
位置は球体の真下。
丁度、上から降下してくる鎧竜と反対側の位置。
二対の紫水晶が同じ位置を見上げ、そして、青年が跳ぶ。
球体に近づいた所で振り上げられた剣が薄墨色の下部を大きく切り開く。
直後、白銀が光のブレスを叩きつけた。
聖なる光は切り裂かれた部分から球体の内側へと流れ込み、そして。
球体の中央にあるもの――漆黒の球体を照らして浮かび上がらせる。
それが打ち砕くべきものである、というのは言うまでもなく伝わるか。*]
― 虚無の深淵 ―
[放った白銀が放った閃光は、才高威力の光のブレス。
その輝きはしばし内にとどまり、核の位置を浮かび上がらせるだろう]
……ここまでやれば……っとと!
[後は、との言葉は続かない。
というか、それどころではない。
何せ、剣を振り切った後の自由落下真っただ中、触手らに取っては体のいい的だ。
しゅるりと伸びてきた触手はとりあえず蹴っ飛ばして態勢を整え、タイミングよく飛来した白銀の上にすとん、と落ちる]
[白銀との短いやり取りに苦笑しつつ、青年は呼吸を整える。
後は、託したものに任せて自身は最後に為すべき事象に備える構え]
…………。
[見据える紫水晶に陰りはない。
彼らが必ずやり遂げると信じているから。*]
― 虚無の深淵 ―
[切り拓かれた道。
それを駆けた一撃が、漆黒の核を打ち砕く。
複数の硝子が一斉に砕けるような、そんな感じの音が薄墨色の虚空に響き。
それから、虚無の本体がぐずり、という感じで崩れ始めた]
……っ!
全員、下がって!
飲まれる前に、早く!
[核を無事に砕けても、本体の崩落に巻き込まれては意味がない。
だから、と声を張り上げつつ、青年は後ろに控えるティアナを振り返った]
……ティア!
『わかってるわよ!
魔界と天界、霊界と竜界。
四界の封護の内にて、我、願う。
あまねく精霊の力、霊王珠カーリタースの覡たる我が許へ集い来たれ。』
[歌うように紡がれる言の葉に応じ、色とりどりの光の珠がティアナの周囲に現れる。
その様子を見つつ、青年は呼吸整え、剣を構えた。
構えた剣に向けて、ティアナの周囲に生じた光が集まっていく]
……我、天の竜皇の血を継ぎし者の号において求める。
竜皇剣フトゥールム、あまねく精霊の祝福を持って覚醒せよ。
[静かに紡ぐ言の葉に応じ、剣が形を変える。
若き騎竜師も一度は目の当たりにしているはずのもの。
聖王国の護り手たる騎竜師だけが所持を許される剣――『聖剣』とよく似た、けれど、それを更に研ぎ澄ませたような剣へと]
我は、天と地を結ぶもの。
その絆にて人界と竜界を繋ぎ、それを持って四界と人界とを繋ぐ者。
『天煌竜牙』、その号を持って、今ここに宣する。
世界を呑み込む嘆きの翳り、それを浄め、穏やかなる眠りをもたらす事を。
……ヴァイス、合わせろ!
[叫びに応じ、白銀が甲高く鳴く。
色とりどりの光を纏いつかせた剣が大上段に振りかぶられ、一気に振り下ろされる。
剣から放たれるのは、色とりどりの光芒。
僅かに遅れて白銀が放った光とそれは一つとなり、崩れていく虚無を包み込み、そして。
りん、りりん、と。
鈴を振るような音を響かせた後、溶けるように消えてゆく]
…………は。
[数拍、間を置いて、零れ落ちたのは小さな声。
光が溶けた後には、球体の形はなく。
先ほどよりも明るくなった薄墨色の空間がゆるりと広がっていた。*]
……やっぱりこれ。
つか、れる。
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