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つれないこと。
[言葉で、態度で、眼差しで、一線を引こうとする、
そんな頑なな彼の態度も、剣を見た時だけ様子が変わった。
明らかに関心を寄せたさまに笑みが零れる。
またひとつ相手のヴェールに指がかかったようだ。
早く、全てを剥ぎ取ってしまいたい。]
[松明を構える姿勢は凛として、隙が無い。
あれが崩れるところが見たい。]
本当は気づいているのだろう?
私たちの縁は、既に結ばれている。
[投げかけた言葉を口火として、ひと足鋭く踏み込んだ。]
[刃を伴った攻撃は、最初の対峙のときよりも容赦のないものだった。
軽やかに刃を舞わせ、手足を狙って数度斬りつける。
内心の高揚を映した剣は、烈しくも嫋やかに、時に淫靡でさえあった。
流れるような連撃の最後、刃は曲線的な動きを不意に止め、真っ直ぐに突き出される。
水平に構えられた剣先は、松明を狙っていた。*]
[巡り合う刃と炎。触れる度に火の粉が散って闇を照らす。
弾かれた炎の欠片が不死の徒の髪に触れるとも、焼かれる様子は無かった。
時ならぬ装飾として暫しとどまり、やがて風に攫われていく。
一合ごとに熱が上がる。
陶酔と高揚が体を巡り、身体を目覚めさせる。
それは対手も同様と知れた。
重なり離れる視線の温度が、じわり変わっていく。]
[一閃の構えに相手が素早く反応する。
その動きに目を瞠り、──笑みに崩れた。
寝かせた刃が真一文字に掌を貫く。
切っ先が肉を押し破る感触は、別のものを連想させた。
勢いのまま望むまま、剣の半ば近くまでを押し込んで動きが止まる。
すぐには引き抜くも斬り払うもできぬ深さ。*]
/*
データ作って遊ぶの楽しいよね。プチTRPG気分。
ただふと思う、あるゲームデザイナーの言葉。
データを作るとどんなに強くても理論上倒される可能性があるから、絶対に倒されたくないNPCはデータ作らないんだって。
/*
それにしても楽しい。とても楽しい。
バトルと見せかけてエロる試み。
どちらも肉体言語でのぶつかり合いという意味では同じだもんね。
[刃を介し、ふたりが繋がる。
動揺の無い相手の様子を見るまでもなく、これは彼が望んだ形だ。
罠、或いは奥の手を警戒するべきだろうが、剣から手を離したりはしなかった。]
知りたい。
―― おまえを、もっと。
[足元から立ち昇る花の蜜香と、貫いた掌から滴る血の芳香、
なにより彼の存在そのものに陶酔し、酩酊し、欲望に掛かる手綱がほどけていく。
普段から、そんなものは無いに等しいのだけれども。]
[かくして、何をするのかという期待に満ちて彼を見つめていたその眼が、不意に大きく見開かれた。]
な、 ぁ… 、
[剣を持つ手が震える。
刃を伝って、なにかが流れ込んでくる。
驚愕はたちまち恍惚へと変じ、注がれるままに身を委ねかける。
だがそれでは身体が持たないと、最後の一線で理性が踏みとどまった。]
[己が持つ剣は、鋼を鍛えたものではない。
持つ者の意思に応じ、気を注がれて刃の性質をも変える魔匠の剣だった。
故に、剣を手放さない限り、刃に注がれた力は使い手へと伝わる。
それと理解してなお柄を握ったままでいるのは、意地でもあった。
これを受け止めずに、おまえを制し得ようか。
挑むような、愉しむような眼差しで彼を見返す。]
── 感じる。
おまえを …。
[力の流れを制御下に置くべく、息を深くした。*]
[手繰ろうとする力の波は、容易には掴ませてくれない。
掴んだと思えば弾いてくる。
ガードが堅いのは、本人と同じだ。
だからこそ、なお挑みたくもなろうというもの。]
倒したい相手?
[力の流れに意識を傾けていたところへ問いかけられ、虚を衝かれた顔になった。]
いいや。いない。
[答えながら、逆に刃へ気を流してみる。
今感じている、この熱が伝わるといい。]
欲しい、と思う相手はいる。
私の目の前に。
[運命を感じたのだと、言葉にすれば陳腐だろう。
だがそれこそが偽りなき本心だった。*]
[我ながら真っ直ぐな告白に、拒絶の言葉が返ってきた。
その言葉のどこかが引っかかり、おや、と思う。
なにが気になるのか探るより先に、蹴りを受けた。
剣を封じられたままの至近では、躱すことは難しい。
歯を食いしばっただけでまともに食らい、後ろに弾き飛ばされた。
剣を握りしめた手に、肉を裂く感触が伝わる。]
[弾かれた先で、花々を散らしながら踏みとどまる。
大地を踏みしめる足がいつもより軽い。
不思議と、気力が充溢しているように感じる。
先ほど流れ込んできた彼の力の影響だろうか、と左手を握り、開いて感触を確かめた。]
私は、ただおまえを ───…
[熱い息のまま、告白の言葉を重ねようとする。
その時、彼と自分との間に影たちがなだれ込んできた。]
……なんだ?
[続々と集まってくる小さな影たちは、それぞれに銀の盆を頭上に掲げ、様々な料理を載せている。
あっけに取られて見ているうちにも、城内から続々と集まりつつあるようだった。]
どういうつもりだ、これは?
[すっかり気を削がれて影たちと料理の数々を眺めた挙句、彼の方へと困惑気味の視線を向けた。*]
[視線を向けた相手が駆け出していく。
影と料理を蹴散らして追うことに躊躇は感じない。
だが、そうはしなかった。
今追い縋って声を掛けても、溝は広がるばかりだろう。
考え、吟味する時間が必要だ。お互いに。
花の香の陶酔は未だ身体を疼かせるけれども、身を揉んで耐える時間もまた尊い。
募る想いの深さだけ、手にする喜びも増すのだから。]
おまえたち。
[去っていく彼を見送った後、影たちへ視線を向ける。
ひしめくほどに周囲に集う料理の群れに苦笑が浮かんだ。]
せっかくの歓待だけれども、私に食事は必要ないよ。
戻っておまえたちの主人に伝えるといい。
歓待よりも先に、お招きいただいた理由を聞かせていただきたい。
[わさわさと動いていた影たちは、声を掛けられてぴたり、と固まる。
だがすぐに、わしわしわしわしと肉薄してきた。
てんでに料理を翳しての食べろアピールに、さすがにたじろぐ。]
わかった。わかったから。
[両手で制して、手近な銀盆からフルーツを一つ取る。]
これをもらおう。
盛大な歓待に感謝する。
[じっとこちらを注視していた──目があるのか不明だが──影たちに謝意を告げればそれで満足したのか、来た時同様にわらわらと城内へ戻っていった。]
[ここで立っていても始まらない、と周囲を見渡す。
彼も城内へ向かったようだし、ひとまず中に入ろうと足を踏み出したところで、己の身体の異変に気が付いた。
指の先が消えている。だけではない。
手首から肘、肩の方まで見る間に消えていく。
咄嗟に罠を疑った。
消滅させられるほどの呪法があの柘榴に掛かっていたのかと。
けれども消えた手の感覚はあるし、見えないだけで触れもする。
なにより、あまり危険な気配もしなかった。]
これももてなしの一部、とでもいうつもりか?
[仕掛けてきた相手の意図がさっぱり読めないまま、全身が透明になってしまって途方に暮れる。]
[だが考えてみれば、こんな機会もあまり無い。
せっかくなのだから、堪能するのも悪くない。
そう思い立った後の行動は早かった。
一緒に消えたりはしなかった衣服を脱ぎ捨て、適当に投げておく。
剣は、消すも取り出すも自在なので問題ない。
問題となるのは、彼と自分の縁を結ぶきっかけとなった宝石と警察手帳だったが、これは使い魔を喚んで運ばせることにした。]
落としては駄目だよ。
[ポケットをちぎった袋に品物を収め、有翼の黒猫に背負わせて括りつける。
小首を傾げた使い魔は、すぐに皮翼を羽ばたかせてどこかへ飛んでいった。]
[真に身軽になって、改めて城内へと向かう。
さて、彼はどこにいるだろう。
今度はこちらが追う立場になってみようか。
それもまた、楽しめそうだ。*]
/*
れっつぜんら☆
脱ぎたかっただけだなんてそんな。
そういえば、実際に透明人間になったら網膜が光を捕えなくなるので目が見えなくなるそうですね。現実厳しい。
[血脈の微かな共鳴を頼りに、去っていった彼を探し始める。
それほど遠くへ行っていないはずだ、との予測通り、ほどなくして騒ぎの現場に行き会った。
城館の一角で、彼が影たちに取り囲まれている。
周囲を舞い散るのは、今度は花弁ではなく寸断された布だ。
これは面白いところに来た。
文字通りの一糸まとわぬ姿にされていくのを、離れて鑑賞する。
良い。]
[すっかり衣服を剥ぎ取ってしまうと、影たちは彼をどこかへ運ぶようだ。
面白そうなのでついて行くことにする。
せっかくなので、混ざってみた。
運んでいく影たちの手に紛れて、彼の肌に触れる。
どうせ彼には見えない。はずだ。*]
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