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人狼、か。
そりゃいてもおかしくないだろうな。
[あの時点で、誰も人狼の話題を口に上げなかった。
知っている者も当然いただろうが、御伽噺ですませているか
それとも白を切っているかどっちかだ。
俺があれ以上言わなかったのは、そのままだからだ。
犬や狼に見えるものはいないが。
人狼はいないとは言っていない]
戦場にいた奴らも、人狼だったのかな。
[血に染まった戦場は人が人を殺し、
怪我や疫病で倒れた者は足手まといとして殺された。
いや、骸となっても……。
そこまで思い出すと過去を振り切るように頭を振った。
俺が生き延びれたのは、単に運が良かっただけ。
仲間を見捨てて、あいつらが飢えていなくて、
まだ怪我をしたのが片足と片目だっただけだ]
[敵に背を向けるとは何事かと
怒鳴る上官にすら背を向けた。
あそこから生きて帰れたのは奇跡だったはずだ。
だが、生き延びて戻って来たはずの場所は地獄だった]
どうして俺は生きているんだろう。
[既に帰る故郷も、待っている人も、守りたいものもない。
それなのに、生きたい、死にたくないと言う
思いだけが戦場から俺を帰還させたんだ]
あいつらは……何を期待しているんだろう。
[悼む泪が止めば、また左目を包帯で覆い隠す。
何も映さないはずなのに、ぎょろりぎょろりと
左目が動いている気がして気持ち悪かった。
身体の包帯は他人に任せたこともあるが、
頭は気持ち悪いだろうから、と断り続けたせいで
誰も見たことは無いだろう]
100年前と同じなら人狼が出てくるのか。
それとも何事もなく吹雪が晴れるのか。
どっちだろうな。
[頭の包帯を巻き直したら、次は身体。
手伝ってくれた者がいたら覚えているだろう
切り傷や火傷と、見える部分とは全く違う皮膚。
癒えたはずだが、境界線の綺麗な皮膚はまるで
他人のようにも見える]
[身体は冷えているが、風呂を勧められても
傷跡を見せるわけにはいかないと、
最後で良いと伝えるだろう]
あ、食事、か。
何か手伝えること、あるかな。
[しかし食事を最後にすると言うのはおかしな話。
漂ってきた美味しそうな匂いが、腹の虫と一緒に
現実に引き戻してくれた。
誰かの家に招待された時以外は、パンと簡単な
スープで済ませているせいか、こんな時でも
旨そうな匂いに心躍るのは薄情な証拠だろう。
それでも生きていくには必要だと部屋を出て
食堂へ降りようとした]
− 2階廊下 −
[部屋を出ればすぐに階段だ。
足の事を考えれば1階が良かったかも知れないが
男子たるものこの程度の階段で
根を上げるわけにはいかない。
手すりを掴めばゆっくりとだが安全に階段を
降りられるのだ。
行動するときは少し早めに動いた方がいいな、と
考えながら扉を開けた向かいの部屋。
そこにシスターの姿を見つけて>239思わず足を止めた]
あ、フリーデル。
君も夕食か?
[レジーナを悼む傍に、シスターの姿も見た気がした。
彼女に声を掛ける事も失念していた事を
思い出して言い淀む]
そ、の……レジーナさん。
残念だった。
君は……大丈夫か?
[何をもって大丈夫なのか俺自身説明は付かないが、
数歩で縮む距離。
悲しんでいないか、苦しんでいないかと、
彼女が許す限り距離を詰めて]
あなたの心まで凍ってしまわないか、心配で。
[抱きしめなどしない。
ただ不安そうに見上げるだけ]
皆神父様やシスターを頼ると思うけど。
無理はしないで欲しい。
[あなたも人間のはずだと、呟くが彼女には
どう届いただろう]
美味しそうな匂いがしてきたので
食事が出来たんだろう。
手伝えることが無いか聞きに行きつつ
腹に収めに行くつもりだが、あなたは?
[シスターにも食堂への道を誘ったが、
他に優先すべきことがあるようならそれ以上
声を掛けることは無く、ゆっくりと階段を下りていくつもりだ*]
…………あの、
……今、は熱いくらいです。
[自分でも何を言っているのかわからない。
ふたつわかることは。
多分まるっきり見当違いな答えだろうということと。
今はこの視線を逸らすことができないということだけ。]
− 2階廊下 −
[彼女が向かいの部屋で何をしていたのか
知るはずもない。
単純にレジーナの死を悼み、神に祈りを捧げていたのだろうと
勝手に思う事にした。
彼女にとっても初めての吹雪だろう。
冷えていないか、困っていないかと
思わず距離を詰めてしまったが、どうやら大丈夫のようだ]
答えにくい事を聞いてしまったようだな。
悪い。
俺の無理とシスターであるあんたの無理は違う。
心労だってあるだろう。
……嫌な言い方だが、俺は戦場で。
ひどい死にざまを色々経験している。
それにこの手だって。
[安心させようと話しかけた過去だったが、
相応しいものではないと途中で気付いて
開いた自分の手を見つめて拳に変える。
死なんて隣同士だった。
揺らぎはするけど、一時。
少しだけ怖いと思った。
手を差し出してくれたシスターの手が
氷のように冷たくなっても、生暖かい血に塗れても。
俺は平然と見ているのだろうかと]
冷たいのは、……私の方だわ……。
[言えそうにない。
手紙を読んだときの悲しみは、より大きかったなんて。
自分の魂を包む、どす黒い考えなんて。]
大丈夫。
あなたは暖かい。
フリーデル。
俺は……あなたの温もりに触れられて良かった。
これだけは本心だ。
きっと後の俺は出鱈目だけど。
[自嘲は変わらない]
……どうして……。
[過去形なのか。
どうして、「これだけは」なのか。
どうして、どこまでも自嘲的なのか。
理由もわからないのに、訊けないのに、悲しくなって。
他者の過去へ触れないと決めたことを、きっとこのときほど後悔することはないのだろう。
それでも、ひとつだけ伝えたいことは。]
私は、あなたの暖かさを知っているわ。
[殺めた人のために心を痛めていることを。
一生懸命に字を綴って送ってくれていたことを。
好きと綴りたい相手も、書き残したい女性も自分しかいないと言ってくれたことを。
この先、彼がどう変わろうとも。私だけは知っていると。]
そのことを、どうか忘れないで。
[最後、手を離す前に囁いた。]
[問いかけに応えてはやれない。
その答えが、きっと明日に出ると予感がしているからだ。
それでも俺の温もりを知っている。
忘れないでと声を掛けてくれたシスターに
返す言葉を探す。
これしか無いのが。
掌に載る位の、温もりを渡せば。
きっと……ではなくなるだろうけど]
[酷い言葉だ。
それ以上に、彼はひどい。ずるい。
だって、そんな酷い言葉を、そんな顔で言われたら。]
(――忘れられるわけないじゃない)
[その言葉は、ぐっと呑み込んだ*]
ああ、ありがとう。
ヤコブが作ってくれたのか。
なんだかんだと料理上手い奴多いよな。
[野菜を作る上手さと料理の上手さは比例するのだろうか。
一口含めば温かさが喉から胃から染み渡る]
自分で作るより他人に作ってもらうからかな。
より旨く感じる。
[誉め言葉がそれで合っているのか問題があるが
俺なりに考えたつもりだ。
少なくとも俺より旨いのだから誉め言葉だろう]
旨い旨い。
[パクパクと肉も何もかも皆胃袋の中。
食べられるものがあるだけで良い事なのだと
綺麗に平らげた]
あ、風呂は俺最後でいいぞ。
傷あんまり見たくないだろ。
[誰かが風呂の話を始めれば、あらかじめ
最後に入ると断って、食事の片付けくらいは
出来ると、危なっかしい足取りと手付きで
厨房へと持っていく]
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