情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[狙いました横薙ぎが振るわれる。風圧。
弾き飛ばされる自分を見た ── ここが地上であれば、そうなっていたはずの幻視。
だが、体軸を支える場のない中空では勝手が違ったらしい。
ハルバート自身の重さに、使い手が引きずられている。
なるほど、重量兵器を扱う場合には注意だ、と肝に命じつつ、甘い攻撃をいなす。
元より、初撃を掌底で受け流して、喉笛に食らいつく策だった。
薄く肌を裂かせる程度で刃を擦過させ、牙を剥く。]
[が、勢いのままに”リンゴ”の身体を一回転したハルバートがもう一度、巡ってきた。
おそろしく場慣れした者のとっさの動きだ。
防御の形に構えられるそれが進路を邪魔して、まともに両手で捕まれた柄の真ん中に噛み付いてしまう。
くぐもった声が出た。
それくらいで尻尾を巻いてたまるかと、勢いのままに押し込み、“リンゴ”の手に手を重ねて封じんとする。
同時に腹に蹴りを入れる流れだ。**]
[噛むのかよ、と投げられた言葉には、単なる事実確認以上のものが感じられて、
武器を食わすとか食えないヤツ、と言い返そうと思ったけれど、顎が痛くて控えた。
関節外れてないといい。
力任せに握り込んでやろうとした手が素早く離される。
得物を捨てることに迷いすら見せない、"リンゴ"の動きは美しくすらある。
蹴り脚を腕でガードされ、突き放され、一気に間合いが開いた。
翼でブレーキをかけるも、追撃には移らず、一端、攻撃は止める。
手に残されたハルバートに視線を落とした。]
[と、下の方で素っ頓狂な声があがる。
“リンゴ”が地面でジタバタと一人ダンスをしていた。
まるで凍った池で転んで起き上がれない、そんな状況である。
なんとか懸命に翼を羽ばたかせている様子は、雛めいても見えた。
ハルバートを握ったまま下りてゆき、振りかざす。
投擲して貫くという使い方ならば、質量に振り回されずに扱えそうだと思った。]
[遠心力を充分に使って、”リンゴ”とハルバートを遠くへ放り投げれば、飛んで行った先の縄張りの主と意地の見せどころになった模様。
交わされる気合いの声と烈風の羽ばたきに、関節がウズウズする。
まとめて薙ぎ払いたい。]
[と、アクロバテッィクな反転を見せた”リンゴ”が、急降下してきた。
それは、先に自分が見せたものよりなお速く、のけぞるほどの暴風の後押しを受けているかのようだ。]
── …、
[投げた“リンゴ”が、ボールめいてこちらに戻ってくるのは偶然ではあるまい。
もっと欲しいという願いが通じていると思った。
嬉々として、迎え撃つべく上昇に移る。]
[疾駆する両者の距離は瞬く間に迫り、”リンゴ”が繰り出すであろうハルバートの軌跡のをギリギリ躱してカウンターの食いつきに持ち込むべく、わずかに肩に捻りをいれた瞬間、命じる声と名が叩き付けられる。]
── ッ !
(――ヴォルフがいい。 ヴォルフレイムを短くして、ヴォルフ。
おれはこれから、おまえのことをヴォルフって呼ぶことにする。)
[首輪を引っ張られたように、動きが固まった。*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新