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[しかし深刻になりかけた空気を払拭するように、再び笑みを浮かべた。]
ヤコブから褒められると、やる気が出るんだ
いつもありがとーね。
…。
[ただ、ヤコブの意地悪な問いかけに対しては、沈黙をもって回答とした。
迂闊な答えを返せばドツボにはまる予感しかしない。単純なわんこ系男子と言えども、学習くらいはする。]
わ、わかった。
えーっと、とりあえずそこまで雪が降らないことを祈っとく!
[なるべく重々しい口調で答えておいた。
最終手段と言えば聞こえはいいが、要するに”使わずに済む方がずっと楽”との意味も伴っている。
本来ならば力仕事の中心となるべき青年男子としては、全くもって締まらない話だ。]
[ヤコブから絵の依頼と、真剣にこちらを見つめる様子に身が引き締まる様な思いを感じつつ、ピンと背筋を伸ばした。]
うん。もちろん構わない。
というより、描いて欲しいと言われて嬉しい。喜んで引き受けるよ。
何を描けばいいかな?
でもこのあと宿屋におやつ食べに行くし、すぐに答える必要ないから。
じっくり考えて。ヤコブの好きなもの、何でも描く。
[視線は忙しく図書館と紙とを往復させ、木炭を持った手を止めずに必要と思われることを口にした。]
すっかり付き合ってもらっちゃったな。
ヤコブ、体調には注意しろよー。お前は他の人に頼りにされてるんだから。
[すっかりどじっ子ポジションを獲得している己とは違い、ヤコブは貴重な戦力とみなされていることは良く知っている。
宿屋の仕事だけでなく、他の人の手伝いや雪かきもしていることを思い出して、気遣う言葉をかけた。]
うん、分かった。
クララさんに完成した絵を渡したら、すぐ宿屋に行く。
…ば、馬鹿。空からはいきなり埋まるほどの雪は落ちてこないし!平気だっての。
[最後の冗談にも、あからさまに動揺した返事をすると。
家に戻ると言うヤコブに手を振って、画材道具を片付け始めた。]
― 図書館 ―
クララさーん。絵が完成したよー。
[OPENの看板が立てられた扉を開いて、中に声をかける。
クララが対応に出てきたら、木炭デッサンで精密に図書館の外見を描いた絵を渡しながら、先ほどヤコブが口にした言葉を伝えるだろう。]
さっきヤコブがここに来た時、言ってたんだ。
天気が変わりそう、こう急だと荒れるかもしれないって。
クララさんは一人だから、不安だと思ったら宿屋に来たらどうかな?
そうそう、おやつがあるって話だから、それ食べに行くだけでも価値はあると思うよ。
[この提案に対して、クララは何と答えただろうか?
用事を済ませると、すぐに宿屋に戻った。
もしクララが一緒に行くというならば、いいよと同意するが、最終的にどのような選択をするかはクララ本人に任せるつもり。**]
― 宿屋への道 ―
あ、アルビンさん。おはようございます。
[冬の間、風花の村にやってくる行商人の姿を見つけて、丁寧に挨拶をした。
基本的にドジで抜けている自分が、一つだけ厳格に守っている決まり。
”自分がされて嫌なことは、決して人にしてはならない。”
物心つくよりずっと前から、青年は他人から詮索されることが何より苦手だった。
たまに村の外から来た人が描いた絵に目を止めても、興味が己に向くと分かると、接触を避けてばかりいた。
だから、アルビンについては”冬になると村に帰ってくる人”以上の情報は知らないし、また知ろうとも思わない。
それでいて、年上に対する節度を守りつつ、アルビンからどのような対応を受けても、気さくに話しかけている。]
雪があまり積もらない内に戻ってこられて良かったですね。
一昨年は大雪が降って大変でしたから。
[いつ戻ってきたのか、正確な日時は分からないものの、敢えて聞こうともせずに。
旅をした直後であろう、アルビンに”お疲れ様です。”とお辞儀をした。]
[アルビンは何と返事をしただろうか?
アルビンから何か聞かれたりすれば、自分の分かる範囲で答える。
しかし天気が荒れる前に宿屋に帰れとヤコブから言われている手前、話が終わればすぐに頭を下げてその場から辞するだろう。]
じゃあ、僕はこれで。
ヤコブの話によると、天気が崩れそうだとか。早く宿に戻れと言われてますから。
[アルビンに挨拶をしたのち、再び歩き始めた。]
[青年にとって、ペーターは物心つく前から年上のおにーさん、だ。
10年前から見た目は変わらなくても、そのポジションは同じ。
中型犬みたいに愛想良く…尻尾があったら、ぶんぶか振っていたに違いない…ぽてぽてと近づく。]
ううん。宿屋にはお世話になってますよー。
でも、今日は朝日がきれいに昇りそうだったから、早起きして図書館の前で絵を描いてた。
[タメ語と敬語がちゃんぽんになった言葉遣いで、今までの行動を説明する。
絵以外のことはドジだとの自覚があるため、どのような視線を注がれても気にすることはない。
が、さすがに面と向って”可愛い。”と言われたら、僕は男ですよー!とぶんむくれるだろう。]
大丈夫、大丈夫。僕いい子にしてたから。
全然困らせてないよ!
[ペーターの問いに対して、元気良く胸を張る。
実際はペーターの想像通りなのに、全然自覚していないからこその言動だった。
しかし、少し考え込んだ後、事実をぽつりと口にした。]
あーでも。寒いから早く図書館に入れ、とは言われた。
[その一言が全てを物語っている訳だが、やはり無頓着。]
[良い絵は描けたのか?との問いかけと、髪をわしゃわしゃと撫でる感触に目を細める。]
うんっ!クララさんが図書館の柱に飾ってくれるってー!
嬉しいな。ペーターさんも暇ができたら見に行ってみてください、朝日が差す図書館の絵です。
[ペーターが病気を発症してからも、態度を全く変えることはなく。
道で会えば、普通に手を振って挨拶して。
それと同時に、ペーターの状況について一切尋ねることもしない。
何年経とうとも、体だけは成長しても、中身はある意味子供の頃と変わらない。
背伸びをして頭を撫でてくれるペーターの行動も、素直に受けるのだった。
一所懸命描いた絵を渡したときの思いも、未だにしっかりと覚えている。]
[何故か髪に触れるペーターの手の速度が増した。
その原因及び理由については、考えようともせずに、ただ撫でられている事実に対してえへへーと気楽に笑う。
飼い主が投げたボールを拾って、誉められた犬のような笑顔。]
[しかし薬の袋を示されると、ふと表情を引き締める。]
うん。ヤコブもね、天気崩れそうーって言ってましたから。様子は見た方がいいと思います。
あ、クララさんは元気にしてますよー!
[ペーターの病気の具合が現在どのくらいか知らないし、また立ち入ろうとも思わないから、天気を口実に様子見に対して肯定の返事を返す。]
[しかし手が肩にぽんと置かれると、あーっと声を上げた。]
そうだ!ヤコブに早く宿屋に行け、って言われてたんだっけ!
[まさに宿屋で、ヤコブとレジーナから寄り道をしていると正確に見抜かれているところだった。
ヤコブの声のトーンや、レジーナの冗談交じりの呟きを知ったら、さすがに申し訳なく思うだろう。
ペーターが用事を言い出さなければ、これで失礼しますと断って、早足で宿屋に向うつもり。]
― 宿屋・食堂 ―
どうも。皆さんごきげんよー。
[ペーターに宿屋に向うと告げたあと、一緒に宿屋に行ったか、はたまた別行動になったかはさておき。
慌しく宿泊客や従業員が出かけたとは思えないほど賑わう宿屋の食堂に、元気良く挨拶をしつつ登場。]
レジーナさん、おやつちょーだい♪
[気安い口調で宿屋の女主人におねだりというか、催促の声をかける。
風花の村出身の母はレジーナと同じ年だし、宿屋で世話になっている関係から、いつも遠慮することはない。]
[しかしヤコブの姿を見つけた途端、反射的に目を伏せた。]
えーっと。
い、一応、てててんきが崩れる前に、宿屋には、ついた、よ?
[言い訳がましい台詞を、いつになくごにょごにょした口調で呟く。
しかし赤く染まった頬は隠しようがない。
一度外に出れば、鎖が切れて脱走した犬のようにそこらをふらふらする癖は、どうしても治せない。治らない。]
[つかつかと近づくヤコブに気付かず、気配を感じて顔を上げたときは時既に遅し。]
ひゃんっ?!
[軽くてもデコピンをまともに食らって、小さな悲鳴を上げた。]
[額を押さえた手の下から、わずかに涙が浮かぶ目が覗く。]
ヤコブに心配かけたのは悪いと思ってるってば。
つ、次は、気をつけ、る。
[傍目にも弱々しい口調だったから、果たして説得力はあるや否や。]
うんうん、大丈夫。
風邪もひいてないし、元気だよ!
[何故か心からホッとした様子のカタリナに釣られて?いつになく真面目顔。
このくらい真剣に表情を引き締めたことは、集中して絵を書いているとき以外滅多にない。
レジーナの、翌朝までうろうろ…という評価は知らずとも。
優しいおねーさんの気遣いは伝わってきたから。]
[それから一気に頬を緩めて、えへへと声を上げる。]
カタリナさんも、レジーナさんのおやつを食べに来たのですか?
レジーナさんの料理は美味しいもんねー。
[誰に対しても暢気とマイペースを崩さない青年は、いろいろ複雑な事情があるらしいカタリナに対してもやはり態度を変えない。]
えっ?!ヤコブ、まじでそれするのか?
むー。おやつ抜きはきっついな。
わかった、前向きに善処する。
[自称育ち盛りの若い体に、おやつ抜きは大変堪える。
さすがに堂々とそれを口にすることこそないが、ヤコブの半分冗談半分本気への返答は、いつになく重々しいもの。
しかし真剣な割りに口にした台詞は、客観的に判断すると使いどころを間違えているとしか言いようがない。]
りょーかい。
ヤコブ、ありがとねー。
[それでもおやつがなくなるとのヤコブの促しに、素直にぺたぺたと移動して、いつもの席に腰を下ろした。
にこにこ。
こぼれそうな微笑みで、ティータイムを楽しみ始める。]
[カタリナがクララに気付いてかけた声を聞いて、描いた絵を宝物にする!と言ってくれたことを思い出した。
そこまで言ってもらえると、描いた甲斐があったなーなどと考えた途端、続いて、クララが口にした噂が脳裏をよぎった。]
人狼の噂、ねー。
[誰にも聞こえないように口の中だけで呟いた。
一番最近にその単語を他の人の口から聞いたのは、レジーナの宿屋。
新緑の村がどうの、という物騒な話と共に。
それが本当なのかどうか、確かめる術はない。
だが珍しくほんの一瞬、全ての感情を閉ざして、ぎゅっと唇を強く噛み締めた。]
[そういえば。
さっきはアルビンに村長がどこにいるのか?と質問をされたんだっけか。]
”余程切羽詰った用件でもあったのかな?”
[宿屋で顔を合わせることが多いアルビンが、珍しくハッキリした物言いをしていた様子を思い返して、思わず首を傾げた。
タイミング悪く、今朝宿屋と図書館との往復の間に村長を見かけなかったからアルビンの役には立てなかったけど。
なるべく早く顔を合わせられるといいなーと心の中で祈っている。]
[アルビンの返事がなかったり、あるいはどもったりしても。
改めてそれを指摘することはないし、根気良く話を待つこともある。
さすがに”よく転びますね?”なんて言われたら、恥ずかしくて口ごもるには違いない。
アルビンの目の前で、何度か転んだことは覚えているから。]
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