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〜誰得:エレオノーレの過去編続き〜
一権力者が代を重ねた罪業は、唐突に降り落ちた。
籠の鳥となり、幾つもの月日が巡っただろうか。エレオノーレにもわからなくなった頃。
唯一の安らぎは、格子が嵌められた窓枠の向こう側の、街並み。
活気づいた豊かな街並みと、天高い青空を見るのが唯一の楽しみであった。
少女が知らぬ間に、暗雲を少しずつ少しずつ垂れ込めていることに、勘付くには彼女は虜囚の身でありすぎた。
――豊壌なる国、時の権力者が望んだのは世を統べることだった。
戦火の種は止まない。戦から戦へ。領土拡大を目論んだ野心溢るる王の治世の折。
常勝無敗を続けていた国が、大戦に敗北した。
何故。国の至宝は喪われていないのに理由はわからない。エレオノーレ自身、おのれの力の及ぶものは理解の範疇外にある。
森羅万象の理に則りの、すべてを把握しているわけではなく。少女の存在が超自然的なものに等しい。一つどころに留まり続けた澱みが、歪みが、堰を切ったというべきだろう。
国王は夢にも、思わず。エレオノーレ自身に問題があるのだと決めつけたのだ――。
少女が長い長い間。幽閉されていた豪奢な部屋に衛兵が足を運び、抵抗も儘ならずに連れられた先に、国王と青の少女は対峙した。
――国を豊かにする至宝よ。力を怠ったか。
エレオノーレに、籠に閉じこめられていた恨みはない。もとよりそういった情感とは縁遠い存在でしかない。
――いいえ。王よ。わたしは国の至宝でなく僅かな幸を運ぶ渡り鳥。このような身にあることこそ、”不自然”なことなのです。
毅然と、少女は応える。
おのれの存在意義を、否定することなど出来る筈がなかった。
例え王の怒りに触れることになろうとも。
〜誰得:エレオノーレの過去編続き〜
王は怒り狂った。何故なら王にとって彼女は国の至宝であり、国に栄華を授ける象徴として幼き頃より伝えられてきたからだ。
世襲された”至宝”を、王の御代で反発を喰らったと覚えたようだった。
――そのような考えを抱くから、何千もの兵の命が失われたのだ!!
国の至宝は国のためだけに在らなければいけない。怒りにまかせた王は、非情な命を下した。
――渡り鳥など、翼が無ければ渡れぬだろう?
エレオノーレは王の逆鱗に触れたことを、悟った。翼は彼女の生命。少女の不思議な力の根源。
その後。何が起きたか。戦うことを知らない小鳥は抵抗する術もままならない、無残にも翼を引き千切られた。
青い羽根に、鮮血が散る。
エレオノーレは、僅かな抵抗の最中足掻くようにはらはらと落ちる青い羽根に手を伸ばした。背にある筈の、翼の羽根。
片手で掴めたのは数えられるほど。もがれた両翼は血を洗い落として、国宝にされエレオノーレは背に醜く爛れた疵を負い、地下へと監禁された。
青い羽根に、鮮血が散る。
エレオノーレは、僅かな抵抗の最中足掻くようにはらはらと落ちる青い羽根に手を伸ばした。背にある筈の、翼の羽根。
片手で掴めたのは数えられるほど。もがれた両翼は血を洗い落として、国宝にされエレオノーレは背に醜く爛れた疵を負い、地下へと監禁された。
意識があるのが不思議なほどの、激痛が背から伝わる。
陽も射さない、窓のない部屋。四肢を動かすことすら儘ならず、少女はひとりで涙を零す。
何故。泣いているのか、彼女自身にもわからないまま。
もう二度と飛べなくなった、青い小鳥は静かに横たえる。
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