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[ そして、何よりも ]
もしも、があれば、俺はあんたの傍には居られなくなる。
[ 守り抜くために離れるしかない、と、決断しなければならない場合もある、と男は知っている。けれど、 ]
それだけは……御免です。俺は、最後まで、あんたの隣に、立って居たいんだ、ゲオルグ。
[ 曝された本音は、どこか痛みを耐えるように響いた** ]
[何だかひどく、にこやかに見送られたような気がする>>179
が、ひとまずそれに気を配る余裕はなかった。
取りあえず手近な場所に一人になって、壁に凭れる。
息を吐けば、痛みのような嬉しいような困ったような心地がした。
暫くの時を置いて、口を開く。]
─────、タクマ。
[ただ名前を呼んで、また少し黙った。
やっぱり笑いたいような困ったような、…複雑な、気持ちだ。]
あー…、あのな。
タクマ。確かに海軍総司令代理を指名したのは俺だ。
俺が指名するしかなかったんだ。
俺は、
───カルボナードは気前良く、軍事の最高司令官に政治の最高権力を与えて寄越したというわけだ。
正直言って、重い。
重いが投げられん以上、仮に受け渡す先が必要だった。
……これは分かるな?
従って、お前さんの想定する指摘は半ばズレている。
元々、要らん権力を寄越してきたのは、連中だ。
俺はただ、それを分散させただけに過ぎん。
腹心の得られる利権なぞ、元からないのさ。…、だが、
…───だが。
お前さんの危惧も、もっともだ。
回避する方法はある。
お前さんの「海軍総司令代理」の肩書きを取りやめ、俺から海軍総司令の名を外し、然るべき将官の中に後継者を探す。
こうしてしまえば、政治と軍事の権限は分かたれるな。
俺が権力をほしいままにする危惧も避けられるだろう。
問題は1年後だが───…
[そうなればゲオルグに、もはや海軍総司令の権はない。]
1年経って、執政でも総司令でもない軍人に戻り。
…ああ、そうなれば軍人を退役してもいいかも知れんな。
退役して、いっそモルトガットの版図でも回って来ようか。
[微かに笑う風で、少し未来の夢を語って息を零す。]
…──── お前が、
お前さんが代理として、その場所を守っているなら俺は戻る。
必ず戻って、またお前を俺の片腕に置く。
だが、お前以外に俺の代理はいない。
だからお前以外を置くなら、俺は海軍総司令の座を降りる。
降りて、
…──────、
[ふ。と、笑う気配]
……お前が俺の傍にいられなくなるのなら、
[低く、囁くように声は落ちる]
──── 俺がお前の傍に行く。
ここに居ろ、タクマ。
俺の隣で俺と同じ景色を…俺には見えないものを、見ててくれ。
海軍総司令代理の件は、お前さんに任せる。
受けるも蹴るも好きにしろ。
だが繰り返すが、”代理”させるのはお前だけだ。
他の誰に俺の代理が務まるか。
馬鹿な憶測を封じるくらい、文句の出せない程にやってみろ。
お前なら──、お前にはそれが出来る。
… そうだろう? **
[ とてつもなく感情的な事を言った、という自覚はある。相手がゲオルグとはいえ、ここまで抑制が効かなかったのはついぞ覚えがない。
案の定、帰って来た声は、どこか困ったような複雑な響きを含んでいて、それが自分の投げた言葉の結果だと思うと、少しだけ心の内の波が凪いだ ]
……分かります。
[ 言い聞かせるように紡がれる事情と、振られた役割の意味は、勿論理解できる。>>=23
だが、それでも、と、言い募ろうかと、する声は、続いたゲオルグの言葉を聞けば、形を為さずに途切れた ]
[ そんな事に成る筈はない、と、男の理性は知っている。海軍総司令を降りようと、執政官の任期を終えようと、英雄ゲオルグ・ヒューベンタールを、ただ隠棲させるほど、この国の政治家も馬鹿ではない。
だが、否定の言葉がそれ以上出ないのは、ゲオルグの言葉の中に在るのが、そんな常識とは違う場所から伝えようとされる彼自身の意思だと、判ってしまうからだ ]
[ やがてお前以外に代理はいない、と、迷いなく断言する言葉に、男は知らず、拳を握り ]
[ 心の内に、届くのは、執政官でもなく、海軍総司令でもなく、軍人でもない、人としての、ゲオルグの声だ。
男自身の譲れぬ願いと、同じだけのものが、彼にもある、と伝える声 ]
(馬鹿は、俺か…)
[ 苦笑じみた、どこか泣きたいような想いがじわりと滲んで、届いた声と混ざり合い、男の内に染み込んでいく ]
[息を詰めるようにして、答えを待っていた。
壁に背を預けたまま密やかに息を吐く。
黙って少しの時そう過ごして、やがて聞こえた声>>=34に、ほっと、やはり密やかな息が零れた。口元が緩く弧を描く。]
最初から、無茶だろう。
[最初。と男がいうのは15年ほども前。
かつてオルヴァルの海で出会った、あの出会いの日から。]
それでも、お前がいるから──…
無茶も、出来る。
[くつりと。無茶を振ることを否定せず、片腕を呼ぶ男へ、秘密打ち明けるかのような声色で事実を、ひとつ置いて]
オルヴァルの瓶、だろう。
……──── 待ってる。
[先日>>6:=33落とされたと同じ音を違う響きで言い返して。
交わされた約束>>=10を楽しみにしていると、見えぬ相手に微笑を*向けた*]
[ほっと、息を吐く気配が密やかに届く>>=37]
ああ、そうでしたね。まったく…
[死を覚悟した男に、生きろと無茶振った、その最初から]
いいですよ、判りました。
無茶でもなんでも、いくらでもやってください。
[それを全て、男は許してしまうのだろう、これからも、きっと]
付き合いますよ、最後まで──…
[何よりも、その自由が、男自身の望みでもあるから]
顔なら、すぐ見られます。
[しみじみと落ちた呟きに笑う。>>=39こういう時のゲオルグが、男は好きだ。本当に、ただ年上の友として]
あんたのおかげで、腰を落ち着けてもいられなくなりましたからね。
はい、
待っててください。
すぐに、戻ります。
[…
トーリア?ですか??
いや、確かに大人ですが...え?
[ ここにきて、ようやく、意味が伝わったのは、話した相手が心繋がるゲオルグだったから、か ]
あと5年も経って、トーリアがまだひとりだったら、口説いてみてもいいかもしれませんね。
[ けれど、仄かに笑いながらそんな風に落とすのは、いつもとはほんの少しだけ違った声音だった** ]
[遠く、声が落ちる。
それは物語の終わり、魂の欠片響く時の最後に]
タクマ、
…─── ありがとう。
[心支え続けてくれた、最大の
[ 生きて生きて生き切ってから ]
[ そう言った声を、男は決して忘れない ]
[ そして、願い続ける ]
ここにいますよ...ゲオルグ。
感謝するのは、俺の方だ。
[ 最後まで、共に** ]
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