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[騒動が一段落したのちも、暫くは兄と顔を合わせる間もなかったか。どちらにせよ、その使いが第一王子の元に辿り着いたのは、もう夜に差し掛かる頃合いだったろう。
第二王子より、お会いしたいとの言伝を伝えればどうであったか。
時の指定があればそのように、ウェルシュは兄を訪ねることになる。]
兄上、……ご無事のお戻り、何よりでした。
[顔を見ての最初の言葉は、以前>>0:252と変わらぬようで以前よりも影を帯び、それはウェルシュ自身の精神的な疲労でもあったろう、面会当初からの沈んだ様子のままに、仄かな笑みを兄へと向けた。]
兄上にばかりお任せをして、申し訳ありません。
お忙しかったでしょうに、
[実際、ウェルシュは暗殺未遂の後に暫し奥へと離されてしまっていたから、王宮内が落ち着いたのは兄と官らの手によるものだろう。
だからと謝罪を置いて、顔を上げる。
兄へ向けるヘーゼルの双眸には、悲しみの色が深い。]
………… リヒャルトが、死にました。
[ぽつ。と、落ちるのは、兄も既に承知であろう幼馴染の死。
その時を追うように瞼を落とし、眉を寄せて。]
私を、助けるために。…私を庇って。
これからも、と。
また本の話をしましょうと、
……── 笑って、いた のに。
[また涙が込み上げそうになって、掌で口を押さえる。
そのまま、少し落ち着くまで息を吐いて。]
お願いがあるのです、兄上。
このままどちらが王位継承者と定まるのだとしても、
……父上の、葬儀を。共にすることは、出来ないでしょうか。
[ほつ。と、落としたのは、今とは一見無関係な願いで。
ゆるゆると顔を上げれば、兄と視線は交わるか。
緑の瞳、見ること叶えばそれへ僅かに微笑みかけるようにして。]
リヒャルトが、そう言ったんです。
兄上と共同の主催でやってはどうだろうか、と。
…多分。兄上と私とのことを、案じて。
[それは数日前の話。>>2:174
今となれば、彼の遺言となってしまった幼馴染の最後の願い。]
兄上、私たちは、
[この国は]
…───── 大丈夫、ですよね?
[いつか問いかけたように、願うように。
あの時の言葉>>1:=14を繰り返し、大好きな兄へと向けた*]
[クーデターの騒動が落ち着き、一時の静けさを取り戻した城内。
されど、軍部は今回の蜂起に諸外国からの攻撃を警戒し、軍人が忙しなく行き交っているのだろう。
当然此方も忙しさが増し、事務処理が緊急会議など開いたりして中々休む時間が取れなかったのだが。
流石に疲れの色が隠しきれなくなり、部下に休む様に促され一時的に休憩を取った。
そんな時に弟の方から会いたい、との言伝を貰った>>=0。
その旨を聞いた時驚きを見せ迷いが生まれ、疲れを理由に断ろうとしたが、承諾する方を選び、やがて弟はやって来た。]
[ご無事で、と言われたら此方の方こそ首を横に振る>>=1。]
いや、俺よりお前が無事だったのが何よりだ。
怪我は、無いのか?
[報告では弟は無傷、と聞いているが、つい直接問いかけてしまう。
翠の瞳は弟の様子を伺おうと、母親に似た顔立ちを見遣る。
笑顔を浮かべているものの、純粋さを孕んだ明るさに何処か翳りを帯びた様な、憂いを持つ様に見えてしまう。
その表情を見ると、キリキリと胸が締め付けられる様に痛い。]
こればかりは、仕方が無い事だ。
今は……、――――。
[仕方が無い、なんて言えやしない。言ってはいけないのだ。
全ての禍根を引き起こした自分に、「仕方が無い」なんていう資格など、無い。]
[少し落ち着いてきたのか、別の話題に話を流す弟だが、此方は振り向かず>>=4。]
父上の葬儀……。
いや、どちらが王位に就いたとしても、お前が仕切ってくれ。
[国家を揺るがしただけでなく、父が遺した
それどころか、父親に顔向けすら出来ない自分が行うより、何も悪くない弟が仕切ってくれた方が父の心が安らぐと思い、弟の提案を辞退しようとする。]
クーデターが起きた今、何時ゾネス要塞に攻め入られるのか分からない状態だ。
それに、総督が居ない状況は相手にとって絶好のチャンス。
だから、俺は父の葬儀は引き受けられないのだ……。
あいつが……リヒャルトが、白狼騎士団を守ってくれと言ってたそうだ。
だから、あいつの願いを叶える為に、俺は行く。
[ヘーゼルに悲壮が宿る。
弟の口から語られるのは幼馴染の死>>=2、思わず体がぴくりと揺れ、悲痛を隠した翠は細まり瞼を閉じた。]
……あぁ、報告から……聞いた。
[此方も視線を落とし、幼馴染の死を悼み悔やみ、心の中で己を責め続けた。
あの時止めれば、何故止めなかったのか、と悔やんでも悔やんでも幼馴染はもう戻らない。
見えない十字架がずしりと重く、苦しさを与えながら圧し掛かっていく。
幼馴染は弟を守り庇い死んだと告げる弟>>=3。
あまりに急すぎる幼馴染の死を悲しみ、嗚咽する様子を見る事が、出来ない。
慰める言葉も資格も無い自分は、そんな弟に背を向け、何も言わず窓から、星空を眺める己は、何を告げるのか。
――――それを弟に聞かせる事は無かった。]
[北の国にゾネス要塞の内部情報を漏らしたのに、守るとは。
そんな自分を責める心の声を無理矢理耳を塞ぎ、重苦しい罪悪感を決して表に出す事は無く。
死んで逝った幼馴染の願いを叶える、と心に決めた。
ラメールなど滅んでしまえと、消えてなくなれば良いと思っていたのに、如何して簡単に変わってしまうのか。]
……ウェルシュ。
[縋る様な願う様な声に此方は振り向かず>>=5。
頭を僅かに垂れさせ、視線を下へと落としながら口を開く。]
今までやってこれたのだ。
これからも、先、ずっと……。
[大丈夫だ、なんて言えなかった。
本来ならば、嘘でも大丈夫だ、と言って安心させるべきなのは知っているし、理性はそうする様に言うのだが。
ラメールが壊滅に向かう事を知っている己には、弟の前では、その言葉を投げかける事が出来なかった*]
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