情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
− 過去 −
[ 二人が出会って4年がたつある日。]
まだ起きているだろう?
入るぞ。
[ ギデオンは声をかけて、ベリアンの部屋へ乗り込む。]
[ それぞれに個室をあてがわれているが、世話係のベリアンとは続き部屋になっていて、消灯時間後も廊下に出ることなく行き来できた。]
ようやく、『諸王伝』の筆写が一段落した。
[ まだインクの香りも新しい羊皮紙を持ったまま、今日、書庫に籠もっていた成果を報告する。]
その中の一節に、こんな物語を見つけたぞ。
──昔、ある森に、神が手慰みに創造して捨てた化物が住み着いた。
近隣の村人たちは化け物を恐れ、土地をおさめる藩主…領主のことだな…に訴え出た。
民の陳情を聞いて藩主は森へ出かけ、化物と取っ組み合いをはじめる。
6夜を経て互いの力を認めるに至った両者は意気投合し、藩主は化物を居城へ連れ帰った。
風呂に入れてやると、なんと、化け物の皮が脱げて、中から勇壮な男が現れたのだ。
人の姿となった化け物は藩主のもと、知識と礼儀を身に付け、両者は力をあわせて国を発展させたという。
二人の友情はいまも語り伝えられている──
なんだか、我々に似ていると思わないか?
あの日、君が涙で魂の扉を開けなければ、自分はきっと人になれなかった。
─ 過去 ─
どうした。
[>>=0ギィが消灯を過ぎても構わず入ってくるのは慣れたものだが。
その理由は時に応じて様々だったが、今日は朝から籠り切りだった書庫での成果報告のようで]
確かに似ているっちゃ似ているか。
初めて会った時のお前は、得体が知れなかったからな。
手慰みって所だけなら俺の方が化け物の立場だが。
[軽く笑いながら、>>=1ギィの言葉に頷きを返す。
吐き捨てるような物言いすらしない所で、家へと感情を抱くことすら好まないと透けて見えるかもしれないが]
あぁ。
義母殿のお気持ちが、ようやっと整ったようでな。
思えばあの人も気の毒な人だ。
あの男の身勝手に振り回されて、子を望んでも与えられず。
夫と似ても似つかない、夫の血を受け継ぐ俺を世話せねばならんのだからな。
[一度会ったきり、形式上では母親とされる女の事を言う時だけは。
たしかな憐憫を忍ばせた、苦笑を零した*]
─ 過去 ─ =4
[ ベリアンが神殿へ送り込まれた理由は、とうに耳に入っていたが、当人の資質とはまったく関係ないところで憎愛劇に巻き込まれて邪険に追いやられた、というのが妥当だろう。
だが、それをベリアンは「神殿に保護された」とみなしているようであった。
今も、幼い彼をそんな目にあわせた義母のことを、憐みを持って語るのが、ベリアンという人間なのだ。]
君はどうして、そんな気の回し方ができるのだろう。
[ しみじみと呟いた。]
別に、家に帰ってやりたいことがあるわけでもないんだろう?
ここに残るという気持ちはないのか?
[ 要するに、一緒に居たいと訴えてみる。*]
─ 過去 ─
[己の境遇は傍から見れば厄介払いでしかないだろう。
その上で今更呼び戻すなんてのが身勝手だと思うのは、当然の感情だとを理解はしている。
>>=6目の前の友が納得いかないだろうとも、問わずとも伝わってはいるのだが]
ただの事実の羅列だから、気回しではないな。
おふくろも義母殿も、誰が悪い訳でもない。
男の身勝手に振り回された、それだけの話だ。
[どう考えても己の生母は弱い立場だった。
身分の高い男からの寵愛を拒むことも出来なければ、子を産まない事も、手元に残すことも選ばせてはもらえなかった。
義母だって、自分で子を産みたかったはずだ。
明確に産めぬ年になって、ようやく受け入れる他無くなっただけだろう]
家に帰ってやりたいことか。
以前は無かったが、気が変わった。
[>>=7ギィからの問いかけに、前を見たままに笑みを変える。
確かに神殿にきたばかりの頃は何も望みは無かった。
神殿で得られるものを得たら出奔でもしてやろう位の気でいたけれど]
お前がただのティノスであったなら、俺もメランで居ただろうけれど。
この神殿から一歩外に出れば、お前は王族、俺はただの異国の血を持つガキだ。
お前の側にいることは出来るかもしれないが、今のように近くは在れない。
[そう言って、目の前の友を瞳に映し]
だから、俺は地位を手に入れたい。
王族の側に在り、意見をしても不敬ではない高さまで。
それを俺が手に入れるには、あの家に入るのが一番手っ取り早い。
だからな、ギィ。
お前という翼が自由に羽搏く未来の為に、俺は一足先に此処から自由になろうと思う。
[この答えで、己の想いは友にも伝わろうか*]
─ 過去 ─ =8
[ ベリアンが語った未来戦略を聞いて、動悸がおさまらない。]
君は、 ああ… まったく、もう
[ 胸に抱え込んで、髪の毛をくしゃくしゃにしてやろうか。
それくらい、我慢ならず高揚していた。]
自分は、ずっと神殿に引きこもって暮らしていられればいいと思っていた。
[ 兵役があるから、そうもいかないのだろうし、外での自分の立場は、ここでのようなものではない。
けれど、ベリアンが、足元を固めて待っているのなら、大丈夫だと確信できた。]
君はふたたび、ぼくを新しい世界へ連れてゆくらしい。
[ 楽しみでならない。]
明日は、新しく建築する礼拝堂の礎石を配置する。
君も手伝え。
[ その礎石のどこかに、ティノスとメランの名を並べて刻もうと考えていた。
二人がここに生きた証と、そして、この地を去っても魂が離れることはないという宣誓だ。*]
― 過去 ―
なんだ。
ここから出たらそれまでのつもりだったか?
[>>=11何か云いたげな顔に、この先も共にあると思っていたのは自分だけかと過ったが。
続いた言葉に、ギィの目が外に向いていなかったことを知らされた。
それに浮かべたのは、柔らかな苦笑]
お前こそ此処には留まれまいよ。
お前の望む望まないに関わらず、周りが放っていてくれない。
女神の加護を受けし者、だからな。
[その信憑性など構いもすまい。
友の見目、能力ともに神殿で腐らせるのを許すほどこの国が無能とは思わない]
新しい世界に連れて行くのはお互いに、だな。
お前の翼を支える俺を、お前の翼が運んでくれる。
そうだろう?
[そう言って笑うと、続いた言葉に頷きを返して]
なんなりと。
[外に出ればきっとこうなろう、と。
恭しく頭を垂れて応じてみせた*]
──── ギィ。
[漏れ聞こえた声、それに続くものなど無かったけれど。
ただ一言、名のみを呼んだ。
己の居ない所で、落ちるなと告げるように**]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新