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― 回想・いつかの夜 ―
[村に来るたびにこうして同じ夜を過ごすようになってどれくらいが経っただろう。
険しい顔をして眠る神父――ジムゾンの髪を優しく指で梳いてあげながら、そんな事を思う。
自分の時間を買う割には、指一本触れようとせず。
ただ子犬のようにぬくもりを求めて寄り添い眠る彼が何を考えているのかなんて、そんなの僕には判らない。
判らない、だけど―――]
こら。
こんなイイ男が隣で寝てるのに、
他の男の名前を口にするなよなー。
[誰かへの謝罪の言葉を繰り返すその唇を、むんずとつまんでやる]
そのなんとかくんにさ、あんたがどんな悪いことしたのか知らないけどさ。
[指を離し、また優しくジムゾンの髪を梳きながら]
そのなんとか君はもうあんたに言葉をかけてやることはできないみたいだから、
僕が代わりに言ってやるよ。
……もういいよ。
もう、そんなに苦しむなよ、ジムゾン。
[この言葉が彼の耳に届くことがないとはわかってる。
分かっていてこんなことを口にする僕は、きっととんだお人好しで大馬鹿だ。
だけど、それでいいんだ。
だって、ほら。少しだけ――ほんの少しだけど、辛そうだったジムゾンの寝顔が、楽になったように見えるから]
………僕より年上のくせに、世話の掛かるやつだよ。ほんと。
[苦笑混じりにつぶやいて、僕はいつものいたずらを彼のうなじの辺りへと施した。
ちゅっとひとつ、鬱血の薔薇を施し、その出来栄えにくすくす笑う。
ジムゾン自身には見えない場所に落とすそれをオットーあたりが見た様子を想像するだけで、お腹がよじれそうだ。
だけどそんな事をしたらきっとジムゾンを起こしてしまうから。
可愛いいたずらは、今は窓からのぞき込む月とだけ共有して、長い長い夜を共に過ごすのだった**]
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