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わたくしにも予想のつかぬ奇跡を起こす。
これはお前の力か?
我が
それとも神の齎された恩寵か?
これこそは奇跡、これこそは絆。
お前とわたくしの魂は、今、繋がれたのだよ。
永遠に、切れることなく。
マレンマ、愛しい子。清らけき光の子よ。
わたくしはそなたを誇らしく思う。
そして、わたくしナタリエル・ネッセテリウル・テレイアは、
この絆をを心より喜ばしく思う───…
[大いなる主の御心にも似てあらゆるものと繋がる天上の響きとは別に、心の最も深いところを揺さぶる声は、夢でも幻でもなく、再び胸の中心に満ちた。]
あなたの、 ───あなたの御声がきこえます。
私の中心から、魂の奥から、あなたの御声が。
これは…私の力なのでしょうか…?
いえ。きっとこれは主の望まれたことに違いありません。
物心ついたときより、───おそらくはそれよりも前から、
私の心の奥には、あなたの御声が微かに届いておりました。
私は、あなたと魂結ばれるべく定められていたに違いありません。
ずっと、ずっとお慕い申し上げておりました。
ナタリエル・ネッセテリウル・テレイアさま───
[初めて知る名の響きに陶然とする。
魂が、正しい場所へ嵌められた快さに酔う。]
わたしは、未来永劫、あなたのものです。
[そっと為した誓いが、繋がりをまたひとつ強くする。]
もし、お許しいただけるのなら、
───師父、 とお呼びしても、…構いませんか?
[ありったけの尊敬と親愛を込めた呼び名を口にして、
おそるおそる許しを請うた。]
…───、ふ。
不思議なものだな。
誰よりも、主の声よりも近くお前の声を聞くことになるとは。
ああ。魂の奥に、お前の声が響く。
……おかしなものだ……。
[その音とは裏腹に、微笑む気配。
絆は喜びに満ちる心を、そのまま素直に彼へと伝え。]
そうか?
……そうか。
そうかも知れぬな。
12年前、そなたを地上に降ろす役目を、
わたくしに与えて下さったのは主だ。
[遠き日の一端を明かし]
だが実際にそなたをこの上に抱いた時、
わたくしの心は役割以上の……愛が心を満たすのを感じた。
きっと、その時から既に絆は結ばれていたのだろう。
全能なる神の御心のしろしめすままに。
ふふ…っ、師父か。
ふふ。良い、許す。
わたくしをそのように呼ぶ者など、
──── お前しか居らぬよ。
我が愛しき子よ。
[特別な呼称を親しく許して、楽し気に笑った。**]
師父、
[許された呼び名を口にすれば、尽きせぬ喜びが湧き上がる。]
あなたに結ばれた運命に、
主の御心に、感謝いたします。
[敬虔なる神の徒として神が用意した絆へ感謝を捧げるのは勿論のこと、]
そして、あなたの愛に、
私を呼び求めてくださったあなたの御意思に、感謝いたします。
私の、ただ一人の、
[傍らで、手の届く場所で、特別な愛を注いでくれることに、
心が安らぎ、満たされていくのだ。*]
( 愛し子よ )
[銀の首飾りが、淡く光を放つ。
眩い光ではない。ごく小さく、瞬くように。
かつて幼子が眠れぬ夜に空見上げた時、
天に瞬き彼を見守り続けた星の光のようにささやかに。]
( お前の上に )
…──── 祝福を。
[鈴鳴らすかのよな、涼やかなる微かな音。
天使の祈りは透明な羽根となり、ひらりと光に舞って消えた。]
[そのうえで響く、涼やかなる音色に、
己だけの父を、母を、
やさしい手を求め続けた子は
惜しみない愛を注がれて、満ちるのだ。]
[天の声響かせる、その傍ら。
大天使の落とした涙は光となり、
倒れ伏し、自らも繭の中に囚われんとする子に添うように瞬いた。
誰の目にも映ることない小さな光は、
やがて幻のように大天使の化身たる姿に変じるのだ。
12年前の夜、幼子を腕に抱いた人の姿に。]
……──── いとし子よ、
[そうして紡がれる繭をも構うことなく、
彼を抱きしめるように寄り添う姿の唇から漏れ出るのは子守歌。
優しい響きは、純粋なる慈愛に満ちて穏やかに。]
良く…、お眠りなさい。愛しき子。
お前が眠りに落ちるまで、私はここに留まろう。
ゆるりとお休み、かわいい子よ。
お前の眠りは安らぎに満ちるだろう。
[囁きかけて、髪を撫でる。
幾度も優しく撫でる手は、幼子を寝かしつけるが如く。]
待っているよ、お前の目覚めを。
だから今はおやすみ、愛しき子。
…──── 愛しているよ。
[告げて、幻が如き化身はマレンマの額へと口付けた。
傍らに添う気配の消えることはなく。
幼子を優しく撫でる手の、休むこともないまま。*]
[安らぎのなかで眠りに落ちかけ、
惜しいというように意識だけがまたふわりと浮かぶ。
優しさに包まれて、無邪気に笑った。]
[ 夢、 夢を、 見たことがある。
昔のことだ。
夢だったはずだ。
温かく柔らかな場所から引き離されて
暗く重いところへ置いていかれた。
ここは、自分の居場所じゃない。
かえりたい。
小さな体は、訴えるすべを知らなかった。]
[暗くて不安で押しつぶされそうで、
けれども泣かなかったのは、手があったからだ。
やさしい手。
あたたかなひかり。
少しぬれた、くちびる。
そのひとが触れたところから糸が伸びて、
どんどんと伸びて、どこまでも繋がって、
自分は、ひとりじゃないと知った。]
[糸が繋がっている限り、
必ず会いに行く。来てくれる。
どれほど離れていても。
たとえ世界が、時間が違っても。
糸は途切れず繋がっている。
だからいつだって、ひとりじゃない。]
[その糸は、今だって繋がっているから。
祝福を受けた魂から、真っ直ぐあなたに伸びているから。]
目を覚ましたら、また、
迎えに来てください。
待っています。
[こうして今も、撫でてくれる手があるのだから、
どこに落ちても、怖くはない。*]
ああ、
[いとし子の声が小さくなってきている。
意識が淡くなり、消えかけている。
けれど、この繋がりだけは。
絆だけは、全て意識が消える去る時まで共にいよう。]
すぐだ───、すぐに迎えに来る。
だから、
あまり…、 寝坊するなよ ?
[案ずる心は笑みの気配に柔らかに紛れ。
優しい響きばかりが、眠りに落ちんとする子の上に落ちた。]
[魂の、いちばんまんなかが眠るのは、いちばんさいごのこと。
やくそくの言葉に安心して、
笑みの気配に同じだけの笑みを返し、
やさしい響きを抱きしめるようにして、眠りについた]*
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