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報告。
こちらはハールトの制圧をあらかた終えて、後処理に入っている。
我が軍の死者・怪我人は少ないが、敵がハールトに火を放ったため、復興するならば時間は掛かりそうだ。
……カレル、そっちは大丈夫か?
今、おまえの読みが正しいって、味わってるところだ…!
騎馬弓隊の襲撃を受けたけど、ローランドが魔法で対処してる。
心配いらない。
また連絡する。
ベネディクト、待たせた。
奇襲の騎馬部隊は駆け抜けていった。
今のところ、これ以上の攻撃はないと思う。
奇襲隊を率いていたのは、人間を盾にするような卑劣な手をためらわない男で──
そいつ、 兄さんの剣を持ってた。
そちらの戦闘に間に合わなくてごめん。
援軍なしでハールト奪還を果たすなんて、さすがだ。
奇襲の犠牲になった人たちを埋葬したら、すぐにそちらに向かう。
ハールトで会おう。
そうだ、 消火活動が終わった後の焼け残りでもいいから、建材を集めておいてくれないか。
ハールトの前に、廃材でドラゴンの像を作りたい。
可能なら、今から作りはじめてくれるか。
敵本隊が到着するまで悟られないよう、板壁などでカモフラージュしてね。余力があるなら魔法の目くらましも有用だな。
ゴブリンみたいな魔物は、ドラゴンと戦おうなんて思わない。
姿を見ただけで慌てふためいて、なかなかいうことを聞かなくなる。
俺たち、人数では魔軍に勝てないから、指揮を乱すことを考えていきたいなって思ってる。
おまえの策も聞かせてほしい。
そうか、とにかく君が無事でよかったよ。
[声には出さないが、心の底から安堵する。]
今回の作戦成功にはレト殿の働きが大きかったと思う。
合流したら労いの言葉でも掛けてやるといいさ。
それじゃあ、またハールトでな。
っと、ドラゴンの像だな。
分かった、こちらで準備をしておく。
[建材であれば十分な量が至る所にあるだろう。]
……今後の策、か。
そもそも、自分より大きい軍に当たる際の基本は各個撃破だ。
例えば、我らの五倍の敵と一度に戦えば負けるのは自明の理。
しかし、我らの半分の敵と十度に分けて戦うのなら勝ち目はある。
[もっとも、これはあくまで消耗や士気を度外視した理論。]
勿論、今の我々にそんな余裕はないだろうが……。
少しでも勝機を見出すためには、何らかの方法で敵を分断しておきたいと考えている。
[具体的な方法は、考えている最中だけれど。]
それと、君の言う通り指揮を乱すというのは良い作戦だと思う。
末端の兵が動揺している間に、相手の指揮官や隊長を打ち取れると、なお良いな。
それと、可能なら地の利も活かしたいところだ。
僕はこの辺りの地理に詳しくないが、活かせるものは活かしたい。
今のところは、こんな感じかな。
レトも無事か、嬉しい。
うん、直接会って声をかけられるのを楽しみにしているよ。
[顔は見えないけれど、ベネディクトの安堵の気持ちが伝わる。
その共鳴は、民を目の前で失った心の痛手をいくらかでも癒してくれた。]
[今後の策を問えば、ベネディクトからは的確な仕分けを連想させる方針が返ってきた。
それをカレルなりに噛み砕いて考える。]
「各個撃破」に「敵の分断」か。
うん、それができたらいい。
んんと、
おまえが船団を率いて、カトワールに向かってしまうのはどうだろう?
ハールトの外で魔軍と対峙することになるなら、今、ハールトにある船団は暇になるよね。
移動する船団を見て我々の次の攻撃目標がカトワールだと思えば、魔軍はそちらにも兵をわけるんじゃないか?
実際、先にカトワールへ回り込んで、おまえ得意の交渉手管で、カトワールの船も手に入れてしまえたらすごい。
ああ、ハールトには模造ドラゴンを残し、敵の裏をかいてレトの兵も船に乗って、実際にカトワール攻略に向かうのもありかな。
カトワールの魔物がどれだけいるかわからないけど、それなら寡兵をつくことができるかもしれない。
なるほど、陽動作戦か。
それじゃあ、君とレトは本隊を率いて西進。
敵を撃破しつつカトワール方面へ向かう。
僕は陽動部隊の船団を率いて先にカトワールを攻撃する…
…というのはどうだろう。
とはいえ、カトワールは相手方にしても重要拠点。
おそらく結構な数の兵士がいるだろうから、陽動部隊だけで落とすのは難しいだろうな。
他に問題があるとすれば、敵の本隊――魔王本人が出張ってきた際に、逆に此方が各個撃破される危険性があること。
船団がカトワールを攻める時には、洋上ではなく江上からの攻撃になる分、こちらの被害が増大するであろうこと。
……これくらいか。
[それを加味すれば、船団の方は攻撃しながらも防御を意識して、陽動に徹するべきかもしれない、などと頭のなかに。]
ああ、それと現在製作中のドラゴン像だが、台車の上に作ればハールトから持ち出せるかもしれないぞ。
動いているように見えるから、リアリティも増すかもな?
……正直、今後の施策については僕もまだ詰め切れていない部分がある。
まあ、僕は出来るのはあくまで助言。
結局は、君の最終的な判断に従うまでだ。
[君の判断の中で、最大の結果を残すのが僕の役目だから。]
レトは残して行くんだね。了解。
ちょっと船足が遅くなるかもだけど、カトワール攻撃が本命で兵員をたくさん乗せてると見せかけるために、船にはバラストを積んで喫水を深くしていく?
ハールトで投石機を鹵獲するか船上で組みたてできれば、バラストにした岩を弾として使えるかも。
レトの部隊と合流しても、魔軍と正面から当たるにはやはり兵数が少ないから、こちらの西進は、魔軍が兵をわけるなりしてからになりそうだ。
模造ドラゴンは有効活用させてもらうね。
うわ、可動式にしてくれたの! すごくいい!
確かにこちらが兵をわけることで各個撃破はあるかも──
カトワールを落とすのが無理と思ったら、逃げて。
おまえの才は計算に裏打ちされた冷静さにあるから、俺に引き際の講釈なんかされたくないと思ってるかもだけど。 はは。
すぐにカトワールへ出発してもらうことになると、入れ違いになって会えないかも。
休む間もなく転戦で申し訳ないけど──
いける?
[武の人ではない相棒を思いやりながらも、期待し励ます声を送った。]
レト殿の武勇は、野戦でこそ最大限の力を発揮できるだろうからな。
[それに、腕の立つ者は出来るだけカレルの側にいて欲しい。]
あくまで陽動だから兵数は少なめで行く。
ただ、大船団に見せるために軍船は全て使用するつもりだ。
君の言うとおり、それぞれ岩を積んでね。
[投石機はハールトにあっただろうか。]
もちろん、無理はしないつもりさ。
[一呼吸置いて]
……僕は軍人じゃない。戦場に立つのはさっきが初めてだった。
あの時、指揮を取っていて何度も不思議な高揚感を覚えたんだ。
もしまた、同じような高揚感に包まれた時、冷静さを保っていられるだろうかと不安だったんだけれど――君の言葉を聞いて、なんとかなりそうな気がしてきたよ。
ありがとう、もう僕は大丈夫だ。
準備を整えたら、船団を率いてカトワールに出立する。
君の方こそ体には気をつけて、充分な休息を取るようにな。
ありがとう、 丈夫なのが取り柄さ。
お互い、頑張ろう。
[見えていればブンブンと手を振って見送るようなオーラで、ひとまず通信を終えた。]
カレル、報告だ。
現在、グランツェルツ橋の所で敵の奇襲を受けている。
今は指揮が混乱はしているものの、次第に落ち着くだろう。
作戦自体にはそれほど影響もなさそうだ。
ただ――
[一瞬、言い淀んだけれど。]
――敵の奇襲部隊の指揮官は、エディだった。
直接この目で見た、間違いはない。
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