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― 回想/遠い日 ―
ごめんなさい、あにうえ。
[熱を出して寝込んでしまった幼い日。見舞いに来てくれた兄に、少年はベッドの中で小さい顔を俯かせていた。
少年の枕元には本が置いてある。少年の年にしては大人びた本。いつもの風景である。]
わたしも、あにうえみたいに出来ればいいのに。
[兄のようにもっと強く、剣を握れたなら。もっと颯爽と馬を乗りこなして、ゆくゆくは兄の片腕となれれば…そうすればきっと、兄も周囲の大人たちもきっと喜んでくれるのだろうに。]
…〜〜〜、あにうえは、いいなあ…… っ
[一人、ベッドに潜り込んで泣いた日もあった。自分が不甲斐なく、情けなかった。出来ることをやればいい、と。書に別の道を見出すのは、まだそれから暫くのちのこと。*]
― 回想/崩御一か月前 ―
兄上は自室においでか?…そうか、
[兄の私室を訪ねるより前、ウェルシュは兄の言葉>>0:269の通りにお付きの者らに確認をしている。侍女から、お茶とお菓子を用意してお待ちですと聞けば、自然と青年の顔は綻んだ。]
分かった。ありがとう。
[短い礼を返せば、微笑まし気な笑顔と共に深々としたお辞儀が返って来る。軍がどうあれ文官らの思惑がどうであれ、王宮内の細々をつかさどる者らのうちでは、兄弟の仲の良さは周知であった。もとより、古い話を知る者らもあるところだ。]
─── 失礼します。
[先触れののちに扉を入れば、部屋の主はもう寛いでいたのだったか。任務中とは違う、柔らかな空気。兄の纏う厳しい空気も、自分の前では半減するようだ───とは、周囲の話。
実際、ウェルシュは兄を慕いこそすれ兄の前で委縮したことはない。それは厳しさの裡に秘めた優しさを知るからだと、青年は思っていた。
人は、あまりに表面に囚われすぎるのだ。
それが時に必要なことなのだとしても。]
お疲れのところすみません。
兄上は…お忙しくしていらっしゃるから、
[だから、日を改めることなく今日にしたのだ。
皆まで言わずとも伝わるであろうこと、口にしながら傍らの椅子に腰かける。侍女がカップに茶を注いで、静かに礼をして下がっていった。]
此度はいかがでしたか?
隣国も、我が国を欲すると聞きますが──…
[最初に水を向けたのは、諸外国を見回ってきた兄の話。とはいえ堅苦しいものではない。兄との気軽な、だからこそ互いに本心にも近い、そんな語らい。]
戦乱の兆候なし…、か。>>0:47
やっぱり違うなあ。
それは兄上がこうして諸外国を回られるからこそということも大きいのでしょうね。兄上ほどのお方が軍を束ね、ラメールの威を示される。
諸外国は、ラメール侵略の容易ならざることを知るでしょう。軍事力では難しい。…となると、政治に圧を掛けて来るわけですけど。
[肩竦める調子で言って、菓子を摘まむ。柑橘をチョコレートでくるんだそれを、暫し、口に入れずに眼前に揺らした。政治、となれば。それはウェルシュの領分でもある。]
……兄上。
兄上は、父上の発表のこと、どう思われますか?
[少し間をあけた問い。視線を菓子から外して、兄へと向けた。
ヘーゼルの瞳に、淡い光が揺蕩っている。]
私はどちらが示されても、それに従うつもりでいます。
兄上でも、私でも。それが父上のお気持ちならば。…ただ、
…ただ。どちらでも喜ぶ者と不安を抱く者がある。
今日、街に降りて実感しました。
それは民の中にすらあり、そして───…
民は不安を感じている。
[恐らく、賢君と称されるほどの父の治世があまりにも偉大であったからだろう。どちらにせよ国は揺れる。…だからこそ、後継者の定めは父王の健在なうちに為されなければならぬ。]
だから私は、これからどうなるにせよ、民を守らねばならぬと…それだけを強く思うのです。
[信じてると、言ってくれた人の為にも]
兄上が王になられるにせよ、私が選ばれるにせよ。
それだけは守らねばならぬ、そう思っているのです。
そうすれば…、…きっと大丈夫。
心が、離れることはないはずだから。
[だからきっと、上手くいく。
兄弟の心が遠くなることはないはずなのだから。
一度口を閉ざして、お茶を飲み、置いていた菓子を摘まんだ。
爽やかななのに、どこかほろ苦い味が口に広がる。複雑で単純ならざる味は、何だか今の気持ちにぴったりだ。]
― 幼きあの日 ―
だいじょうぶだ、お前はわるくない。
[熱を出して寝込む弟。
布団を被りながら落ち込む弟に、少年は頭を撫で一つの本を置いた。
弟が熱を出し寝込む度に本を置いているのだ。
最初は絵本、次第に段々難しい本を置いていた。
元々本を読むのが好きな弟が喜ぶ様にと思っての事。
自分の様に出来れば良いのに、と自分の無力さを嘆く弟には幼いなりではあるが励ましの言葉を告げる。]
できるようになる。
ウェルシュはぼくの弟だ、父上も母上のこどもだからできるようになるっていってたんだ。
じかんをかけて、いっぱいべんきょうすれば、ぼくもウェルシュもりっぱな大人になれるって、いってた。
[両親はよく言っていた。
「二人とも賢い子供だから、沢山の事を学び経験を得れば立派な人間になる」と。
身体の弱い弟を励ます為に言っているのだが、己もその言葉を信じ、武に励み文を学び、立派な大人になれる様に精進する。
父を助け、母も弟も民も守れる立派な大人になると心に決めて目標の為に努力を惜しまなかった。]
― 一月前、自室にて弟と語り合う ―
[コンコン、と扉を叩くと同時に侍女と弟が部屋の中に入っていく。
弟の姿を見えれば、自ずと厳つい表情が綻び微笑を浮かべ訪れた来客を温かく迎える。
ソファに誘導し二人が腰を下せば、侍女が茶と菓子を用意し下がっていく様子に一言礼を告げてから。]
いや、忙しいからこそゆっくりとした時間が必要だ。
[謝る弟にゆるりと首を振り気にするな、と伝えてから身体をソファに預け足を組む。
隣国の事を尋ねる弟の話に耳を傾けながら静かに紅茶を啜る。
愚痴交じりで語り合うのは生真面目なそれでは無く、身内の語り合い。
戦乱の兆し無し、と告げれば褒めて貰えて>>=5、此方は静かに首を振る。]
それは父上が確りと地盤を固めてくれたから、俺が軍を束ねても大丈夫だったりするんだ。
[真に父が王として鎮座し、権力のバランスを保っているから、己が軍を束ねても上手く運用出来る、というもの。
それは心から思ってる事であるので、謙遜とかでは無く事実だと告げる。]
軍事力で難しいならば、内から崩すか。
ならば、内政を整えなければならんな。
内から外に通じてる、なんて事があった日にはシャレにならない。
そうならない為にも、お前には期待してるぞ。
[再びカップに口を付け、紅い茶を含み渋みがある味と爽やかな香りを堪能してから、カップを置き弟を見遣る。
話が一度途切れ、新たな会話が生まれたと思いきや>>=6。]
[問われる事は父の後継者発表の事。
此方にとっても弟にとっても人生を決めると言っても過言ではないくらい重大な発表だ。
その発表に関して問われれば、少しだけ間を置いてから。]
父上は何方を王太子にするにしても、人の上に立つ大事さ恐ろしさを早めに学ばせようとしてると思ってる。
まだ父上がご健在である内ならば、王太子が失敗してもフォローは出来る。
そこからの経験から学べて次に活かせる、というもの。
――――王になれば、失敗は許されない、からな。
[王になると上の者からのフォローは無い、という言外の意味を込めつつ本音を交える。]
だからまだまだ時間が欲しいのだ。
俺が王になるにてもお前が王になるにても。
父上や他の者から沢山の事を学んだ事を生かし、国の為に尽くす。
――――それが、民を守る為に繋がると思ってる。
[民を守らなければ、と言う弟に合わせる様に民を守る意思を示し、共に進むべき道は同じだと伝えようとする>>=9。]
[何かに縋る様に此方を見てる弟は何を想うのだろうか>>=10。
口を真一文字に結び、静かに肩を一度、叩く。
幼い頃はよく頭を撫でていたが、もう成人となった弟に頭を撫でようとはしない。]
――――あぁ、大丈夫だ。
[そう、短い肯定の言葉を弟に、送った**]
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