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― 回想:王府 シメオンと ―
―――……仰せの儘に、巫女姫。
[>>=0 命令を紡がれれば慇懃な様子で影は頷く。
しかし応えるその声は、確かな恍惚で自ずと震える。
蜉蝣はそのまま何処かへと羽ばたき、そして窓へと止まる。]
貴方は美しく親書を手渡す顔。
穏やかなままで、慈しみをもって、接すれば良いのです。
[そして光を浴びて煌めけば良い。
蛮族がその太陽を隠すことなんて、あってはならない。]
― 親征中 ―
アレクシス、
そちらはお変わりありませんか?
[首都ブラバンドの護りを託した腹心を気遣ったのは、
程なくしてデ・モール火山へ真っ直ぐ続く平原に
足を踏み入れようという時分だった]
此方の天気は上々ですよ。
窺い知ることは出来ませんけれど。
アレイゼル領にて、ソマリ殿に出迎えていただきました。
共に往く軍属の皆様方も、熱心に職務に励んでおいでです。
ですから――…、ご安心くださいね。
[心配性の影の軍師へ、そっと送る柔らかなる響き]
お声掛け、誠に光栄の至りでございます。
私は、ご心配には及びません。相変わらずですよ。
[>>=3 筆をとって暫くしてからだろうか。アレクシスの耳元に凛とした声が響く。それを聴くやいなや、唇の端を僅かに歪めて、筆を止めた。
嗚呼、そうではないか。
伝令なんて使わせなくとも。
一番大切な方の声は、直接、私の心のなかに。
学者肌ゆえ、こんなお伽噺めいた事はなかなか他人には言い出せなかったが。
アレクシス自身はこの力を誇りに思い、大切にしてきた。
一時は、自分が巫女姫を思い遣るがあまりに、終ぞ狂ったかと思ったが。力が真実と悟った時は、得も言わぬ恍惚に浸ったものだ。]
そうですか。
遠路の移動、お疲れではございませんか?
ソマリ・フル・アレイゼルは何か申しておりましたか?
無礼なんて―――……無かったでしょうね。
[震える想いで、そう尋ね。続く言葉には、]
貴女は気高く、お優しき方。
ですので、下等な民にも等しき慈愛を与えて下さるのですね。
しかし、嗚呼、巫女姫。
どうして私に許可なく―――…… お行きになられたのですか。
[>>=4 痛ましそうな声に反論するように、切迫した思いを伝えた。
このように緑の世界で咎めても、姫が直ぐに戻ってくるわけでもないのに。
然し、自分の許可なく、逃げるように去った彼女をどうしても責めるような口調になってしまうのだ。]
いつも神殿に篭っておりますから。
珠に遠出も良いものですよ。
[馬車に揺られ続ける日々は、神殿や王府での暮らしに比べてしまえば決して快適なものとは言えないが、
この移動も必要なことと思えば、別に苦には感じない]
大丈夫です。無礼など、――――させません。
[凛とした意志。安心させようと、其れを見せる]
下等などと言ってはいけませんよ、アレクシス。
彼らは等しく大事な国民の方々なのですから。
どんな国も、民草無しに繁栄は出来ません。
[咎めるように唇を尖らせて、から]
、………それは、
[少しの沈黙が落ちた後、あとを続ける]
おそらく、シュビトの反政府活動は
これまでの規模を超えるでしょう。
明確な欲求は、指導者が導いてこそ強く輝くもの。
今、シュビトには其れが揃っています。
ですから、こちらとしても早く手を打つ必要がありました。
此度の親征、揺れ動く諸侯への牽制の効果はあるでしょう。
…というより、それなりにあってくれないと、困ります。
巫女姫としての自信を失ってしまいますから。
いやだ、冗談ですよ。
[しれっと繋いで、冴えた声を綴る]
ただ、動乱の可能性の高い地に赴く以上―――、
それなりの危険は予測せねばなりません。
…最悪は、
……、………、言わなくともお分かりでしょう?
[遠くの地に居る相手の顔色を伺うような口調で、言葉を添える。
相手を怒らせる台詞だ。分かっている。
だからこそ、言わずに出立したのだから…]
万が一、“巫女姫”が、道を誤った学徒に弑されたとします。
[シルキーは、あくまで客観的に見解を述べる。
それは何処か、学館の教室で指されて、
問いに答える生徒の仕草にも似ていた]
それは此方にとっても手痛い損失ですが、
代わりに彼らは義を失う。
平和の象徴たる巫女姫を、一時の激情で
除けてしまうなどという野蛮な行為の果てであれば――…
幾ら甘い夢を語ったところで、平和を愛する国民の皆様が
反乱勢に素直についてゆくとは思えません。
最悪の想定です。
起きるとは、殆ど思っておりません。
けれど、―――起きたところで利はあります。
ですから、どちらに転んでも巫女姫親征には益がある。
私は、間違っておりますか? …、アレクシス。
ふふ。大丈夫。
易々と斃れる気はありません。
私も、此の身が大事ですからね。
ただ―――…、使えるものは使いましょう。
私の身を案じていただけるのは嬉しいですけれど ね。
[咎める声をいなすように、
鈴の音のような柔らかな囁きが語尾を飾った]
――――、アレクシス。
おそらく、ですが、……マチュザレム共和国の方々が、
シュビトでの集会に一枚噛んでおりました。
学徒側と何処まで結託したか、仔細は分かりません。
けれどこのまま捨て置くのは危険でしょう。
彼等は、シュビトを離れ――…
デ・モール火山を越えてオプティモ近郊のクレメンス領に
戻る可能性が高いです。
ですから貴方に、その道中を抑えて頂きたいのです。
彼等との接触をお図りください。
開国への同意は出来ないお話ですし、
こちらに組させる必要はありません。
けれど、正統ではない反政府組織に力を貸すなど
国家を代表する人間が、最初になさる態度でしょうかと
真っ当な理由を片手に、彼等を責めることは可能でしょう。
ブラバンドから此方までは、どうぞ海路をお使いください。
行程に掛かる時間もだいぶ削れましょう。
私は、シュビトの動乱を抑える為、尽力いたします。
ですから、外の国の方々への対応は、
…――貴方を頼りにしていますよ。アレクシス。
-少し前:シュビド南下中>>=7-
…………ッ、いえ。
ただの庶民である私が、こうして巫女姫の声を聴く事が出来る。
それだけで………
[少し高鳴る胸を静めつつ、深呼吸をしながら、]
本当に、
――――……本当に幸せなのですよ。
[確かな想いを、敬愛せし人に伝える。
良くも悪くも杓子定規で、どこか冷徹で、そして計算高い軍師アレクシス。
目的の為なら、どんな汚い事にも手を染めてきた。
けれども、この緑の世界では、少しだけ昔出会った時のような。
教師であり、庶民であり、あのシュビドの青空の煌めきを携えたような。
そんな一青年、アレクシス・ユレに戻ってしまうことも。
――――……時には、許して欲しい。]
[そして巫女姫、否、シルキー・の回答は百点満点だった。
ただのお飾りの人形姫では無い事は、その聡明な答えからもよく解る。
>>=11>>=12>>=13 しかし、その答えは、]
………間違っては、いません。
間違ってはおりません。……完璧な答えです。
―――――……然し、
[唇を舐め、答えをおずおずと告げる。
嗚呼、本当は私は貴女に人形姫であって欲しいのだ。
聡明な貴女も勿論素晴らしい。さすが姫王の器を持つ御方。
然しその聡明さゆえに―――――……]
私は―――……
私は―――……
貴女に行って欲しくは……無かった。
[なんて、なんて、儚く見えるのだろう。*]
巫女姫――――……
至極、聡明でいらっしゃる。
その判断も間違いでは無いでしょう。
[>>=18 潮風を受けながら、アレクシスは声に問う。
もし反応があれば、おおよそブラバンドで自分が為したこと。
そしてそれらを終え、指示通りオプティモに向かっている事を告げただろう。]
然し、巫女姫――――……
[躊躇うように視線は彷徨う。
然し、届けられるのは声だけ。
視界は相変わらずの青で。
愛しい金糸は当然見とめられるはずもなく。]
貴女は、ブラバンドへお戻りなさい。
シュビドの動乱?
貴女一人で抑えられる訳ないでしょう。
貴女がどのような御立場なのか
―――――……もう少し、自覚をお持ちなさい。
[冷たく、然しどこか狂信的なまでの言葉で、物申した。]
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