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― あれから ―
[わたしがゾネス要塞の総督代理となった後、存命が叶えば要塞を乗っ取り、内側から開けて北からの軍を通す予定だった。
国境近くまで進んだ軍は、わたしからの合図を待っていた。
しかし、そこへ齎されたのは、わたしの任務失敗の報(=訃報)だった]
[指揮官は考える。
元々貧しい国の軍隊は、兵糧にあまり余裕がない。
王都から国境まで進軍するにあたっても、決してタダではないコストが掛かっている。
このまま何もせずに戻ったら、何ら成果が挙げられなかったと、死んだ間者の分も含めて責任を問われることになるだろう。
待ち受けているのは降格か、左遷か。
世間の笑いものにもなるだろう]
[指揮官は決断する。
引き返さずに、ゾネスを強行突破すると。
幸いにも兵士たちの士気も高まっていた。
無血開城はかなわずとも、こちらには相手国の王子により伝えられた、要塞の内部図面がある。
図面をもとに、要塞攻めのシミュレートを何度も行ってきた。
かつてないほどの好条件に、勝利の可能性がチラつく。
難攻不落の要塞を陥落せしめんとす。名声と戦功を挙げる絶好の機会だと、その場にいる誰もが功に逸った]
[侵略はあくまで人道的に、と謳われていたのもはじめの内。
事前に入念な準備を整えてきたものの、それでも激しい抵抗にあった。
戦いが過酷になり、味方の兵士が次々と斃され、厳しい状況へ追いやられると、もはや相手を気遣う余裕は奪われてしまった。
憎しみと怒りに駆られ、虐殺と強奪を重ねる。血しぶきをまき散らし、女騎士たちの屍を築き上げる。
そして、激しい戦いの末に、どうにか要塞を掌握したものの、軍にはこれ以上先へ進む力は残されていなかった。
元々はゾネスでの戦闘は、想定外だった。
兵力を著しく減らした軍は、要塞で援軍の到着を待つ事になる。
しかし、要塞へ向かう軍は、北からだけではなかった。
要塞の南側(ラメールの王都)からも、軍が押し寄せてくる。
そこに翻る旗は、ラメールのものではなく、さらに南国にあるアリューシュのもの。
やがて、ゾネス要塞が再び戦火に包まれる。
ラメールを挟んだ北と南の、初めての衝突だった。*]
― Etoile ―
国境から王都へ繋がる街道以外は、未開拓の大地が広がった。
夏は短く、一年中をほとんど氷で覆われた大地は作物が育たない。
ここは元々、人が住まう土地ではなかった。
過去の戦で逃れた人々が移り住んだか、あるいは罪人の流刑地とされていたか。
隣接する諸国に国境を築かれ、切り離されるようにして生まれた国だとも言われている。
厳しい寒さに凍える人々は、温暖で肥沃な国土を持つ
手つかずの森林や鉱山は、未曾有の財が眠っているとされているが、それを得るための投資が追い付かず、その恩恵はまだ得られていない。
それらに手を伸ばそうと、近隣諸国の動きも活発になってきているが、一度見捨てられた立場である以上、彼らを再び受け入れるのは、矜持がそれを許さなかった。
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