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話はついた。
迎えに来てくれ。
[踵を返しながらコエを飛ばす。]
勝利までは譲ってもらえなかったが、まあいいだろう。
欲しいものはだいたい揃った。
帰るぞ。
遅い!
[ 晴れやかにも聞こえるコエに、怒ったようなコエを返す。 ]
今、行く。待っていろ。
[怒られた。
が、コエに含まれるものを聞きとって、笑みが零れる。]
お前は約束を違えぬ男だな。
待っている。
合図の音が鳴れば道は開くはずだ。
その時はできるだけ穏便に来てくれ。
[道が開かなければ、というのは言わずもがなだ。]
[ 妙に嬉しそうに聞こえるコエに、舌打ちしたい気分が半分、安堵の想いが半分。
結局安堵が勝ってしまうのは、我ながらどうなのだ?と思わなくもなかったが、相手が相手だから仕方ないと、諦めた。 ]
合図の音だな。分かった。
穏便にいけるかどうかは、王国の勇者殿次第だな。
まあ、いざとなれば、ベリアン・グラウコスに神前試合でも申し込むさ。
[ 最後のは悪戯を企む声音だ。 ]
ああ、それと、
[結局、嬉々としたコエのままで続ける。]
他の兵は下げさせろ。
話はまとまったんだ。これ以上血を流す必要はない。
兵は戸惑うだろうが、後で俺が行って皆に話す。
戻るまでの戦闘停止は命じた。
兵の動揺はクレメンス殿がなんとか抑えてくれるだろう。
そうだな、後片付けは
[ カナンの調子が嬉しげであればあるほど、男の方はぶっきらぼうな調子になる。 ]
うん?
王国の陣営の中で、神前と言えば女神の寵児の前だろう?
お前の居場所に案内してもらうにはいい口実だと思ったんだが。
[ 問題でもあったか?と、首を傾げる。 ]
あの試合自体が面白かったのは事実だがな。
[ 付け加えたコエは、楽しげだった。 ]
[あちらがぶっきらぼうになればなるほど、こちらが嬉しげになる、というのは逆もまた然りで。
後片付けに関しては異存はないのだが]
……確かに、口実だがな?
[なぜそこで楽しげなバルタに納得がいかないのかは、自分ではよくわからないのだった。]
[ カナンが、どこか納得いかなげなのは、男も感じていたが、その理由にとんと見当がつかない。 ]
だから、何が......まあいい。
ああ、見えたぞ。
[ その疑問も結局、開けた道の先に緋の髪の王弟と並び立つ黄金を目にすると霧散した。 ]
[試すか?と毒の短剣を差し出されたとき、胸に去来した記憶がある。
少年の頃の話だ。
夕食時になっても出てこないリトスを探し周り、毒草の茂みの側で倒れている彼を見つけた。>>5:*23
その瞬間の全身の血が引く感覚は今でも忘れられない。
駆け寄って揺すり起こし、息があると知れば全身の力が抜けそうなほどに安堵した。だが譫言のような彼の話に耳を傾けているうちに、ふつふつと怒りが沸いてきたのだ。]
だからって、死のうとなんかするな!
[こみあげる怒りのままに叫んで、倒れているリトスを散々に殴りつけた。
おかげでリトスが倒れたのは喧嘩のせいだとされて、二人揃って夕食抜きの罰を受けたものだが、それはいい。]
[後で盛大な勘違いだとわかった後も、毒を自分で飲んだことに対しては怒っていた。
彼が母親に対して抱いている感情にもだ。]
お前の母さんは、お前の命っていう一番大事なものを残したろ?
なにも物を残さなかったのも、お前の叔父さんのせいだろ?
なんか残されてたら、絶対取り上げられて酷い目に遭う。
それが分かってたんだろ、お前の母さんは。
だからそんな、自分を痛めつけるようなことすんな。
[後日、勘違いを謝りながらも、ふくれっ面のままそう言った。
彼にこんな思いを抱かせたのも、無茶をさせたのも、表情を奪ったのもすべて彼の叔父だということをはっきり知ったのもこの時だ。
この瞬間から、かの豺狼は不倶戴天の敵となった。]
[毒の短剣を差し出して、試すか?と言った顔が、自分で毒を飲んだと言ったあの時に重なったのだ。
もう二度と、あんな思いを味わいたくない。
彼に毒を飲むことを決意させ、毒の短剣を渡した元凶を取り除かねばならない。
この好機、逃す手はなかった。*]
― 過去 ―
誰が、自死なんてするか!
[ まだ、毒で朦朧としていたところへ、いきなり殴り掛かってきた相手に、反撃しないという選択肢は無く、暴れたせいで、余計に気分が悪くなって、その時には言えなかった反論をぶつけたのは、夕飯を抜かれて、二人だけ寝床に追いやられた後だった。 ]
死んだら、お前との約束も果たせない。俺は、お前と一緒に元首になるんだからな。
[ 政敵になると言った言葉と、一緒にと、口にした望みが、同じの様で、同一では無いとは、この時は自分でも気付いてはいなかった。 ]
[ 結局誤解と知って、カナンは、謝罪を口にしたが、それでも、相変わらず怒った顔でむくれていた。
こういう時の彼は、ものすごく分かりやすくて、とんでもなく頑固だと、知っていた。
多分、納得いくまで怒り続けるだろうと思ったから、毒に身体を慣らそうとした事も打ち明けたら、余計に腹をたてたようで、また、噛み付いてきた。 ]
だから、なんで...っ
[ お前がそこで怒るんだ、と、口にする前に、母の事を言われて、言葉に詰まった。 ]
[ 他の誰かが言ったなら、無責任に分かったような事を言うなとか、他人の事情に口を出すなとか、幾らでも言い返してやったろう。
けれど、カナンが口にしたのは、ただの想像ではないと解っていた。
それは、自分自身が、そうかもしれないと思い、そうであって欲しいと願い、そうであったなら哀しいと恐れ、心に封じた予測そのものだったから。 ]
お前は、本当に...俺と繋がってるんだな。
[ そうでなければ、カナンの悔しさが...あの日、自身がカナンの父の話を聞いた時と同じ「自分に何も出来なかった事」への、悔いが、こんなにも鮮明に伝わってくるはずは無い。
そう、改めて確信して ]
分かった。命は大事にする。
だから、もう怒るなよ。
[ きっとこの命も、繋がっているだろうから、と。口にする代わりに、彼の胸に拳を当てた。** ]
──…けど、
お前が怒ってくれるのは嬉しいものだな、リトス。
[ぽそりと響くのは、互いの鼓動の間のみ。]
当然だろう。お前と俺はおなじものなんだから。
[ まるで、叔父から受けた呪詛をすべて洗い流すかのように、重なる鼓動が心地いい。 ]
これで終わりじゃない。これからだ。
[高揚した言葉は、使い慣れたコエに溢れる。
高鳴る鼓動はどちらのものか。]
お前とこれからも共に高みを目指していける。
最高じゃないか、
[目指す先に果てはない。
肩を並べて
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