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ナイジェルが?
[案じていると伝えられた相手の顔を思い浮かべる。
そういえばブリュノーに派兵すると決まってからこの方、彼の顔を見ていない。]
あとで直接、風呂のお礼は言いに行くって言っておいてよ。
[ちゃんと帰る、との言葉に変えて告げる。
恩義であれ約束であれ、ルーリーを縛るものにはなり得ない。
唯一行動を規定するものがあるとすれば、それは"好き"という感情なのだった。*]
ノーラ、ちゃんと生きてた。
[生存報告ではあるが、それほど弾んだ声でないあたり、予断を許さない状況だというのは伝わるだろう。]
ノーラが目を覚ますまで隣にいるよ。
遅くなるけど心配しないでいいから。
[すぐ戻る、と言ったことはもう頭の中には無い。
ただ、あの時はある意味決死の覚悟かつ奪い取ってでもノーラを連れて帰るという気迫だったのが、今はさほど危険を感じていない、という心境の変化があるのだ。]
[ レオノラが生きていた、との知らせには、胸の重荷が一挙にふたつ外れたような気持ちになる。
レトがどういう経緯でティルカン側に受け入れられたかわからないが、使者として顔を知られていたことも良かったのだろう。
レオノラが目を覚ますまで隣にいると囁くレトの声は、どこか祈りのいろを含んでいるかに聞こえ、レオノラの傷が軽いものではないことを予測させる。
わざわざ連れ帰って治療をほどこしてくれたティルカンの行為は、並ならぬ仁だと心にしみた。]
おまえの歌を聞かせてやるといい。
[ 以前、タイガが生死の境を彷徨った時に、レトはずっと呼びかけてくれた。
あれはどんな薬よりも強く効いた。
今、レトがレオノラの側にいるのは、死なせてはならないという天意だと信じる。]
おまえもちゃんと食べるんだぞ。
[ 労働しない代わりに、休むということも忘れがちなレトにはそう諭しておく。
レオノラを案ずるレトに寝なさいと言ってもきかないかもしれないが、食べることならルーリーにとって受け入れやすいはず。]
そうだね。歌うよ。
届くといいな。
[ルーリーの歌の中には、魂を呼び戻す祈りの歌がある。
効果は保証付きだ。なにしろタイガも帰ってきたのだから。]
うん。ちゃんと美味しいの食べるよ。
[心配されたな、と感じたので、胸を張って答えておいた。
心配いらない。大丈夫だから、とのメッセージを込めておく。]
[歓喜の瞬間は絆の声にも乗る。]
ノーラが起きたよ!!!
良かった!!
ノーラが起きたよ!!!
[しばらくはエンドレスで騒がしい。]
― ノーラが目覚めた日 ―
[ それまでも、日に数度は名を呼んで、他愛ない報告をしていた。
けれど、レトから返る反応は捗々しくなく、あえて深くは問いかねていたのだが…
久しぶりに弾けるような声がぶつかってきた。>>*8
これまで沈没していた分の埋め合わせのように賑やかだ。]
── よくやった。
[ レトも、レオノラも。
安堵に唇をわななかせて、軽く拳を握る。]
昨夜、レオノラの亡兄ジャンが夢枕に立ったんだ。
何か言っていたが、声は聞こえなかった。
今にして思えば、あれは── おまえの歌うメロディだったのかもしれない。
ノーラのお兄さんって心配性なのかな。
それともすごく仲が良かったのかな。
俺の歌がノーラにも聞こえたって。
これで俺の歌が役に立つって証明されたね。
[一度目は「タイガだから」だったかもしれないけれど、二度目があるならまぐれじゃない、と胸を張った。]
ジャンは身内を自慢するような性格ではなかったが、弟のことはいつも大事に思っていたのが伝わってきていた。
[ だから、彼の墓の前で、レオノラが貴族社会で潰されないようにすると約束したのだ。
その手立てが先鋒を任せたりすることだったりするのだけれど。
それはレトに対しても同様である。
戦うことは、輝きだという信念であった。]
そうだな。
おまえの歌は、おまえの魂につながっているからな。
かけがえのないものだよ、ラーシュ。
そういえば、蜂蜜酒まだもらってない!
[ノーラがナイジェルに奢られる予定、というのを聞いて何か思い出したっぽい。]
えへへ。
[ノーラとその兄は、きっと自分とタイガみたいだったんだろうなと思えば、ますます親近感が沸く。
大事に思われているのが伝わるからこそ、頑張ろうという気にもなる。]
タイガがそう言うなら間違いないね。
今度、歌の宣伝文句に入れようかなぁ。
魂につながる歌、って。
["声"に出しては、取り澄ましたように言う。
けれども真っ直ぐな言葉で認められて、照れるやら嬉しいやらで身もだえていた。]
おまえが蜂蜜酒を思い出したなら、心配ないな。
[ 飛んできた声に微笑む。
レオノラの容体も、安定したのだろう。]
大丈夫だ、ちゃんと用意してある。
[ レトがいつ帰ってきても飲み頃の蜂蜜酒ができているように、日をずらしてこまめに作って司令官天幕においてあることは秘密だ。]
魂につながる歌…
ああ、そのフレーズはいいな。
[ ラーシュ、と呼びかけるのに代えて、小さくハミングしてみた。]
― 会談当日 ―
[ 話し合いの決着がついたところで、レトに声を送る。]
王妃と子供はブリュノーに戻れることになった。
マルールとティルカンは兵を退く。
戦いは終了だ。
おまえとこれを乗り越えられてよかったと思っている。
ところで、上流の方で工作隊に何か細工させたか?
橋を渡る時、ずいぶんと水量が減っていた。
何をしでかすつもりだったか、後で教えてくれ。
それと、必要のなくなった仕掛けは、後に迷惑のかからないようにしておくように。
[ レトを働かせることについては右に出る者はいないと言っていいかもしれない。]
ほんと?
やった!早く帰りたいなあ。
[まさかそんなまめに作ってくれているなんて思わなかったけれども、兄が作る蜂蜜酒は好きだ。
明日にはノーラが跳ねまわれるくらい元気になっていればいいのに。
なんて無茶をちょっとだけ思った。]
[ハミングは声と変わらず、呼ばれたと感じる。
胸に触れる響きは、ラーシュと呼ばれるのと同じくらい気持ちいい。]
俺の歌はタイガと繋がってるんだと思うな。
俺の中に歌とタイガがいっぱい詰まってる。
[生まれる前から母の歌とタイガの声を聞いていたからかもしれない。
それくらいには、切り離せないものだった。]
― 会談当日 ―
そっかあ。
お疲れ様、だね。
[戦いは終わりと告げられて、良かったという想いが溢れる。
それは多分、タイガの心情に共鳴したものだ。
これで戦いが終わるのは不思議な感じがしたけれど、タイガが嬉しいなら嬉しい。]
[続けて指摘されたことに、あ、と声を上げた。]
そうだった。
工作隊のみんなに川を堰き止めてもらってたんだった。
ほら、湖に水溜めて、片方の堰を壊せば川下りサーフィンできるかなって。
[要は、速度を上げた水流に乗っての奇襲作戦だ。
おまけに、途中で川底に石やらを投げ込んで水を溢れさせる計画でもあった。]
はーい。
あ。せっかく作った堰だからさあ。何かに使えないかな。
みんな張り切ってたから、きっと頑丈なの作ってると思うんだけど。
[後に迷惑の掛からないように、と言われて、何か思いついた顔になる。
水利工事の専門家が手掛けた堰だ。
ちゃんと作り上げれば、川の流量調節や大雨の時の洪水対策にならないか、……というところまで考えが回っているわけでもなく、壊すのは面倒だなあくらいに思っていた。]
[ これ以上の戦闘行為はないと告げれば、レトからは、どこかしみじみとした声が返ってきた。
安堵に一抹の寂寥が混ざるような。
それは確かに自分の心を反映したものであったろう。
この戦いで死んだ者がいる。
兵を退いたところで彼らは帰らない。
この戦いがなければこの結果はなかったと、自分は言い切れるが、個々の死が無駄でなかったと検証する方法はない。
せめて自分の願った世界へ近づけるのが、上に立つ者に課せられた責務だ。
お疲れ様、と紡がれたレトの言葉は、死者たちにもあまねく降り注ぐ。 ]
[ 川に施した仕掛けについて確認すれば、やはり水計の下準備であったとわかる。
波乗り激流下りとは、あまたの海洋冒険家を輩出する国ならではの発想に違いないが、それにしても大胆だ。]
おまえといると、戦術の概念が覆りそうだ。
[ 何か別の用途に使えないか、との打診には、ブリュノー側と相談してみよう、と答えた。
すぐに壊れたりしないようであれば、ひとまずはいいとする。]
ちゃんとノーラと一緒に帰ったよ!
ご褒美は?
蜂蜜酒!
["声"で同時に騒ぐのも、また良し、だ。*]
最初に重要な報告をしたのはよろしい。
だが、次がご褒美のおねだりか?
[ やるけど。もちろん。
すぐにもやりたくて仕方がないくらいだ。*]
[言葉が声で返ろうが"声"で返ろうが気にしないのが常だ。
いつだってふたりの会話は音になる以上のものが飛び交っている。]
だってくれるっていったからさあ。
忘れないうちに言っとかないと。
あ。でも風呂もいいなあ。
ティルカンには風呂無かったんだよー
ずっと馬に乗っててくたくただし。
[したいことの要求はころころと変わる。
そういえばいい匂いもしてた。]
[ 相変わらず目まぐるしく興味が動いているレトの話に、耳を傾ける。
通りの良い声で語られるエピソードの羅列は、何かのサーガを聞いているようだと思った。
ひととおり話が終わると、今度は食い気が優ったようだ。
それにうなずいてやりながら、ひとつ提案しておく。]
ラーシュ、後で将官用の風呂に行こう。
それまで蜂蜜酒を川で冷やしておく。
[ 風呂に浸かりながら乾杯をする。
新しい試みだが、きっとレトも気に入ってくれるだろう。*]
一緒に風呂?蜂蜜酒?
いいよ。行こう。
[新たなお楽しみの提案をされれば、嬉々として乗る。
今すぐでもいいけれど、あとのお楽しみもいい。
放浪生活をしていた時には湯船につかるなんて考えられないことだったけれど、マルールの風呂はたちまち好きになった。
やっぱりマルールの血が流れているということなんだろう。*]
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