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…… ルト …… 赤い 靄 ……
[異変を訴えるように伝う声。
意識で伝うものなのに、掠れるような音として紡がれたそれは、やがて消え入るように音がすぼまっていく]
長だかなんだか知らないけど、何でも一人で処理すればいいって態度じゃ、俺たちがなんのために生きてるのか、解らないだろーがっ!!
みんなが無事に目覚められなかったら、あんたのその秘密主義のせいでもあるからなっ!!
[ 赤い靄の向こうから、笑い声が聞こえる ]
『ダメだなあ、ルトくんは。すぐに、そうやって、諦めちゃうんだから』
[ 顔も思い出せない、けれど、良く...とても良く知っていたはずの、誰かの声 ]
『決めたんでしょ?楽しく生きるって』
うん...そうだね。
そう、決めた。
生きてる限り、楽しく暮らす...
『君が笑っていれば』
僕が笑っていれば...
『僕も笑っていられるから』
誰かが笑ってくれるから
(失った過去を嘆いたりしない)
(いつか全てが消えるとしても)
(見えない未来に怯えたりしない)
『ルトくんは、天邪鬼だねー』
[ くすくすと笑う声が、遠くでキラキラと透明な光を弾いた** ]
― 夢の中の記憶 ―
[ ルナちゃんと呼ぶと、彼女はいつも少し戸惑ったような表情になる。自分には女の子らしさとか、可愛らしさとかは無縁だと、心の中で考えているのは傍目にもよくわかった ]
[ そんなことはない、と、言葉にする代わりに、占い師は彼女をルナちゃんと呼び続けた。名前は原初の呪文だと、何かの本に書いてあったから、心をこめて、呼び続けた ]
[ 君の可愛さと優しさを知っている、繊細に縫い取られた刺繍の中に、丁寧に着る人の事を考えて仕立てられた服の中に、それは確かに宿っていると、いつか、ちゃんと伝えようと思いながら* ]
[ ララちゃん、と呼ぶと、彼女は少し照れた顔をして、それから嬉しそうに微笑みを返す。
どこか気弱な赤い花精は、本当は誰よりも広い世界を心の中に持っていて、けれど、その世界に踏み出すのをためらっているように見えた ]
[ 君の夢の後押しをしたい、と、占い師は口にしたことはないけれど、彼女が勇気をもてるように、いつもそう願っていた ]
[ まだ他の誰にも見ることのできない、美しい風景や見知らぬ世界、クララの中に息づいているその物語を目に出来る時を、本当に楽しみにしていると、手渡したお守りに宿る願いは彼女に届いていたろうか* ]
[ ナーくん、と最初に呼んだ時、彼は、それは誰のことだ?と言いたげな、不思議そうな顔をした。
けれど連呼するうちに、あっさりその呼び名を受け入れて、占い師の事も愛称で呼ぶようになった ]
[ ルト、と、呼ばれるのは、どこか懐かしくて嬉しかった。だから、誰にも話さなかったリングの記憶の話もしたのだろう。
彼が元気だと安心した。どこかで、失くした記憶と重ねていたのかもしれない ]
[ 仔猫のリアが、時々リングにじゃれついていたのは、或いは、ヴェルナーと消えてしまった誰かは違う、と、占い師に思い出させるためだったのかもしれない ]
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