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ふっ…、くく。
そうですぞ。儂の心配など、まだ早い。
そうだなあ……
あと50年といったところですかな。
ダンクラード様が、立派な髭を蓄えた頃です。
[その頃にも悠々として生きているような顔で言う。
このご時勢、実際にそこまで生きれば化け物の域に達しそうだが。]
そうですな。
焦ってこちらに来られて、転んでしまわれても困る。
膝すりむいて泣かれても困りますでな。
[しれっと昔、転んでは泣いた思い出など引っ張り出しておいて]
そして儂とマーティンもまた、語ったものでしてな。
貴方とカークと、若者たちが志継いで未来を歩むなら、
…───互いに、命散らそうとも悔いることない、と。
[ぽつ。と、静かな間が落ちた。]
ダンクラード様。
儂らの未来、儂らが15年前に掴めなかった未来を掴んで下され。
その手に未来お掴みになった暁には、存分に泣いてやって下され。
マーティンには酒の方が宜しいかも知れませんな。
儂もお付き合いいたしますでな。
……。悲しいときは泣いて構わんのです。
つらいときにはつらいと言って構わんのです。
…───ただ。
ただ、あの二人も嘆いているとは思わんでやって下され。
悔いているとは決して思わんでやって下され。
笑っていると思ってやって下され。
未来を若いのに託すというものは、
… 年寄りには、嬉しいものでしてなあ …
[自分も、とは言わない。
未だ男もまた、未来をこの手で切り開くつもりでいるのだから。]
[ただ、知っておいて欲しいと思ったのだ。
自分たちが未来託すに足る彼と…彼らは、
自分と恐らくは先に散った彼らにとっての
─────
腰もか?
年も考えずに張り切りすぎるからだろう。
[戦いの最中とは思えぬ暢気な空気に包まれて、
応える言葉も日常の気配を帯びる。]
あと50年もしたら、
おまえなど足腰立たなくなってるぞ。
そうしたら俺が負ぶって運んでやる。
[チャールズが、物心ついた時から側近くにいた彼がいなくなることなど、想像もできなかった。
それは、今もだ。]
…馬鹿。
そんな昔のことを持ちだすな。
[口を尖らせてはみるが、それもまた懐かしい思い出だ。
転んでは泣いていたことも、
膝をすりむくたびに手当てしてくれたことも、
みな、温かな記憶のひとつだ。
常に王として在った父は、常に見上げるような存在だった。
ごく幼い頃は抱き上げてくれもしたが、少し大きくなってからは王としての姿を崩すことはなく、我が子へも次代の王としての自覚を求めることが多かった。
代わり、というわけではないのだれども、幼いときより側にあったこの守役へはずいぶんと甘えてきたようにも思う。
強くて温かい父の温もり。
普通の子供が持つ父親のイメージを、守役へ重ねていた。]
[逃亡生活を経て平原や森で過ごした15年。
チャールズの上に"父"を見ていたのは確かだ。
主と臣下という関係は変わらなかったのだけれども、
ささやかであたたかな思い出は、"父子"のものだったろう。]
[今のうちに。
そう言う彼の声に耳を傾ける。
ウォーレンのこと。マーティンのこと。
彼らと、チャールズとの語らい。
記憶の中にしか住まなくなってしまった彼らが
なにを望み、何を為そうとしてきたのか。
そしてチャールズもまた。]
おまえたちの宿題を俺たちに押し付けるな。
[最初に出た言葉は、明朗かつ快活な拒否だった。]
これは俺の意思だ。
俺がやりたくてやっていることだ。
俺が目指す先でおまえたちの望みも叶うかもしれないが、
あくまでも、ついでだからな。
[15年前を知る者達が、責を感じているものたちが何人もいる。
国が割れる時に居合わせた彼らへと、伝えたい言葉だ。]
だから、この戦いが終わったら、おまえもさっさと隠居しろ。
あとは俺たちが、全部やってやるから。
これ以上おまえを働かせたら、鬼とでも言われそうだ。
[これまで身を尽くしてくれたことへの感謝の心、
託されたものを確かに受け取ったという意思を、
不器用な言葉にして返す。]
─── それで、たまに酒に付き合え。
思い出話もしよう。
愚痴も山ほど聞かせるぞ。
隠居の楽しみとしては十分だろう?
[おまえの前なら、
きっといつまでも素直な子供でいられるから。
言葉にならない思いが揺れる。]
[
ラモーラル全ての民にとって
そんな存在でありたいと願う自分は、
なによりもまず身近な彼らの思いを、受け止めていきたいのだ。]*
[騎兵が動いたと>>*43
もたらされた報せには、少し沈黙が挟まる。]
そうか。
…こちらの相手が意外に多くて手こずっててな。
けれども、なんとかやってみよう。
[少し厳しいな、という色が滲んでいた。]
は、は!
敵いませんな。
ダンクラード様に負ぶわれるとはなあ…
[遠く、夢想するかの間が落ちた。
それはとても、可笑しくて、けれどとても幸せな夢のようにも思われた。]
… 楽しみに、しておきまするよ。
[心からの言葉を、響かせる。]
ははは。年寄りの昔話は聞くものですぞ。
あの頃のダンクラード様といえば──…
[冗談めかして音にしてみれば、抗議の声が即座に返った。
そんな反応が、変わらぬ素直な反応が楽しくも愛しい。
幼い頃からそうだった。
駆けて転んで膝擦りむいて、時には意地のように涙零れるのをじっと堪える少年に、温かなミルクを飲ませたこと。
剣の稽古で初めてひとつ成功して、誇らしげに顔輝かせていたこと。
新しく学んだのだと得意げに、それを披露しにきてくれたこと──
思い起こせば、その全てが懐かしく愛しい。]
ダンクラード様、
[この声に、痛みは乗らない。
これを今ほど感謝したことはない。
穏やかな、───穏やかすぎる声が、名を呼んだ。]
… すみませぬが、儂は先に行きますでな。
[どこへ。とは言わない。
すぐそこへとでも付け足しそうに置いて、微かに笑った。]
マーティンと、酒を、呑まねばなりませんでなあ。
ダンクラード様は、ゆっくりとおいでなされよ。
… あまり早くおいでになったら、叩き返しまするぞ。
[ゆっくりと置いて、言葉を捜した。
ああ、もう時間がない。……なにか。
何かもっと、最後に伝えたいことは。大切なものは。]
ダンクラード様とご一緒にいられて、
マーティンと三人で、わいわいと──…
……、…。
… どうか幸せに。幸せに、おなりくだされ。
[それは王として、とかではなく。
もっとささやかな一人の子として]
儂の、ただひとりの───…
[息子。と、音にすることはなかった。
微笑むような気配が揺れるのを最後。
その気配は、ふつと*途絶える*]
[刃交えるさなか、不意に声が響く。]
チャールズ?
[穏やかな声に、言葉に、わずかな不安を覚えて名を呼ぶ。]
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