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―暁闇―
[紅い月に見守られながら、あむ、息を潜めてピンと立った耳を食む。
薄金色の、誰もが羨むふわふわの耳。
――ごくりと唾液を嚥下する音が、ファミルの鼓膜に伝わるか。
抵抗されただろうか?
けれど、その動きは直ぐに眠りの奥へと搔き消されていくだろう]
ゲルトが、待っているよ。
寂しかったのだろう…?
[ゲルトとファミルが結託する事を恐れ、
ゲルトがファミルを「食べたい」と、そう言っていた理由に賭けたのだ。
『眠れ』
眠るファミルの身体を横抱きに、うさぎ達の待つ洞穴へと運び込む――*]
[夜が明けた]
[紅い朝だ]
[黒い森に オオカミが生まれた]
[烏の呪が、発動する]
[オオカミとウサギの数]
[ウサギの左耳の血が引金だ]
[弱い生物たちよ、さあ逃げろ]
[強いオオカミよ、さあ争え]
[――烏の鳴き声が、木霊する]
――…、……
[未だ、リヒャルトとは紅い意識の共有が続いていたけれど
彼の気配に動きは感じられず。
少しばかり意識の触手を伸ばし、リヒャルトの脳へと語り掛ける]
――仲間と同志の違いって、…なに?
[毛布の繭の中心で、やっと、微睡み始めたその最中、呼び掛ける声無き声に、うんざりと、溜息を一つ]
キミの言う、「仲間」は
「生きる原動力」となる「大切な存在」なんだろう?
キミのそんなものに僕はなれっこないし、
キミをそんな風に想う事は僕にはできっこない。
けれど、おおかみ同士、寄り添うくらいはできるよ、
「おおかみとおおかみなら」、キミがそういったんじゃないか。
僕にとっては「おおかみとうさぎ」だろうと「おおかみとおおかみ」だろうと、何ら違いはない。
「他人と僕」だ。今迄と、何も変わらない。
変わらないからこそ、寒い時に身を寄せ合う事くらいなら、できる。
互いに傷ついたなら、傷を舐めあうくらいなら、できる。
変わらぬ関係に戻ることなら、構わないと、そう言ったんだ。
…けれど、もう、必要なかった、かな。
[皆がおおかみになった今なら、もう、自分は彼に必要のない存在になったのだろう。
変わってしまった皆にとっても、きっと、等しく自分は必要無いのだと、思う。
だって、…こんなにも寒いのに、
僕には寄り添う相手も居ない。独りぼっちな侭なのだから]
[紅い意識を追いながら、瞼を閉ざす。
今、"同志"が置かれている状況を、追うように]
――それが、君の言う"同志"、か。
同志ってのは"志を同じくするもの"って意味だよね。
"仲間"なんて曖昧なものよりずっといいと、
…君の言葉を聞いて、俺は思ったんだ…
― 回想・夜明け前 ―
[>>*0ローシェンがファミルに牙を向けるのを、手伝うでも、邪魔するでもなく、ただ、眺めていた。
これで、もう、終わる。
そう感じたから、崩れ落ちたファミルの身体を抱き上げた彼に、初めて自分から声を掛けた]
…おおかみに目覚めた時、別にキミを恨んだ訳じゃないよ。
だって「自分」は何も変わらないもの。ただ、周りが変わるだけ。
元から然して誰にも好かれてもいなかっただろうに、これでとうとう皆に嫌われるね、って諦めがあっただけ。
けど、僕と同じ裏切り者でもキミの事はマレンマが受け入れてくれる。
だってマレンマはねぼすけおおかみ、元から自分がキミの仲間だと知る、おおかみ同士。
…それが、赦せなかった。
キミはうさぎだった僕を自分の目的の為に無理矢理叩き起こした。
キミを求める彼では無く、僕を裏切り者に巻き込んだ癖に、
それなのに、結局、”僕だけ”を択んではくれなかった。
…ねぇ、忘れちゃだめだよ、覚えておいてね?
もし、キミがマレンマの手を取るのなら…
…――僕はマレンマに何をするか判らないよ?
[同族を求めるロー・シェンと、ロー・シェンを求める
ロー・シェンがマレンマを巻き込まなかったのは、ロー・シェンが苦しみ続けた「皆を裏切る痛み」をマレンマに与えぬ為なのだろうと思っている。
ローシェンにとって自分なら、別に、皆を裏切る事に苦しもうと、どうでも良く適任だったのだろう。
互いに求めあい、想い合う二人への、嫉妬。
彼に対し不機嫌だったのはそれが唯一で、それが総て*]
ねえ、リル。
詰まりは結局、起きたくなかったんだろう?
……無理やり起こした俺を恨み、殺意を抱くならともかく
…どうしてそこにマレンマの名が出るのか、理解出来ないね。
[マレンマだから道連れにしたくなくて
リヒャルトだから道連れにした、
そんな思考はお門違いもいいところだ。
お門違いではあるけれど、違うのだと上手く説明出来る術もなく]
――君の好きに、すればいい。
何があっても俺は、君を"同志"だと思っている。
[少なくとも、今は。
皆まで言わずとも、そこまでを告げてほらあなへ向かった*]
[言いたいことだけ言って、去ってゆく彼>>*9をそれ以上追い掛ける事はしない。]
けれど、どうせ僕も裏切るんだろう?
…――大嘘吐きの裏切り者が。
[遠ざかった背に吐き捨てる。
ロー・シェン自身を殺したって、何の意味もない、
苦しませる為には生かしておく必要がある、そんな事も判らないなんて、随分と甘ったれた悪役だ。
寄り添う相手を失った自分と等しく、独りになればいい。
当たり前の様に想い合う互いに気付かぬ侭ならば、思い知らせてやろう、
そう、喪って、初めて気付く。
…――あぁ、なんて素敵な絶望だろう]
…ふ、ふふっ、く……っくっくっく、はは、は――
[壊れたように笑い出す。
声無く泣き出した様に、顔を歪ませながら]
[
誰か、助けて。
…――声なき悲鳴は黒い森に掻き消えた。
どうせ、助けを乞える相手なんて、自分には、いない。*]
[瞼を伏せて、紅い意識に潜り、挙げる声なき遠吠え。
傍近く居る彼になら、容易く届くだろう]
…仲間でも、同胞でも、名前なんて何でも良いよ。
キミが欲しいのは自分の「群れ」だろう?
未だ、キミが僕にそれを望むなら、暫く付き合っても良いよ。
だから、そのうち僕にも付き合ってよ。
いたぶって遊びたい
…――ねぇ、ロー。みんなで一緒に狩りに行こう。
けど、仕留める役は僕に譲ってね。
一緒に遊んでくれるでしょう?
[”ロー・シェン”ではなく、”ロー”と気安く呼ぶのは、これが初めてだと、彼は気付いただろうか?
隠しきれぬ静かな怒りを胸に抱いたまま、発する声は酷く冷酷なものだっただろう]
[その瞬間、紅い澱がゆっくりと揺れる。
声のない遠吠えが、第二の意識を覚醒させた]
群れ、…そう、そうかもしれない。
獲物……?
何か、あったのか。
["ロー"どころか、名で呼ばれた記憶さえない同胞には
警戒というよりも軽蔑されているのだろうと、思っていたけれど。
彼もまた、先へ進む為の「何か」を見つけたのだろう。
わざと楽しげな意識を搔きたてているけれど
その言葉のひとつひとつに、怨恨を感じ取る]
[>>*13何かあったのか、聞きたいのはこっちの方だが、真相を知る眠り姫は、傍らで目を閉じた侭に覚めぬ夢の狭間を揺蕩っているようだ。目覚めの気配は、まだ、遠い。]
さぁ?なにがあったんだろうね…?
まぁ、何があっても、なくても、ローには関係の無いことだよ、きっと。
[突き放すわけでなく、ただ、それが真実だと思って、そうとだけ簡素に告げた]
[>>140マレンマが出て行った、そう聞いた時、思わず鼻で笑った。
逃げられたのか、…否、逃がしたんだ。
逃がす気が無ければ、端から隙など見せる筈も無い
…しかし、彼は悪役に向かない甘ったるい性格のようだし、隙だらけで「逃げられて」しまっても不思議はないと、遅れて気付いて独り納得したけれど]
逃がす気が無いなら端から――…
…あぁ、Dead or Aliveじゃないのか、面倒くさいな。
まぁ…少しくらい欠けても、僕に文句いわないでよね?
[機嫌がいいとは言えない最中の面倒事に、隠さぬ棘を孕む音色で返す。
群れに加わる見返りに狩りに付き合えといったのに、「そのかわり」?
まるで話が通じないけれど、衝突し合うのも今は億劫で、腹癒せに、不安を煽る様な余計な言葉を足す八つ当たりを。
今は、もう、不思議と、ふたりがどうなろうと興味もなければ、わざわざ危害を加える気概も失われていたけれど]
[この意識の下で意識を共有しあうのは、彼と自分、それだけではないと、目覚めた瞬間から自分は知っていた、
けれど、彼は忘れてしまったのだろうか?
おおかみのいう事を、素直に聞いて、忠実に従う、可愛い僕。
彼だって何度も使っただろうに。
けれど、彼は、伝書鳩のような使い方しかしていなかった。
思考を読んで、うさぎを浚う事だって出来る、なかなかに便利な連中なのに]
――――。
[声は、無い。
けれど意思を汲んで、顔を出したカラス達に声なき侭に、命じる。
さがしておいで、お前たちの主になり損ねた、本物のおおかみを。
幾つもの羽音と鳴き声を響かせ飛び立つ烏を見送った。
手伝うのは構わないが、自分が見つけたところで連れ戻す適任は彼自身しかいないだろうに。
やっぱり頭悪いのかな?そんな失礼な事を、この場に居ない同志に、思い、赤い意識を遮断した*]
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