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俺が俺の気に食わない相手を殴りに行くののどこが悪い?
[ あの日の事は、何年経っても平行線の言い合いになる。世間で言われる元首と将軍の反目よりも、こちらの方が余程根深いと言っていい。
他人が知れば、きっと呆れるだろう、とは、自覚しているのだが、譲れないものは譲れないのだから仕方ない。 ]
そもそもお前が怪我をしなければ薬草の出番もない。...と言っても遅いだろうな。
[ 困難な局面でこそ、カナンは先頭を切って敵陣に乗り込んでいく。そうして、誰よりも先に傷を受け、誰よりも多くの敵を屠り、英雄とは斯くあるものと見せつける。
それは、敵にばかりではなく、うるさ方の長老達へも、見せねばならない姿だった。 ]
なんだと?
俺の敵を断りもなしに……
……いや、さすがに今はやめておくか。
[熱くなりかけたのを、苦笑して引き戻す。
言い合いをしながら斬り合いができるほどお互い器用ではないだろう。
大勢を相手に乱闘しながら口喧嘩したことは何度かあるが。
もう遅い、と何かを見透かしたような物言いには、たた笑みの気配を飛ばしておいた。
それも、ついでのように告げられた言葉で霧散する。]
取られた?
お前がか? ああ……
[首を振るような間を置いて]
あの虎はとんだ大物だったな。
そんな試合なら、俺も見たかった。
なに。お前の膝を付かせようと思うなら、息の根を止めるしかないのは知っている。
心配していないな。
[そこは確信を持っているという口調で応じておいた。]
王弟殿とお前は、意外と気が合うかもしれんな。
[ ギデオンに伝えたのとは真逆の本音を、愉しげな声音はそのままに落とす。 ]
ほう?
おまえが言うならそうなのかもしれないが、
[宴の席で、ほんの短時間言葉交わした印象は、住む世界が違うというものだった。
けれども、刃交わした彼が感じたことならば、そうなのかもしれない。]
俺と波長が合うそうだからな。
[ 笑みの気配が少し変わる ]
カナン......きっと、この男も、超えるべき壁だ。
[ 俺たちの、と、声なき声が告げる。 ]
超えるべき壁、か。
……なるほど。
目標が分かりやすいというのはありがたいことだな。
[口調が真剣さを帯びるが、すぐに軽い笑みが乗る。]
頭の固い長老連中よりは、話して楽しい相手だろうな。
カナン、北から王国の軍船が来る。
恐らく干潟を超えたんだろう。
そちらにも新手が向かうはずだ。
......死ぬなよ。
[ そう告げたのは初めてだ。氷の仮面の裏、胸を焼く焦燥に奥歯を噛み締める。 ]
干潟を軍船で超えた?
[もたらされた報せに目を剥く。
迂闊に干潟に入り込めば、船などすぐに座礁するものを。
敵ながら見事なものだと感心せざるを得なかった。]
さすがは王国、と、この地の人間か。
兵も策も豊富だな。
[新手か…と思案するが]
[聞こえたコエに混ざる焦燥を、鼻先で笑い飛ばす。]
ここで死ぬものかよ、この俺が。
こんなところで死ぬなら、今まで千回は死んでる。
心配するな。
親父と、お前が俺を護っているんだからな。
[服の下にある護符と鎖に触れて、自信を返した。]
[ 親父とお前に護られている、と、自信たっぷりにカナンからのコエが返れば、予測不能だった事態への焦りは静まり、男は深く吐息をつく ]
...ああ、その通りだったな。
お前は殺しても死なないやつだった。
[ そう口にすれば、先刻の焦燥が、むしろ気恥ずかしく感じられた。 ]
こちらの決着もお預けだ。
だが、刃交えて、分かったこともある。
後で、話そう。
[ コエではなく、と、いう意は伝わったか** ]
[届くコエが落ち着いていくのを聞きながら、内心に笑みを刻む。
あの鉄面皮が慌てるなど、滅多にあることじゃない。
己が遭難して以来じゃないか?とにやついていたが、ふと、どちらも己が原因なのかと思い至る。
気づくと同時に、心臓が深く脈打った。]
俺もお前と同じだ、リトス。
あの日の約束を忘れたことはない。
腕一本になろうと、這ってでも戻る。
死ぬまでは、負けじゃないんだからな。
[滾る熱さのままにコエを送る。
唯一人、心臓が繋がる相手。それはどんな血の繋がりよりも深く濃い。]
神前試合に横槍とは無粋だな。
いや。神が決着をつけるのを怖がったのか。
ああ。何を掴んだか聞かせてくれ。
俺も、話したいことがある。
今ちょうど、大地の民と直接
それに。
たまにはお前の仏頂面を見ないと、調子が狂う。
[会いたい、と素直に言えないのは、もう習性のようなものだった。]
カナン。
[ 恐らくは、この戦の局面を、一息に塗り替えるかもしれない
勝敗を問うでなく、ただ、確かめるように、唯一の名を。 ]
───…ああ。
[張り詰めていた気を、ゆっくり吐き出すようにコエを零す。
名を呼ぶ響きが、緊張をほどいていくようだ。]
やれるだけはやった。
あとは、向こう次第だな。
[響きには、やりつくしたあとの充足感が漂っていた。]
[ 返るコエ、その深い響きに、彼の感じる充足感を共有する。
異なる国、異なる価値観、異なる望み...その全てを身一つで乗り越え、高く硬い壁を突き崩してきたのだ、と。 ]
そうか。
俺にも、必ず紹介しろよ、その大地の民とやら。
お前が、そこまでして口説いた相手を見てみたい。
[ 少しばかり、興味以外の何かが滲んだが、相変わらず男自身は無自覚だ。 ]
もちろんだ。
戦いが終わればすぐにでも会わせてやる。
生きのいい奴だ。きっと気に入るぞ。
[明るい口調で保証する。
むこうのコエに滲む何かは、気づいたけれども直接指摘したりはしなかった。]
なにしろ俺とお前は同じものだからな。
俺が気に入ったんだから気に入るって。
[ただ、そうとだけ付け加えておいた。]
あとは、戦いを終わらせるだけだな。
[コエの雰囲気を変えて呟く。]
どう終わらせるか。
それが、最大の難問だ。
[王国は侮れぬ敵だ。
勝つにせよ負けるにせよ、最善を探さねばなるまい。]
[ 俺とお前は同じもの、と、躊躇いなく断じるカナンのコエに、鼓動が跳ねる。
人が聞いたら、きっと仰天するだろう。 ...浮かんだその言葉は宙に消え ]
確かに、そうだな。楽しみだ。
[ 静かな肯定だけを返す。 ]
[ 戦を終わらせる、その形を探るカナンの言葉に、思い出すのはギデオンが最後に落とした言葉>>61 ]
薬も飲み過ぎれば毒となる。ほどほどがいい。か...
薬も飲みすぎれば毒?
…確かにな。
[不意に届いた言葉に、誰の言葉だ?と疑問が浮かんだが、重要なのはそこではない。]
俺たちは相手を殺しつくしたいわけでも、こちらが全滅するまで戦う気もない。
どの時点で、妥協できるかだな。
若い連中を納得させ、長老どもを黙らせる程度の戦果は持ち帰る必要がある。
それが為されなければ、先も無い。
.........カナン、急げるなら、出来る限り、早く来い。
[ ふいに、コエの調子が、何かに耐えるように、絞リ出す声音に変わる。 ]
……、
[どうした、という言葉は呑み込んだ。
あんなコエで呼ぶのは、聞いたことがない。]
わかった。
[是非もなく、行くと答える。]
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