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[ レトの声が届く。
いつもの彼らしくない揺らぎ。]
予感、か。
[ 大事なもの、といわれて脳裏を過ぎったのはレトや妻子、家族だ。
彼らを失うより、むしろ自分がいなくなることの方が可能性は高いと思われたが、ここでそれを言ってもレトの慰めになるとは思えなかった。]
おまえは、歌いたいときに歌い、泣きたいときに泣けばいい。
誰にも恥じることはない。
[ そっと傍に置いてゆくように声を送る。]
ラーシュ、
チャールズ軍団長が捕らわれたそうだ。
[ 無口ななりにレトと交流のあった人の状況を告げる。]
ティルカンの陣地に立ち寄ることがあれば、見舞ってやってくれ。
あは。そうだね。
[歌いたいときに歌い、泣きたいときに泣く。
今までもそうしてきたし、これからもそうだろう。
そのままを認めてくれる兄の言葉は、やっぱり心地いい。]
[その後もたらされた報せは、あまり良くないものだった。
でもこれが予感の正体かはよくわからない。]
へえ、チャールズが。
あのひとでも負ける時があるんだね。
………って、俺に様子見てこいって言ってる?
[どうしようかなー、という気配の間が空く。]
そういえば、向こうの陣地を水浸しにしたら、チャールズも水浸しになるかな。
ちょっと予定立て直さなきゃ。
[口にしたのは、もう少し実務的なことだった。*]
様子見などとは言わない。
彼が望めば連れ出してやってほしい。
他にも身柄を拘束されている者がいれば同様だ。
[ 毅然として無茶ぶった。]
水計をするなら、なおさらだな。
巧まずとも向こうに手勢がいるという考え方もできよう。
クリフ?
今、クリフと会ってるの?
[意図して声を届けるというよりは零れ落ちたような声だった。
だが兄の状況を察するなどせず、暢気に聞き返す。]
あれ。タイガってクリフに会ったことあるんだっけ。
[ 問われて、つい"声"に出していたと気づく。
意図的に話しかけたのではないにしろ、問われたことには律儀に答えた。]
そんな名だとは知らなかったが。
屋敷の前まで来たことがある。
おまえにも絵を見せたことがあるだろう。
あれは兄の方が描いたものだ。
あー。
そういえば見たことある。
あー、あー、確かに、言われてみればクリフだね。
[見せられた絵と子供の頃のクリフを結び付けるのは難しかったが、成長した当人を見た今なら思い当るところがあった。]
へえ。
あれだよね。祝いの盃あげたっていう。
あー、そうだったんだ。
世界は意外と狭いね。
[子供が生まれた日に、というのも聞いた。
生まれた子にルーリーの祝福をしに行ったときのことだ。]
[ すぐさま返る声が可愛いなと思う。
小動物的な感じだ。]
おまえの方こそ何処にいる?
[ 見られているのは好きかもしれない。]
[ もうアマンドに入り込んでいるというのも驚きだが、教会の塔の上とか。]
雨が降り始めた。
滑るなよ。
そこで怪我したら、教会の修士たちは手当よりも説教をするぞ。
大丈夫だよ。これくらい平気。
ちゃんと屋根の下にいるし。
教会の連中にも見つからないし。
[ちゃんと鐘楼の中にはいるが、そこに至るルートが正規のものではない、とまでは言わずともいいところ。
説教は聞きたくないなあ、と内心が漏れる。]
[ 魚か。
ならば優勢も何もありはしないな、と笑う。]
ティルカンの大将がマルールの野営地まで来るとの約定を交わした。
というわけで兵は引き上げる。
安心していい。怪我はない。
クリフ殿は、そうだな──
[ ああ、おれが魅了して虜にしてやった、と答えてもよかったが、誤解されても面倒なので置いておく。]
大胆不敵だ。
どこかおまえに似ているかもしれない。
[ と、ナネッテからもたらされた情報に、空気が波立つ。 ]
レオノラ・リンザールが深手を負い、ティルカンの捕虜になっていると…
[だが、暢気な空気はもたらされた報せの前に吹き飛んだ。]
ノーラが?まさか、そんな!
……俺、すぐ行って取り返してくる。
[常よりは低い声で告げる。
こんな時はたいてい、即行動に移しているのだ。]
[ 行くな、とは言わなかった。
自分でも動揺しているくらいだ。
ましてレトとレオノラの交流はよく知っている。]
あちらの将は、治療させるためにこちらで引き取った、と言っている。
[ 無体な扱いは受けていないはずだ、とそれだけは付け加えた。]
ラーシュ、
おれは拠点に戻っている。
[ レトを救うためなら、もう一度、戦いを挑むことに何らためらいはなかった。]
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