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ディーク・オラクル
[硬い呼び方で呼びかける]
ロシェを、
[取り戻さなければ、と続けようとして、左肩の痛みに向けようとした言葉が途切れた]
…届くか?
[痛みを堪えながら、自分よりもロー・シェンの近くに居るディークへと問いかける]
諦めないって、何をだよ。
[声を届けてきたヨセフに、反射的に返すのは、倒れたロー・シェンへの問いだ。
12のときに出会ってから──
自分でもしかと把握できないほど、ロー・シェンを深く求めていたゆえに、目に見えぬ傷は深い。]
ロシェは戻って来る。
必ずだ。
彼がそう言った。
[ディークから返された言葉を受けて、男は彼に断言する。
正しくは途切れていたが、男にはそう言っていたようにしか思えなかった]
あの状況で尚、ロシェは諦めていない。
何と言うわけではない。
失いかけているもの全てをだ。
[奪われんとしたその命でさえも]
あの魔は確かに死者を操る者だが、ロシェが死んだとはまだ決まってはいない。
お前は確かめもせず諦めるのか?
何もせず失うことを是とするのか?
[男は挑発するようにディークに問う]
皆が笑って暮らせるように、って、それが望みだったろう。
…だけど、おまえが居ない世界じゃ、俺は笑えない。
[応えの返らないコエは虚しく響く。
世界がまた一段と昏くなる。]
[魔王様やシメオンがニンゲンの素体を好むのは、
その煌いた魂の価値の高さゆえかもしれない。
双子はやっとそれを知った。
…そういった感慨を口にすることは勿論ないけれど、でも]
あのさ、皇子サマは――すごく強いヒトだね。
最後まで、あんなに…。
『もっと、おしゃべりしてみたかったわ』
[しんみりヨセフに呟いた*]
― 回想 ―
[軍学校の寮では、野営の訓練も兼ねて、生徒自身が食事を作る期間があった。
家では母親に任せきりだった、とか、料理人を抱えている良家の坊ちゃんの料理はさんざんだったりする。
そんな中で、ロー・シェンとディークの料理は、すこぶる評判が良かった。
スパイスを効かせた保存食中心のローグ料理と、新鮮な野菜がメインの教会料理を、ブレンドしてみようか、と誘ってきたのはロー・シェンの方だったと思う。
今でも、後輩たちにそのレシピは引き継がれているはずだ。
もっとも、オリジナルにはとうてい敵わないだろうけど。
国を出て、残念だったことのひとつは、ロー・シェンの手料理を食べられくなったことだった。
旅の途中で、ローグの民と会って食事を相伴して、懐かしさに泣きそうになったこともある。
ユーリエ姫には「スパイスの塊を噛んだ」と言ったのだけど、静かな微笑を浮かべた彼女は見抜いていたのかもしれない。
余談だが、双子は手持ちの品とスパイスを物々交換していた。
翌朝、宿で飲んだ茶にディークは激しく咳き込んだ。*]
………あぁ、彼は 強い。
強くなった。
[5年前のあの日から、格段に]
話してみたかった、か…。
───必ず叶えてみせよう。
[ロー・シェンの言葉を信ずる男は、しんみりと呟くローレル達に誓うように紡いだ*]
ローレル、ローズマリー。
……ミュスカの森のエルフの郷が、壊滅したそうだ。
[そ、と双子にコエを送る。
彼らが為したこととは知らず、案ずるように]
[モーザック砦で指示してきたあれこれは、心配していなかった。
ヨセフならば活用できると思う。
気になることがあるとすれば──今しがた現われた双子のことだ。]
単刀直入に聞く。
そのエルフの双子は、モンテリー王国の密偵か。
[双子は息子の友人、と語るヨセフの声に隠し事の気配はない。]
そうか。
密偵であったなら、いろいろ視界が開けるような気はしたんだが。
彼らは、俺とユーリエ姫の旅の道連れでもあった。
あの時、何があったのか聞ければ、あるいは──…
[いささか歯切れ悪く言葉を泳がせた。]
ともかく、二人してどこにでも顔を突っ込みたがる。
目を離さないことだ。
確かに彼らは行動力もあり、機転も利くが…。
密偵をさせるとは考えてもいなかった。
[それは偏に男にとって彼らが保護の対象であるからだろう]
……旅の道連れ?
[歯切れ悪いディークの言葉のうち、引っ掛かりを覚えた単語を繰り返す。
彼とローレル達の間に繋がりがあったことも驚きだが、ユーリエを攫ったはずの男が”旅の道連れ”と何気なく言ったことが男の中で強く引っ掛かった。
ディークの手腕や彼のロー・シェンへの想いは認めつつあるが、ユーリエの件はまだ許してはいない]
[けれど彼の忠告は尤もだとも思う。
何せローレル達は砦に撤退せず戻って来ていたのだ。
心配だからとは言われたが、今後も似たようなことが無いとも限らない]
…承知した。
常に傍に、とは行かないが、なるべく目を離さないようにしよう。
[世話や護衛名目で兵を傍につけるという手もある。
男の縁者だと言えば、多少の無理も通ろう。
そう考え、ディークの忠告には是を返した]
[ヨセフが、ディークの発言の中の何かにひっかかった様子を見せた。
意識していない部分だったから、少し身構えてしまう。
ユーリエの名が両者の間に苦いものを蘇らせたのはしょうがなかった。]
あの双子の見張りをきっちりできるヤツがいたら、それこそ密偵に抜擢してやるといい。
[自分から求めておいて、小憎らしい口を叩くのは相変わらずだ。
警告を入れてもらえて嬉しいものを。*]
[ユーリエの件は、今はそれ以上言わないことにした。
今やるべきは別にある]
……違いない。
[双子の見張りについてを言われて思わず納得するコエを零す。
少しだけ、笑う気配が乗ったのは至極納得したことの現われだった*]
― 回想 ―
[軍学校に入って間もなくの頃だ。
上級生たちがロー・シェンを学舎の裏手に呼びつけた。
”菓子代”を貢がないのが気に食わぬ。皆と異なるその肌の色が目につく。人気があるのが許せない──
ともかく目障りだというので、ヤキをいれておく目的である。
「特別に課外訓練をしてやる。10対1だが、実戦ではそんなことはいくらでもあるからな」
威圧的な笑みを浮かべて包囲を狭めるリーダー格の上級生の顔に、
横合いからバケツ一杯の水がぶっかけられた。]
10対1の状況にしてしまうのは、基本的に指揮官の怠慢というものだけども、
今回の場合、愚行をおかしたのは先輩たちですよ。
とりあえず、10対2に訂正してもらいましょう。
[空になったバケツとモップを携えて歩み寄ったディークに、ロー・シェンは屈託のない眼差しを向ける。
「どうしてモップとバケツ?」と笑い出しそうなロー・シェンに、
間に合うように一生懸命走ってきたのだとか、途中でそれしか入手できなかったのだとか、おまえが心配だったとか、言えるわけないだろ ]
[魔軍の進軍が始まる前、砦での指示が一段落した頃。
男はあることを確かめるため、ローレル達へとコエを向ける]
…ローレル、ローズマリー。
君達は、ディーク・オラクルと…ユーリエ姫と共に旅をしていたと言うのは、本当か?
もし本当であるならば……
彼が、ユーリエ姫が、どんな様子で旅をしていたのか、教えてはくれまいか。
[ディークは双子も旅の道連れだったと言った。
それならば旅の様子も知っているだろうと。
それを教えて欲しいと男は願う*]
― 回想 ―
[何度か双子を屋敷へと招くようになった頃。
ローズマリーは妻と、ローレルは男と長男と共に時間を過ごすようになることが度々あった。
ある時、普段は服の中に隠してあるカメオが襟元から零れてしまい、ローレルや長男から、なんだなんだ、と覗き込まれたことがある>>1:117]
ヴェルザンディを象ったカメオだよ。
私は度々屋敷を留守にすることがある。
それが長期に渡ることも少なくない。
だから、彼女と結婚する時に互いのカメオを作ったんだ。
いつでも共に在るという誓いを形にするために。
離れることが寂しくないわけではないが…彼女が待っていると思えば私も頑張れる気がしてね。
……なんだか恥ずかしいな。
[照れながらも話す男の表情には柔らかい笑み。
惚気と言われてもおかしくない姿だった]
今はロヴィンも居るし、君達も居る。
ヴェルザンディも寂しくはないだろう。
[感謝している、と双子に告げる。
以前よりは安心して屋敷を空けることが出来ている、と。
双子に信頼を置く言葉をローレルへと向けた]
ここを君達の家だと思ってくれて構わない。
私達は君達を歓迎する。
[双子らは時折姿を消すことがある。
それは彼らの自由、止めることはしない。
けれど戻って来た時にはいつでも訪れてくれと、そんな想いを告げた**]
ヨセフ、そっちは大丈夫かい? 今どこに。
『上空からも魔軍が攻めてきたの』
[嘘の報告を混ぜつつ、ヨセフの居場所を探ろうとする]
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