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楽しそうですね。
[視線が通った気がして呼びかけた。]
このままあちらの旗艦の後ろで体当たり、は私の方が一方的に負けるのでやめておきますよ。
美味しいところはあなたにおまかせして、嫌がらせに徹しておきます。
おまえの采配なら、艦同士ですれ違い様に手を伸ばして乾杯だってできるだろうよ。
期待している、 この戦場を俺の翼がどう飛ぶのか。
あなたほど華やかにとはいきませんが
翼は翼らしく戦場を飛んでみせますよ。
ふふ。乾杯は、帰ってからにしましょう。
先日、ザイヴァルの司令官室に、20年物の白を隠しておいたのを思い出しましてね。
ルッツ…、
これを知らせねばならないことを残念に思う。
──レディ・アンディーヴが亡くなった。
同伴した二船もろともタクマ・ナギ大佐の率いるウルケル軍船に沈められたとの知らせが届いた。
は、 ……
[応える声は途切れた。
暫しの沈黙を挟んで、揺らぐ声が落ちる。]
そう、 ですか。
彼女が …。
[少しの間、混乱した思考の波が続いた。]
[ルートヴィヒの揺らぐ声を見守る。心だけ傍にいる。]
恨むまい、だが 忘れるまい。
シコンへ戻ったら、街をあげて葬儀を執り行う。
今は──彼女が望んだ「勝利を見せてくれそうな人間」になることに専念する。
俺を扶けよ。
[あえて気持ちを押し込めて告げた。]
はい.……はい。
[並べられる今後のこと。
示される意思。
自らを繋ぎ止めるよう声を手繰り、引き寄せる。
そして告げられた命に、は、と息を吐いた。]
[敵の増援に対すると告げる声。
それがいつもより抑揚なく聞こえるのは、油断のならない敵艦の数ゆえではないとわかっている。]
任せた。
[変わらぬ言葉を短く、送る。]
そろそろ弾薬も心もとない。
天気も崩れそうだ。
引く頃合だろうな。
ということで、提督に挨拶に行ってくる。
可能なら、シコンに同道願うつもりだ。
[他の者なら脈絡を掴みかねるだろう計画を、さらりと投げた。]
─── トール。
[張りつめた心に、さっと日が当たる。
そんな感覚で、声が心に触れていった。]
…そうですね。
気持ちよく勝利、とはいきませんでしたが、
初戦はこんなものでしょう。
………… はい?
[さらりと言われた言葉に、一拍固まる。
自分でさえ即座には脈絡が見えなかったが]
……ああ。
わかりました。
逆にお誘いし損ねて、あちらの首都にご一緒することにはならないでくださいね。
[苦笑まじりに行ってらっしゃいと告げた。]
[自分が、敵を数で凌駕する圧倒的勝利の光景に囚われていたように、ルートヴィヒもまた暗い情念に囚われているようだ、と感じる。
演習や模擬戦は何度も重ねて来た。が、彼にとってこれは戦死者を伴う初の実戦だ。
そして、帝国兵に留まらず──散った花がある。
ルートヴィヒは冷徹なようでいて感情の起伏が激しい。出会いの時にそう思ったし、それが好ましくもあったが、
今、彼の心は実際の海より荒れているはずだ。
それには直接触れずに、アレクトールはルートヴィヒの揶揄まじりの承諾に答えた。]
俺らしくやると決めたら、ふっ、と視界がクリアになった。
どれだけ狭窄視野になっていたか、その瞬間にわかった。
[だからおまえも、自力で立て直せ。
俺がそう願っているのだから。]
ああ、首都入りするときは「俺が決める」
[実際、ゲオルグが皇帝を斃せば決着がつくと狙撃兵でも用意していたら危険なことこの上ないのだが、そうはすまいという信がある。]
シコンへ戻る際は、おまえに殿軍を任せるぞ。
[普段から顔には出さないようにしているが、
自分が感情に流されやすいのは自覚している。
自分を良く知る人間にはそれを見抜かれているだろうし、
トールは、自分を良く知る人間の筆頭だ。
見透かされている。
触れてくる声の温度がそう告げる。]
── だからあなたには敵わないんですよ。
トール。あなたは自ら輝く星で、
私は、闇夜は飛べない翼です。
[わずか、自嘲のいろが漏れたが]
……ですが、
あなたが道を照らしている限りは、
私はどこまでも飛べます。
照らす人が無軌道すぎて、
追いかけるのも一苦労ですけれどもね。
[小さく笑う声に、影はない。]
あなたに置いてけぼりでは格好がつきません。
ちゃんと追いついて、追い越しますよ。
[自分にはできるはずだ。
信じてくれる人がいるのだから。]
ええ、お任せください。
うるさい連中は全部追い返してやりましょう。
[殿軍を請け負って、大口を叩いてみせた。]
巡洋艦二艦、そちらに抜けます。
[短く報告を入れたあと、溜息の調子で付け加える。]
ほんとうに、戦場では何が起こるかわかりませんね。
私も、まだまだのようです。
承知した。 巡洋艦2隻くらいで覆させはせん。
ふ、ウルケルにもヤンチャなのがいるのか?
[ルートヴィヒか抑え切れぬとは。
溜め息の気配に、特異な動きで撹乱されたのだろうと察して問う。]
突発事項に慣れたいなら、手伝うぞ。
[俺といれば鍛えられる、と自覚的に。]
ヤンチャというか…
あれが単なる間抜けならいいのですが。
[読み切れぬのがもどかしい。]
……突発事項は、あなただけで十分なんですよ。
[トールの言動には慣らされてきたんだと主張しておいた。]
あなただけでいい、という台詞は普通、もっと甘い響きを伴うものだと思っていたが。
っと、旗艦の艦橋が破壊されてしまった。
俺は無事だが。
帰路は後部艦橋からおまえの殿軍を眺めるとしよう。
私から甘い言葉を聞いて嬉しいですか?
[反問は氷点下の響きを帯びたが、続く言葉には息を呑んだ。]
………。
まったく、あなたは。
ええ、ご無事ならなによりですよ。
[取り乱しかけたのを、取り繕う。]
こちらは、巡洋艦と戦っていると思ったら、
一隻、戦艦が混ざっていたようです。
あちらも、なかなかに意表をついてくれますね。
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