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[緋色の蛇を乗せて、天使は真昼の星となる。
暖かな光を曳いた流星は追い縋る魔物たちをはるかに引き離し、黒くそびえる結界へと到達した。
天使の翼の間で蛇もまた皮翼を広げ、尾を激しく打ち鳴らす。]
(あそこだ。わかるか?
少し右の上のほう、薄い場所がある。)
[天界のほころびを見つけたのと同じように、蛇の目は結界の弱い場所を見出して天使を導いた。
心を添わせ気を通わせ、己と伴侶の力を一つにするべく意識を研ぎ澄ます。]
[ギィが背中から指示をして導いてくれた。
結界の綻び。
風を薙ぐ対の皮翼が鯨波の声のごとく唸る。
すい、と槍を構えて、螺旋の気の通り道を作った。]
── ゆこう。
[伴侶に呼びかける。]
( ゆこう。
オレたちの場所へ )
[帰るのだという意思が蛇に赤い気迫を纏わせる。
翼の間から槍持つ腕へと移動した蛇は、そのまま槍に巻き付いて鎌首を持ち上げた。
牙を剥き、首をしならせ、背から首筋へと力を伝わらせて、獲物に飛びかかるように気を吐き出す。
深い赤色は陽光の色と混ざり合い、闇を射る曙光の輝きとなって真っ直ぐに結界へとぶつかり、弾けた。
短いが眩い小さな爆光が収まったあとには、結界の一部が吹き飛んで穴が開いている。]
[蠢き揺らぐ結界が穴を修復するよりも早く天使と蛇は細い通路を潜り抜けて、広い広い大空へと飛び出した。]
( よし!
このまま南へ行こう!
オレの国まで、ひとっとびだ! )
[笑いの波動を響かせて、蛇は明るく思念を放つ。
この先、なにが前に立ちはだかろうとも、全て砕いてみせよう。
愛しき天使と共に、どこまでも飛んでいくのだ]***
[共に力を合わせて未来への道を切り拓く。
そのまま果てのない空へと羽搏いた。
背に歓喜の声が踊る。翼が光りさざめく。
南へ、と明るい思念が促した。
愛は翼を速く軽くする。
ふたたび接吻けを交わすまでの時間を縮めたいと。]
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