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―暁闇―
[あむ、息を潜めてピンと立った耳を食む。
なんて、旨そうな耳だろう。
――ごくりと唾液を嚥下する音が、ゲルトの鼓膜に伝わるか。
抵抗されただろうか?
けれど、その動きは直ぐに眠りの奥へと搔き消されていくだろう。
弓なりに撓らせた口角から、朱の雫を垂らす。
左耳を堪能した後、ゲルトの身をほらあなへ
――シェイとローゼンの傍へと、運び込んだ。
ゲルトには、誰が狼なのか、
きっと気づかれたに違いない**]
[ゲルトの耳をどの程度齧ったのかは覚えておらず。
一番よく知っているのは、ゲルトなのかもしれない。
うさぎは何の力も持っていないけれど
舐めることで傷を治すことができるらしい――
他のうさぎに舐めて貰えば、再生も可能なのではと
ほらあなを抜ける前に拡げた思案がひとつ、零れ落ちた*]
[驚きと、痛みと。
次第に全身へ巡るであろう、深い快楽と睡眠の波。
そこから来る恐怖と、未知への好奇。
ゲルトが発した甘い吐息を、褐色のオオカミは知っていた。
ずっと昔の、遠い記憶。
『かじって』 『もっと、食べて』
『深く』 『より深く』]
[褐色のうさぎは、激しくかぶりを振る]
やめ……、やめて、
やめて、
░▓▒!!
[悲鳴は生温かな洞穴の、ずっと奥まで残響を、残した**]
[彼方の記憶に押し潰されそうになったのは
褐色のうさぎか、褐色のオオカミか。
解らずも、誰かの気配を傍近く感じれば
苦渋の表情はすう、と冷静さを取り戻し]
やあ、ゲルト。
君の耳は舌ざわりが良くて旨かったよ。
もうすぐ君にも、この味の良さが解るようになる。
[このほらあなが、うさぎ達でいっぱいになれば。
疎まれ排除されるべき存在でしかない自分にも
仲間が、できるのだ。
ゲルトの背後に小さなうさぎの姿を見つけ、
固く瞼を閉ざした]
それまでの間、このほらあなで
のんびりと待っていてくれればいい。
逃げようなどと、考えない事だ。
[褐色のオオカミは渇いた笑い声と共にそう告げ
ほらあなを出て行った*]
[おそらくは何故「自分が襲われたのか」であろうけれど
ゲルトの小さな呟きを聞く権利は、自分には無かったと
褐色のオオカミは渇いた笑いをひとつ零し
闇の中で瞼を閉ざした。
誰かと床を共にしているはずの自分が
何故、うさぎ達を襲えるのか
自分にさえ、その理由は解らぬまま。
今夜は、ルートヴィヒの作ったホワイトシチューとブレッド。
洞穴へ差し入れたのは果たして何時の事だろう*]
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