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[ たたかえ と、繰り返す声は、魔にとって不快ではない。
小煩くはあるが、魔が生じた場所ではよく聞く呪詛や怨嗟と同程度のものとして、意識の外にあった。
それよりも魔を苛立たせるのは、欠如の感覚だった。
己に足りないものがある。あるべきものがない。
それが何かわからない。
記憶の封印、認識の阻害という形で、"目"はこの魔を操ることに成功している。
これまでに得たもの(あるいはこれから得るもの)を見失わせれば、魔の本質として破壊と闘争に向かうのが必然であった。]
[たたかえと繰り返す声の反響が減ったのに気付いたのは、しばらく後のこと。
声を受け取ったものたちの、山彦のように繰り返す声がない。]
静かになったな。
[ひとこと感想をこぼしたが、それ以上の興味はなかった。]
……へ?
[不意に聞こえた声>>*1に、惚けた声が落ちたのは条件反射。
言われてみれば、あちこちから響いていた声が聞こえなくなっている]
……あー……。
まぁ、別にいいけどやぁ。
[「たたかえ」、という声は相変わらず響いているから。
自分的には、あんまり大きく変わった感じはしない、ともいう]
なんだ、残っていたのか。
[別の声が返ってくるとは思っていなかったから、軽く驚いた声を出す。]
その声は、あれか。騒いでいた奴か。
声がしなくなったから死んだかと思っていたが。
残念だな。
死んでいれば、我が城塞の、最初の糧にしてやっても良かったものを。
[皮肉でもなんでもなく、栄誉を受けられなくて残念だったな、との声音である。]
……残ってて悪いか。
[これはあの、突っ込み入れてきた声か、と。
そんな事を考えながら返す声音はどこか拗ねたようなもの]
そう簡単に、死んでなんかられん。
……ぼくは、あん時に『生きる』て決めたんやから。
[それがいつだとか、そんな事は埋もれている。
そしてそれを思い出すより先に届いた言葉は色んな意味で理解が追いつかなくて]
……ナニソレ。
死んでたら、って、あんたの城、魂でも喰うの?
[それどんなお伽噺のバケモンよ、とか。
ほんの一瞬だけ思ったのは已む無しか。
響きが本当に残念そうな辺り、冗談じゃないような気もしたが]
[人間の意地も決意も塵芥程度にしか思っていなかったが、言い返してくる声の調子には興味をひかれた。]
『生きる』か。
一度、死の匂いを嗅いできたか?
[そういう人間は面白い。
弱いくせに、妙に強くなるものだ。]
ならばせいぜい生きるのだな。
半ばで死んでも我の城に喰らわせてやるから安心していいぞ。
[疑問をあっさり肯定しつつ、どんと任せよ、とでもいう感じで請け負っておいた。]
死の匂いとか、よく、わかんねぇけど。
……なんもなくなった時に。
『生きる』のだけは、諦めない、って。
そう、決めたんや。
[それを導いてくれたひとの事は、浮かんで沈むを繰り返す]
……てゆーか、それ。
安心していいとこなん……?
[物言いがこう、自信たっぷりな感じだから本気で言っているんだろうけれど。
そこは安心しちゃいけない気がした]
[面白い。
こういう、生きることに執着する手合いは、良い玩具になる。
あいつならば、いい人形に仕立てただろうに、
───と想像し、あいつとは誰のことかと、自分で不審に思う。]
…おまえが何をどう決めていようと我は構わんが、
諦めぬということは、なかなかに苦しいぞ?
おまえたちの心はすぐに揺れるからな。
逃げたくなったらいつでも言え。
我が、いつでも踏み潰してやる。
[それでも折れず曲げず諦めず、向かってきた者がいた気がした。
小癪で、許しがたく、だが妙に気にかかる人間だったはずだ。
胸の中央がずきりと痛んだ気がして、不愉快だった。*]
[面白い、と思われているなんて知る由もなく。
向けられる言葉は現状、ぴしぴし刺さるもんだから、一瞬言葉に詰まった。
まあ、詰まった理由は、突然かさましした頭痛のせいもあるけれど]
……なるべく、世話にならんようにするわ。
[踏み潰されるのはちょっとやだ。
そんな思いが滲む声が、ぽつ、と落ちた。*]
たたかえ
たたかえ
たたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえ
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