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不思議ですねぇ
わたくしはお嬢様のお姿をくっきりと覚えておりますのに?
それを表現しようとするとするりと…まるで板の隙間から溢れていくようですよ
ええ、ええ、私もなのです。
今にも目の前に飛び出してきそうなお嬢様のお姿。
なのにどうしてだか、他の方へお伝えできなくて。
…お嬢様に何か、魔法をかけられてしまいましたかね。
おや、ソルもでしたか?
これは…実に困った悪戯なことですよ
それとも、
わたくしたちが覚えているものと思っているこそが魔法で──
なぁんて、ふふ、悲しい物語を想像するのはやめておきましょう。幸せな結末でなければおしゃべりの喜びもございませんものね
お嬢様一流のクイズ遊びに、わたくし達が簡単に答えをバラしてしまっては「つまらないわ」というあたりでしょうか
お嬢様という曖昧……
ははぁ、見事に霧を晴らしたお客人にはとびっきりの賞品を用意しなければならないかもしれませんね?
――ほんとうに。
……もしもそうだったら、どうしたら良いのでしょう?
わたしも貴方もずうっとここでそうやって暮らしてきて。
今更魔法が解けてしまうなんて――
ふふ、そうですね。
少なくともお嬢様は、バッドエンドはお嫌いでしたから。
ちょっとむずかしすぎる仕掛けを、施しただけに過ぎませんね、きっと。
とびっきりのお茶菓子!
これに勝る賞品はございませんよね
しかし、なんだか
これではまるで、執事ではなくてお菓子やさんとして大活躍のようですね?
ええ、ええ素晴らしいことでございますけれど!
ああ、ああ、やめてください。
お嬢様にそういってからかわれたことを思い出して…
…わ、私だって、執事らしくあろうとしているのですよ?
ただお嬢様がこういったことがお好きでしたから…
[もごもご]
…
おや…
これはひょっとすると、「言わないお約束」と呼ばれる類の何かでございましたかね
ははぁ、まさか、いやいや
…ごほん、
そのように気にされることはございますまいに
お嬢様やお客人の胃袋をがっちり掴むのも優秀なる執事殿のお仕事でありましょう?
…ふふ、ふごほんうぉっほん!
笑っておられる。
[ぷすん]
ええ、ええ、いいのですよ。
うだつが上がらないのは初めからです。
…さて、焼き菓子は整列しましたが……
はて、何か物音がします?
[░▓▒▓█▓░░▒▓█░▓▒]
─ 14(6x3)分後 ─
はあ、失礼いたしました
ええと…なんでしたっけ?
そうそう、お嬢様とフィオン・ゲイルがよく遊んでおられたボォドゲームを覚えていらっしゃいます?
あれを……
どうやら屋根裏から見つけだしになられたようで
それで、ええ。ちょっとした鬼ごっこが始まっているのでしょうね
わたくしの廊下がムズムズしっぱなしですもの
[軽い溜息]
……壁がビリビリしてらっしゃいますからね。
笑ったのは、わかりますよ?
[謎の物音には引き続き耳をすませて]
おやおや、姿が見えないと思っていたら。
懐かしいものを取り出していたのですねえ。
さっきのお嬢さん方でしょうか?
鬼ごっこ…………?
まさか……
駒が逃げ出して?
ええ
逃げたのだか追っているのだか
それとも単にかけっこして遊んでいるのかもしれませんが
あれが箱から出されたのは、たぶん随分と久しぶりなのでしょうねぇ
この機に運動不足を解消しようというのでしょう
お嬢様の躾もあの駒達にまではなかなか行き届きませんで
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