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オクタヴィアスは、
あいつ、あんなにチビだったのにな。
[チャールズが守る砦を、今も激しく攻撃しているだろう彼に、暫し思いを馳せる。]
それなら一度会ってみたいけど、
……許してくれないだろうなあ。
[チャールズの評>>*14に、なにを、が曖昧な感慨を呟いた。]
― 閑話/回想 ―
[起て。と、男が口にしたことはない。
態々そのようなこと口にする必要もなく、男自身の意思は伝わっていただろう───と、思う。
何故ならば、男はダンクラードに対し父のように振舞うことありといえども、臣下としての礼、立場。
それらを崩すことは一度たりとてなかったのだから。
ダンクラード…例えディーンと名乗り、そう呼ぼうとも、彼は正統なるラモーラルの主であり男の戴く主でもある。
主たるものは臣下の敬意を受けると同時、その敬意に値する力量と覚悟を示し続けられる存在であらねばならぬ。
彼にはそれだけの器量がある。
男はそう思っていた。ただの贔屓目ではないと思う。
彼がただ領主の息子として産まれたからというだけでない。
彼がそれを自覚し、己を創り上げてゆくさまを。
太陽の如きに明々と魂の輝くさまを。
身近に見てきたからこその感想である。]
[起て。と、男が口にしたことはない。
ダンクラードは領主の息子として生を受けた。
けれど今は、平原や森の民と共に暮らす少年である。
森のおばばの託宣はある。
地の柱との言葉は聞いた。そうかとも…そうだろうとも思う。
…けれど。
けれどもし彼が起つならば、行く手は血に覆われるだろう。
ラモーラルの同胞の血に、その手を浸さざるを得ないだろう。
───させたくないとの、思いがある。
ただの、”父親”の感傷である。]
[男も元は軍人であった。
だからこの手で武器振るったことも、人を殺めたこともある。
最初に人を殺めたときの、身震いするような思いも遠く覚えてる。
それからもう、その何倍も何十倍もの人間を死に追いやってきた。
それに嫌気が差すほど繊細でもなかったが、…それを良いものとするほど鈍くもなかったつもりでもある。
”息子”に、そんな思いはあまりさせたくないなと思った。]
― 決起の前(回想) ―
[決起のどれほど前のことだったか。
定かではないが、男はディークとラモーラルについて言葉交わしたことがある。
無論それが最初ではなく、何度目かの、日常的な会話の延長といった趣ではあったが。]
そうですな…。
ノイアーは、確かにこの国に平穏を齎しましたな。
[淡々と事実を口にする。
彼が辺境伯に納まったことによりウェストマールの脅威はひとまず除かれ、ラモーラルは戦火に攻め滅ぼされることもなく、平穏の中にあるように見える。]
だが───…、
[けれど、と。男は僅かに視線を落とす。
その平穏から零れ落ちていくものがある。
鈍い軋みは一見塞がれたように見えても、未だ閉じていないように男の目には映っている。]
… ラモーラルは、緩やかに死につつあるように儂は思う。
あれもまた、あれの信念に従ったのでしょう。
ディーク様。
儂はノイアーが、単に己の私欲の為に、
貴方のお父上を弑したのだとは思わん。
───だが。正しいことをしたとも、やはり思わん。
…。あれは民を戦火から守ったつもりでいるでしょう。
それは一面、正しくもある。
だが。
あれの成した結果、ラモーラルはウェストマールの地方になった。
ラモーラルに根付いてきた民を切り捨て思想を捨て、ラモーラルはやがて、ウェストマールのただの田舎の一地方と成り果てるでしょう。
その時にラモーラルは死ぬと、儂は思う。
[深く静かに息を吐く。
それでもそれで良いのだと、かつての友は言うのであろうか。]
ダンクラード様、目を曇らせずに開いておかれませ。
何が正しいのか何が良いのか、じっくりとご自分で見て考えておかれませ。
人には各々の正義があり、
各々、己の信じる道を行く───…人も、国も。
そうして動いていくものです。
[男は口を閉ざして、主と仰ぐ若者へと目を向けた。
彼が背負うものは彼だけの背に負わせるには、あまりに重い。
その重みに縛られぬようにとの願いは、音に出さずに胸に*沈めた*]
― 起つを決めた日(回想) ―
[起つ。
告げたのは、その言葉だけだった。
厳しくも忠実に守り扶けてくれた臣に手を伸ばす。
森の中よりついて来てくれた漢に手を伸ばす。
触れた先で響き合うのは、あの日の赤い都城。
燃えあがる炎に呑まれんとする光景は、
やがて旭日に映えて輝く城の姿に変わる。
炎の中より生まれる、新たな力強い姿へと。]
おまえたちの力、存分に揮ってくれ。
[待たせた、と。微かに唇が告げた。]*
[起つを決めた心の中には、いくつもの言葉があった。
何かの折に、チャールズと交わした言葉もそのひとつ。]
ラモーラルが死ぬのか?
[言葉を拾って、目を開いた。]
[ラモーラルは、今は穏やかに時を刻んでいるように見える。
人々は、父が生きていたころと同じように過ごしていて、
この平穏を壊すことなど望んでいないのではないか。
そんなことを思っていた矢先だ。]
… 死ぬのは、嫌だな。
[本当は気づいていた。
何かが失われつつあることを。
守り受け継がれてきたものが、削られつつあることを。]
[常に傍らにあるこの男が、自分を主と仰いでいることはわかっていた。
ラモーラルの新たなる主であるという自覚は、あの時>>40からいささかも鈍っていない。
主と仰がれるならば、主たらねばならない。
生まれへの誇りと臣たるものの視線が、青年に上に立つものとしての意識を育ててきた。]
俺が、信じる道は───
[見えていた。
けれども、踏み出す勇気が無かった。
あの時は、*まだ*]
―――ったく。
お前さんは無茶ばっかりしやがって。
[>>*37 先程響いてきた決意に違わぬ行動に。
苦笑交じりの言葉を漏らして。前を見る。]
早く来ないと、と言ったのはおまえだぞ、マーティン。
[冗談の言葉を引っ張り出してきて応える。
身を案じてくれる心は有り難いと思いつつも]
このくらいの無茶を通せなければ、
この先、なにも為せやしないさ。
[ここで倒れはしないと、意思を燃やした。]
…────、
[声の飛び交う間、男は少しの沈黙を保っている。
察するに、どうやらそろそろ大詰めというところか。
ならば殊更声をかけるのも邪魔と思えた故ではあるが、]
……まったく、どちらも。
[やれやれと実際に見据えているのはオクタヴィアスだ。
あれもまあ、無茶といって差し支えはないと思う。]
オクタヴィアス殿も御自ら砦にいらっしゃいましたぞ。
ゆっくりと持て成したいところですが──…
… あまり、茶菓子も用意出来ませんでなあ。
[時をおかずして、この砦は彼に抜かれるであろうと。
そんな言葉で、今この時を彼ら二人へ伝えおく*]
がっはっは!!
そう言えばそんなことも言ったけかぁ?!
[>>*39 冗談を引っ張りだされて切り返されれば、豪快に笑う。
まだ冗談を言えるだけ――――此方は大丈夫だ。まだ戦える。]
おう、そうさなぁ。
若はまだまだやるべき事があるんだからなぁ。
こんな所で倒れるような、軟に育てた覚えはねぇぞ!
[闘志を燃やす様子には、力強く頷いて。]
[距離超えた場所より届く声に、一瞬ぎくりとする。>>*41
もう仕方ない。
げんこつ喰らっていたときの、これも条件反射だ。]
無茶じゃない。
…あ、いや、通すべき無茶だ。
[軽く狼狽えた口調で言い返してみたが、
そんな呑気な会話はいくらも続かなかった。]
オクタヴィアスが、自分でか?
[そんな奴だっただろうか。
いや、昔から負けず嫌いな奴だったなと思い直す。
そして伝えられる状況に表情を引き締めた。>>*42]
なら、ますます無茶を通すしかないな。
[オクタヴィアスの率いる兵がここへ到達する前に。
きり、と歯を噛みしめる。]
マーティン。
[いつもの、豪快な笑いのあと>>*43、告げられる言葉>>*44
何故かそこに、父の最後の言葉と同じ深さを感じて]
───わかった、待ってる。
けど、長くは待たないぞ。
[強いて、笑みを加えた。]
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