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― 出撃前 ―
万人がそうできるとは限りませんけれどね。
トール。だからあなたは、
……私を不安にさせる。
私の理解を、軽々と超えていってしまうから。
― 出撃前 ―
不安、
[聞き慣れない告白を聞いた気がする。]
…あるだろうな。 俺も同じだ。
おまえを囲いきれないもどかしさがあって、焦れる。
そういうもんだろう。
そのままでいい。 見たいだけ見せてやる。
― 出撃前 ―
[同じだと言う声が、すとんと胸に入った。]
……囲いきってしまったら、飽きるでしょう? あなたは。
[ああそうなのかと納得する。
自分たちは同じで、正反対だ。]
― 出撃前 ―
ああ、
不安だろうが何だろうが、俺はおまえを連れて行く。
[ルートヴィヒに望まれる。それはきっと実現する。]
“小鴉”を見ていて思うんだが、
天職にある人間の発揮する技量は、傍から見たら超能力並みだ。
おまえも、ご多分に漏れず、な。
[扶翼として、彼が当たり前にしていることがどれほど特殊な王佐の才なのか気づいていないだろうルートヴィヒに告げるのだった。]
― 出撃前 ―
ええ。
どこまでも、共に。
[それは、あの日に交わした誓い。]
……そうですか?
確かに、"小鴉"の中には天賦の才を持った者がいくらもいますけれど、私など器用なだけで平凡な人間ですよ?
[嘯く口調で言ってから、どこかはにかんだような顔をした。]
あなたがそう言うのなら、自信を持っておきます。
私からは言わなくてもいいですよね?
あなたの天職は、こうして人を引っ張っていくことだ、ということなどは。
[あなたがしていることも超人並みですよ、とは言わずに、そんな風に付け加えた。]
[ルートヴィヒの誓いの言葉はいつでも胸を優しい水で浸す。]
世界でただ一人の扶翼官には比較対象がないから、おまえが自分の才に無自覚なのも仕方ないな。
で、自覚的に紙一重な俺の作戦だが。
何かつけ加えることはあるか。
[横陣に並べた駒は、敵艦隊の動きに応じて右にも左にも前にも広がる。]
同航戦に持ち込むのが有利だろうな。
[そう言うのとは裏腹、カツリと旗艦同士をぶつけてみた。]
私を褒めても自信しか出てきませんよ。
……で、自覚的だったんですね。
その作戦が際どいのは。
[じと、と一度見てから海図に視線を落とす。]
そうですね。
あえてこの陣形を選択するのですから、
利点を最大限に活用するなら──
[言いかけて、かちりと音を立てた駒を見て、零れるように笑った。]
……ぶつけてください。
[艦による体当たり攻撃。
多分それは、100年後の今でも有効だ。]
― 出撃前 ―
[ルートヴィヒの朗らかな笑み。
やはり以心伝心であったのだろう。]
その機を作り出せたならば、俺の艦隊指揮は提督を凌駕してるってことだ。
[そして、帝国艦隊の布陣は各艦隊に伝えられることになる。*]
― 出撃前 ―
御意のままに。
やってみましょう。
[彼が望むのならば、それを実現させるのが自分の役目だ。
ビジョンを形にすべく、動きだした。*]
奇妙な陣形ですね。
[それが、ウルケルの布陣を伝えられての素直な感想だった。]
本当に…戦術書通りに行かないのは、
あなたも海軍司令も同じなようです。
本当に、困った人たちだ。
なにを仕掛けてくるのか、まるで読めませんのね。
あるいは、乱戦をもくろんでいるのかもしれません。
お気をつけて。
[直接旗艦を狙う。
懸念が改めて頭をよぎったが、それもどうも違うような感じが何処かでひっかかっていた。]
困ると言いつつ、疼いているのが目に浮かぶ。
おまえは素直じゃないからなあ。
[そこがまた愉しいのだと含み笑い。]
実戦はストラテゴの駒とは違う。
せいぜい勘を働かせるさ。
素直ですよ?
こんなに素直に困ったといっているじゃないですか。
定石の通用しないものは、頭の働かせ甲斐がありますが。
[指摘されて、笑みの気配を返す。]
ストラテゴと違って、相手の駒が見えていますからね。
惑わされないようにすれば、なにも恐れるものはありません。
惑わされぬように、か。
問題ない。
[むしろ気にしなさすぎで怖れ知らずかもしれないが、そんな風に大胆に振る舞えるのも、扶翼官を信頼しているせいである。]
あまり自信満々でいると、足元を掬われますよ。
あ…いえ、
[釘を刺したが、すぐに言葉を翻す。]
あなたの強さの源は、その自信でした。
どうぞ存分に、蹴散らしてきてください。
[それで足りない部分は自分が補えばいい。
今までそうしてきたし、信頼されている実感もある。
思うがままに走る彼の横を行くのは、魂を熱くする経験だ。]
トール。
南東よりもう一隊来ます。
[情報を共有すべく声を送る。]
こちらで対処するつもりですが、
現れても驚かれないよう、お知らせしておきます。
リオレ島方面ですが、リオレの港から出たわけではなさそうですね。
もう少し北寄りの航路です。
[報告の言葉を加えてから、首を傾げる。]
トール?
どうしました?
[声が届いて、口をつぐんだ。
少しの間、思考を閉ざす。]
速力を考えると、彼女はもっと先へ進んでいます。
交戦の形跡も無いようです。
それに、何かあれば連絡の機が飛んでくるはずです。
[ファミルが乗る船が発見され、攻撃を受けたかもしれない。
その懸念を、ひとつひとつ払拭していく。]
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