情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
―明けの明星―
[キャベツ畑そばの小さな小屋に
ローゼンハイムの姿を見つけた]
皆のところに行かないの?ローゼン。
[流暢に言葉を話す褐色を、ローゼンは
訝しげに見遣る。
一歩、後ずさりした彼の腰を抱き
オオカミのように尖った耳を、ねろりと舐めた]
旨そう…、ね、ローゼン。
味見してもいい?少しだけ、少しだけだから……
[柔らかく唇へ食んだ耳が、ぴくぴくと震えている。
ああ、なんて可愛らしいのだろう。
食べられる為に生まれてきたような――
こくり、喉奥を鳴らして牙で触れ、]
[うっとりとした眸で、
既に深い眠りについてしまったローゼンの耳を舐める。
シェイが眠っている頃合を見計らい、
そっとほらあなへローゼンを運び込んだ。
ローゼンの耳は思いの外多く食べてしまったから
当分目覚めないかもしれない。
寂しいだろうな、とは感じつつも、
血塗れた手で触れる事は叶わぬまま、
眠るシェイを一瞥し、ほらあなを出て行った**]
―ほらあな―
[ローゼンの耳の出血は、直ぐに止まっただろう。
自分だって元々はウサギだ。
舐める事で傷を癒すことが出来る――否、
こうなってしまった今、それが出来るのかは謎だった。
ローゼンハイムは、流れウサギの自分にとても優しくしてくれた。
マレンマの洞穴から自立し、漸く新しい棲家を見つけたローだったが
如何せん、料理が下手で。
温かいものを食べられるのは、ローゼンのお陰だったとも言えた。
そのローゼンの耳を――
はじめて、ウサギの耳を、食料にした]
ごめ…ん
ごめんなさい、ごめんなさい、ああ……
[がくり、入口で膝を落として頭を抱える。
ウサギのローは、同胞の耳を喰らった罪悪感に押し潰されそうになっていて。
その記憶を喰らってから表に出るのが、オオカミのローの最初の仕事だった]
弱いモノは淘汰される。
「お前」も、そのひとつでしか無いんだよ、ロー・シェン。
[昏いほらあなの奥で、赤い眸が細まった]
[それでも、赤い眸にも――罪悪感はあるのかもしれない。
同胞の血で汚れた手で、唇で、
弟のように愛らしいシェイに触れることは叶わぬまま。
それでも、傍によることなく、声を掛ける]
他に、足りないものは?シェイ。
ああ、大丈夫だよ。
小屋では「オオカミがローゼンハイムを襲った」って
大騒ぎになったけれど…、
ここなら、命までは取られないだろう、って事になったんだ。
[嘘だ。
嘘を嘘で塗り固めていく。
どうせ明日になれば、新たな来訪者が訪れて、
――自分の正体など、ばれてしまうかもしれないというのに。
ルートヴィヒの作ったマーマレードとジェノヴェーゼ、
そっとそれを差し出し、彼に触れることなくほらあなを後にした**]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新