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草が波のようにうねっている。
空も大地も広く、風が気持ちいい。
[ 身体で感じているものを、心で共有すべく、深く吸い込んだ。]
ところで、訪問先への土産は何にした?
[ おまえのすることに興味がある、と、そんな情愛を隠さず問いを投げかける。]
タイガは遠乗り?
いいな。後で一緒に行こうよ。
[言葉から吹いて来る風の匂いを嗅ごうと、首を伸ばす。
どこまでも続く草の海を駆け抜けるのは、きっと気持ちいい。]
お土産は塩ダラにしたよ。
かっちかちのやつ。
向こうは海が無いから、喜ぶかなって。
[兵糧の中から持ち出してきたものだ。
ちゃんと名前入りで「もらっていくよ」と置手紙したから、自分的には勝手に持ち出したわけじゃない。]
ああ、いいとも。
どこかで果樹を見つけて齧るか。あの時みたいに。
[ 乗っかってくるような声に、微笑んで答える。]
塩ダラ?
それはまた喉が渇きそうだな。
[ まったくもって高級品ではないが、湾岸地方の名産ではある。
「かっちかち」は当てこすりなのかと勘ぐったが、深い意味はなさそうだ。
レトの気質は陽性で、相手を弄るにしても笑いが伴う。]
それいいね。
どちらが先に美味しい果物を見つけるか、競争しようよ。
[楽しみだー、と声にも雰囲気にもいっぱいに乗せる。]
ねー。
ちゃんと食べ方教えた方が良かったかな。
[お土産塩ダラについては、単に珍しい方が良いだろうというくらいで、まったくもって他意はない。
酒は、持って行こうとしたら怒られたので止めておいたのだ。
あれは塩タラよりもう少し管理が厳しいから。]
そうそう。ちゃんと伝言伝えたよ。
「王子には帝王学を学ぶための家庭教師を用意しよう。
学ぶのは執政しながらでも可能だ」
だって。
[思いだしたように、お使いの成果を伝えておく。]
向こうの司令官はガルニエ騎士団のクリフ・ルヴェリエ。
隣にはリンデマンス王もいたよ。
どっちも小さいころに会ってて、びっくりした。
王様なんて、会った時はチシャの兄さんだったんだよ。
[等々、会見の様子を話しておく。
ブリュノー戦後のことなど要点は外さなかったが、それ以外のところは知り合いばかりで驚いた、という話に終始した。]
猿と合流した。
あとはまっすぐ帰るよー。
[帰還に先立ち、一報を入れる。]
川と湖の様子も見て来てもらうから、あとで使うなら言ってよ。
川下りでもいいし、向こうの野営地でも王都でも、水浸しにするつもりならやるよ。
[基本が放浪民なので、土地を荒らすことへの忌避はない。
許可さえあれば、水であれ火であれ、いくらでも放つだろう。*]
[ 自然の中では、レトは師だった。
草笛の吹き方も、魚のつかみ取りも、果物の酸い甘いの見分け方も、喜々として教えてくれた。
その才が戦の場面でも発揮されるとは、新しい驚きだ。]
水計か…。
[ 短く思案して、]
野営地の水浸し、は有効だろうな。
やる価値はある。
[ 兵力の損耗にはならずとも、相手の気をひくことはできる。
分断こそは重要な鍵だ。]
王都には手を出さなくていいぞ。
可能なら、ブリュノーには、王妃と嗣子を歓迎してもらいたいと思っている。
こじ開けられるより、趨勢を見極めて、自ら門を開いたという形にした方が、後々の心証がよかろう。
[ 二人をただ王宮に返せばいいというものではないと考えていた。]
ともあれ、
よくやった、とおまえの頭を撫でてやりたい。
[ 蜂蜜酒や風呂もいいが、魂の呼び合うところに帰って来て欲しいと、素直な思いを告げた。]
[兄にものを教えるのは楽しい。
他の、街の人間と違って変に偉ぶったりしないし、なにを教えても感心してくれる。
それは良いなと言ってくれるのが何より楽しい。]
じゃあ、工作兵貸してよ。
いつでもできるように準備しておくからさ。
[価値はあるとのひとことに、やる気を掻き立てられて人手を要求する。
頭の中に予定は組み上がっていたけれど、実際は現地視察している水の専門家の見立て待ちだ。]
[王都に手出し無用というのには、ふうんと頷いておいた。]
邪魔な奴ら全部たたき出して、ってわけにはいかないのか。
わかった。
[移動しない民の考え方は、まだよくわからない。
だから、そういう判断は全て兄に従うことにしている。
やれと言われれば王都を水に沈めるのだってためらわないけれど、王妃様もあの赤子も、帰る場所が水たまりになっていたら困るか、と納得した。]
[撫でてやりたいと飛んでくる思念に、はははと笑う。]
やーだーよ。
もう子供じゃないんだし。撫でられても喜ばないって。
[冗談でしょ、の調子で言うが、断固拒否というわけでもない。
撫でられたってたぶん文句は言わないし、どちらかと言えば嬉しかったりもするけれど、それを素直に認めるのも格好悪い気がする。
難しいお年頃なのだ。]
邪魔な奴ら全部たたき出す、とは過激なことを言う。
[ むしろ謂れもなく叩き出されてきただろう部族の血を引くレトだが、その口調に恨み節は感じられなかった。
だから、指摘する声も感嘆の色を含む。]
意見のあわない者たちとも落とし処を見つけねば、国などというものは成り立たないからな。
安心しろ、そういうことは兄が面倒をみる。
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