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― どこか ―
これは、チャンスが訪れた、とみていいのかしら…。
[国王の訃報に、国中が混乱している。
その喧噪は民の不安をあおるものだが、わたしの耳には心地よく響いた。
もっと騒げ。
もっと取り乱せ。
我を失い、仲間を疑い、殺し合うといい。
怒り、悲しみ、絶望に心が塞がれた頃合いに迎え入れる。
あの崖を越えて、かつては不落といわれた北の要塞を抜けて]
あのお方が、この国の救世主になるの。
みんな、喜んで王に迎えると思うわ…。
[目を閉じて、瞼の裏にその光景を思い浮かべて……わたしはうっとりと微笑んだ。*]
…歩む道の先に劫火が待ち受けていたとしても
洗礼の先には祝福が待っているものだと信じているよ。
……ボクはね?
どうかその業火が。
祝福を与えてくれるよりも先に、
灼き切ってしまわない事を望むばかりだ。
或いは、
― いつかどこかで ―
[ 街で噂話に花を咲かせていた頃。
とある場所でその人を見かけたのは偶然だった。 ]
民にとっては、
自分に平穏をくれる人間が救世主だよ。
…何も長年頂いて来た王の血を引く者でなくともね。
[ 綺麗な金色の髪へ目を遣って
不遜な言葉を挨拶代わりににっこりと笑う。 ]
……しばらくぶりだねえ。ブライアン尉官どの?
[ 声をかけてみたのはいいものの
さて、妙な邂逅からしばらく
相手は自分を覚えていてくれたのだったやら。* ]
― どこか ―
[不意にかかった声に、わたしはハッとなって振り返った。>>*5
目の前に立つ人物の少女のような容貌、少し特徴的なものの言い方。
覚えている。
しかし、驚いたのは突然の再会ではない。
告げられた内容についてだ]
……一体、何のことかしら?
[しらばっくれても無駄か。相手はすべてお見通しなのかもしれない。
では、彼女は自分の同胞なのか。わたしは確かめないといけない]
…あなた、誰…?
[問に対してこの返しは、なんだか相手を忘れてしまってるような感じだけど。
尋ねているのは、宮廷画家という肩書や、ローレルという名前ではない。
こちらの思考を見透かした、その正体についてだ。*]
― いつかどこかで ―
[ 口調の年寄り臭さ故か、
それとも年寄り幼い顔立ちのせいか
見た目から少女と見間違えられるも
そう少なくはないのだけれど。
喋りだせば大概は誤解が解ける。
妙に老成し、悟りきった目つきをするから
――というのは『知り合い』の弁だ。 ]
…自分の胸に手を当てて考えてご覧…と
言いたいところだけどまどろっこしいのは止めよう。
[ 返るのは誰何を問うような言葉。>>*6
けれど、顔や名を忘れてしまった相手に対する…
そういった言い方ではないように聞こえた。 ]
ボクはささやかな平和を愛するしがない画家さ。
おそらくは――きみの敵ではない。かな。
[ 此方の言葉を彼女が信じてくれるかは
はてさて、画家には予測がつかないけれど。
取り敢えずは両手を上げて、
敵意のないことを示して見せれば。 ]
……今はね?
[ 付け加えて、ふふりと笑んだ。* ]
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