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ああ…
こんなに人が集まってくれるなんて、嬉しいことでございますねぇ
お嬢様もお喜びで──あら、ええとお嬢様はどちらにいらっしゃるんでしたっけ?
はて…たしか、お出かけになられたんでしたか
あれはいつのことでしたかねぇ
わたくしのように、とれる形のないただの建物には数をかぞえるのは難儀なことでございますからね
ともかく、こうもたくさんお客様がいらっしゃるのは久しぶりに間違いございませんよ
ええ、わたくし少々ばかりはしゃいでしまっておりますけれど、こういう気分は咎められないものでしょうね?
ええ、お嬢様はあれで冒険家ですから
一度飛び出したらなかなかお戻りになられないのですよ
それでお友達をおまたせすることも……
[ソルにとって"屋敷"は執事としても家人としても大先輩であった。
囁きのような声は躰に――いや、精神に染みるようにして伝わりあう]
ああっそれは…
それは困りますね?
本当にようくよく、おもてなしいたしませんと
わたくしも一度、ご機嫌を損ねたお嬢様に「どぉるはうす」とやらに閉じ込められた時は窮屈で窮屈で生きた心地が致しませんでしたよ、ほんとうに!
さてさて、今は…
わたくしの外、お庭にどなたかおられるのと
おや?
小さなオクタヴィアちゃんが悪──おっと、これはナイショのことでございました
ふふ 素敵な音楽も聞こえますねぇ
今日はダンスパーティーなんていかがでしょう?
賑やかにしていればお嬢様も早くお戻りになられるに違いありませんよ、ええ!
そう、そう。
あの時はまさか!と思いましたねえ。
あなたがあんな、小さな家に収まりきるわけがないのに。
あら、それは素敵……!
お嬢様もきっとすぐにおもどりになられる。
楽しいことが、大好きで、とても耳聡いお嬢様ですからね!
あ、ああ
あー……あ
いやはや、どうやら窓から庭へ出ていったヤンチャな子がいるようで…
わたくし、屋根に乗られたりサッシを踏まれるのはどうもこう
くすぐったくて仕方ないのですけれどねぇ
ははあ、……それはまさか……
オクタヴィア、あの子ですね?
ほんとにもう、やんちゃなんですから……
そうだ、ひとつくしゃみをすれば
そんな危ないことも、しなくなるのでは?
左様でございますねえ…
ただ、危ない場所でおどかしたりして、万に一つでも、お怪我なんてさせるわけにはいきませんしね?
ソルのお方も、やんちゃなお嬢ちゃんをたしなめてやってくださいましよ?貴方だって確か、なかよしじゃあありませんか
はーぁ…
わたくしの声にちょいと耳を傾けてくだされば、
お外へお連れすることなんて朝飯前ですのに…ねえ
たしかに、その通り。
しかし私もなかなかお嬢さんやその後友人には頭が下がらないのですよ…いけませんね、大人がこんなことでは。
[うだつのあがらない様子で]
…それに、そうですよ、オクタヴィア。
大きくなっていたのですから今度は彼女が注意をしなければいけない番なのに。
[やれやれ、と]
ええ、ええ。
わたしも時々貴方のお世話になっておりますし。
そうだ、呼びかけてみてはどうですか?
また耳を傾けてくれるかも……しれませんしね。
ふふ、期待しておりますよ?
なにせ万能文化執事のベネディクト・ソルでございましょう
気弱ではいけません、暖炉のマントルピース殿のようにどっしり構えておいでませよ
…さて、ええ
呼びかけてはみますけれども
小さなオクタヴィアちゃんには──
この声は届かないような気もしているのですよね…今は、まだ?
なんてこと。
……ありうる。
あり得るから、困りますね、
あのお嬢様……
……いや、オクタヴィアちゃん……?
[どっちだったかしら。
まあ、いいではないか]
ああ、スースーするのがおさまりました
ありがとうございます
ねえ、ダンスパーティーというのは、ピアノやバイオリンがあれば充分なものでしたかね?
お菓子がたあくさん必要になりましょうか
わたくしも、食べられるわけじゃあございませんけど、焼き菓子やらお紅茶の香りが漂うのはウキウキするものですよね
いえいえ、夏は窓を開け放ちたいですけれど、
もうだいぶ涼しくなってきましたからねえ。
どうだったでしょう…?
…あ、大人ならお酒を嗜みますが、
まだ若い子もいらっしゃいましたからね。
ふふ、では焼き菓子でも用意しましょうか。
あなたの好みは一体どんなお菓子でしょう?
いい香りを充満させるのですから。
なるほど、お酒!
たしかどこかに酒蔵が隠れているんでしたかねえ
お嬢様がお飲みにならないのですっかり何処かへ押し込めてしまったのですよ
好みの焼き菓子と申しますと、
そうですねえ、バターにチョコレエトの香り…ふむ、小さめのマフィンなんて如何で?
ちいちゃな女の子はああいうのに自分ででこれーとするのがお好きでしょう
そうでしたそうでした。
それに…旦那様がしっかりと鍵をかけておいでで、
結局わたしもよく存じ上げないのですよ…
ふむふむ…、
さすがあなたは素敵なことを思いつきますね!
あの頃のように、一緒にキッチンに立って…
それは叶わずとも、たくさんのお菓子を
一緒にデコレートするのはとても楽しそうですね。
さて、早速準備しましょうか。
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