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イングリッド。
[ 顔を見せるのもそこそこに、出て行こうとする部下を呼びとめた。 ]
ここへ座れ。
[ ソファを、顎でしゃくって示す。 ]
[慌ててその場を辞そうとして、呼び止める声>>*32に、]
あ、あの、
……はいっ
[心持ち緊張した表情で、指されたソファに腰掛ける。]
俺は仮眠する。
その間の護衛を申しつける。
[ 一方的に言うと、イングリッドの横に座り、
そのまま横に身を倒して……、
つまり問答無用で、膝枕をさせた。
顔は向こうを向いているので、
イングリッドからは、テオドールのつむじが見えるだろう。 ]
……。
[ 程なくして、規則正しい寝息が響いた。 ]
か、仮眠…?!護衛、ですか…?!
[唐突な申し出>>*34に目を丸くしていれば、テオドールはさっさと隣に座り――]
………ぁ、
[あの、と声をかける間さえなく。
今、自分の膝の上にいるのは間違いなく、あの主である。
…咄嗟のことに声も出ない。心臓が早鐘を打つのを止めることもできず。
どうかバレませんように、と内心願いつつ身を固くしていれば、
ほどなく安らかな寝息が聞こえてきて……]
[ 天幕の外では、大勢がせわしなく動き回る気配がある。
爪のある足が草を踏むザクザクという音。
金属同士が触れ合うカチャカチャという音。
その中で、この天幕の中だけが切り離されたように、
静かで。
魔法の狐火を灯されたランプが、ちらちらと影を踊った。 ]
リッド。
[ 一度だけ少しかすれた声で、
テオドールは寝言を言った。
だが、それを確認する前に、天蓋の外から魔王を呼ぶ声がした。 ]
ふふふ…
[ようやく緊張が解けて、思わず笑みが零れる。
そっと、愛しい人のその腕に触れて。肩に額を付けて。
嵐の前の静けさ。ゆっくり過ぎてゆく、穏やかな時間……
ずっと、この時間が続けば良いのに。
…でもそれは、願ってはならないこと。
賽は投げられた。もう、進むしか道はないのだから。
今はただ、この幸せを噛みしめる。
テオドールが自分にこんな様子を見せてくれることが、素直に嬉しかった。]
[嗚呼、この人を護るためだったら、なんだってしよう。
どちらかを屈服させるまでこの戦いが終わらないなら、
この人を支え、行く道をどこまでも共に歩んでみせよう。
全てが終わったその時は、
もう一度、この穏やかな時間を願っても許されるだろうか――]
[ふいに、テオドールが何か呟くような声が聞こえた気がして。
何と言ったのであろうと、確認するように見つめるも――]
…あ、あの、テオドール様、
入室を待っている者が、いる、ようで…
[――他の部下にこんな姿を見られては一大事!
慌てて起こしにかかるしかない。]
……ああ。
起きた。大丈夫だ。
[ 身を起こすと、テオドールは一度頭を振り、
片手で顔を覆った。 ]
[ 泣くような笑うような、微妙な表情を手の中に隠して、
そして手を離せば、「魔王」の顔に戻っていた。 ]
警護の任務、御苦労さまだった。
……懐かしい夢を見た。
感謝する。
もう、戻っていい。
休暇の間は、お前の好きに過ごせ。
[ そっけないながらもそう言って、
テオドールは天幕の外へ、入室を許可する声をかけた。 ]*
[戦の前の静かなひととき。
眠るテオドールの肩に額を置き、そっと目を閉じていれば、ゆったりと心は凪いでゆく。
そこに波紋を作るのは、きらきらと輝く幼き日の記憶の雫。>>*40>>*41
――パパ!ママ!…元気の良い少年の、何でもない日常が、そこにはあった。
特別なことは何もないが、ゆえに幸せを感じとれて、そっと微笑む。]
[30歳前後にも見える父親はテオドールにそっくりで、彼の血縁であることが伺える。
一方、母親は……母親は?
見上げたそこには何も見えないが、しかしたしかに、そこに”いる”。
少年の記憶に重ねるようにして、その空間に手を伸ばそうとして――外からの声に邪魔をされる。
慌てて主を起こせば>>*39、その光景も幻と消えた。]
テオドール様…
いえ、あの、……はい。
[手で顔を覆うその仕草は、魔物を率いる”悪”には似つかわしくないもの。>>*42
あぁ、この人だって人の子なのだ。先程見た光景が、更にその想いを強くする。
しかしそれをイングリッドに悟られることを、テオドールは是とするだろうか?
わからない。それ故に、気遣う言葉は胸の内へと飲み込んで。
懐かしい夢を見た>>*43と言いながら、いつも通りの対応を見せるテオドールに、小さく頷いた。]
…また、いつでも、
お申し付けください、ね?
[天幕を出る前に一瞬振り返り、それだけを伝えて。
この先、休める時はそう多くないだろう。
それでも、その僅かな休息が少しでも安らかなものにならんことを願って。
目覚めれば哀しみに囚われるかもしれない夢。それでも、
――あの時感じた幸せな時間は、嘘ではないと思うから。
この状況で人らしくあることは苦痛を伴うかもしれないけれど、
しかし彼に、人であることを捨てて欲しくはなかった。]*
― 穏やかな時 ―
[ 実際のところ、イングリッドと交信できるこの「こえ」については、
テオドール自身にもよく分かっていない。
だから、夢までが伝わってしまうとはまだ気付いておらず。
実際、イングリッドととは、これまで5回会ったが、こんな風に話せたことはなかった。
指示を与え、階級を与えれば、自分がもう一人居るのと同じような物だ、
そう思ってから、イングリッドさえそんなふうに利用しようとする自分をおぞましく感じる。
人の心など、もうとうに失ったつもりでいたのに。 ]
テオドール様。
カレン付近に動きが。
退魔師らはあそこに配置されているようです。
それから、石造りの巨兵が何十体か、確認されています。
南方の陽動隊で可能な限り引き付けますが…
…万一のこともありますので、ご報告まで。
「石造りの巨兵」か……。
おそらく、怠惰の魔女が動いたのだろう。
……構わん。
陽動部隊は、全滅さえしなければ良い。
そいつらが、カレンを出られないだけで、充分、仕事を果たしている。
承知しました。
いざとなったら、陽動隊にも援軍を送るようにします。
[混乱した戦場では、伝令兵より鷹の方が便利である。
少々遠い地ではあるが、何かあれば行動を起こすこともできるだろうと。]
怠惰の魔女…早めに消しておきたいものです。
[厄介な相手だということは知っているから。
南方の部隊は陽動と理解しつつ、可能ならばここでどうにかしてしまいたいという思いも過る。]
…トロールの屍鬼化タイミングをコントロールできれば或いは、とは。
戦況を見て、べリアンに発動支援を頼むことも考えますね。
[早めに手は打っておく。
いざという時に相談できるとは限らないからだ。]
そうだな。
そのあたりはお前に任せる。
今の大将はお前だ。
[ フ、と笑った。 ]
ただ、戦場における「目的」は見失うな。
ここでは、
「騎士団の人間を可能な限り削る事」
「ソマリアードの殺害と鍵の奪取」
が重要だ。
カレンは後でどうとでもなる。
功に逸るな。
はい。
…目的の遂行を、第一に。
[そう、ソマリアードがいなくなれば、騎士団は統率を失い、一時的にではあれ乱れるだろう。
"鍵"を手に入れれば、こちらの動きもまた変わる。
…要所の敵を倒すのは、その合間でも良い。
多くの敵の目をこちらへ惹き付けつつ、テオドールの作戦成功を願って、今はできることをやるのみだった。]
イングリッド!
状況はどうなっている?!
[ 自分で選択したことだったが、
全体を把握できないのをもどかしく思った。
下がるはずだった人狼隊が混乱しているのを知れば、
低く唸って。 ]
人狼隊は、持久力がない。今の内に交代させておきたかったのだが。
仕方あるまい。修正案だ。
落ちたハーピー隊の回収、休養を最優先とせよ!
奴らは俺たちの「目」だ。すみやかに回復させるように勤めよ!
回復したものから戦場に戻し、超上空から投石攻撃させよ。
バリスタを破壊せねばならん。
右翼後退が不能ならば、小隊ごとに集まり、
屍鬼隊到着まで耐えよ!
誇り高き人狼族が、歩兵程度に食い散らかされて、
故郷に戻れると思うなと、叱咤せよ!
申し訳ありません、ハーピー隊が…!
どうやらバリスタの用意があったようです。
まったく、小癪な真似を…
…報告では、"弓"と聞いていたのですが。
あれらには見分けがつかなかったのでしょう。
すぐに立て直しをはかります!
テオドール様。
人狼隊は何とか持ちこたえているようです。
ただ、敵歩兵の動きが想像以上に鈍い…いつもの騎士団らしからぬ状況かと。
[受けた報告を伝え、向かう先への注意を促す。]
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