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騒動を聞きつけた他部署の司書が、とある資料を手に、容疑者となってしまった皆の元へと駆けてきました。
「あ、あの、これ…!こんな本を見つけたので、あの、参考になればと…!
…じゃ、じゃあ、し、失礼します!」
犯人を見つけることを手伝ってはくれないらしい。
自分は関係ないとでも言いたげに、資料を渡した後すぐに慌てて走り去っていった。
彼が持ってきたものには、こんな表題が付けられている。
【緊急マニュアル:異邦人が複数現れた場合の対処法】
「大勢の異邦人がやって来た時は、館内の2名に何らかのバグ(人狼)が発生している。
2名は制御装置を不正に扱い、互いの情報交換を行うことが出来ている。
これらを廃棄しなければ、世界の秩序を守る事が出来なくなってしまう。
そのため、疑わしき人物は一名ずつ廃棄場所に送らなければならない。
※一晩に2名以上を廃棄することは出来ない。ラボでの生成が追いつかないため。」
「対抗措置として、バグ発症者に対峙できる力を秘密裏に持つ者がいる。
緊急時プログラムが作動するのは、1名のみ。
疑わしい人物をスキャンすることが出来る、通称「占い師」
バグに冒された者は、排除されまいとして抵抗し続けるだろう。
だが、館内には多くの人間がいる。力を合わせてバグの徹底排除を行うべし。」
最終行の「力を合わせて」とは全くの理想論であることが分かる。
この騒ぎについて館内で囁く声の中には、「容疑者になってる奴らは全員廃棄してしまえばいいのに」なんて声まで上がっていたのだから**
容疑者に挙げられた7名が会議室で話し合いをしている頃、離れた区画でちょっとした騒ぎがあった。
高齢の”司書”が、通路で倒れているのが発見されたのだ。
だが、その人物を調べてみても、手の甲にあるはずの制御端末は見当たらない。
そう――彼は半世紀以上もの長い間、大図書館に幽閉されてしまった”異邦人”であった。
死因は老衰。バグ騒動とは関係が無いという事で処理された。
年月をかけていくつもの区画を越えて歩く内に、異邦人であるという認識すらされなくなっていく。
年齢を重ねて見た目が変わった今となっては、以前共に過ごした区画の職員達ですら、彼とは気付けずにいた。
静かに息を引き取った彼の遺体は、この大図書館のルールに則り「星の夢」と名付けられた場所へ”廃棄”されることが決定した。
廊下を歩けば、そんな噂話を聞くことがあったかもしれない――**
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