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鉛の海を渡り船が錆だらけの小さな港に着くと、既に小型のバスが迎えに来ていた。
運転席から降りてきた、線の細い男が愛想良く出迎える。
この男が、島の地権者より任された管理人らしい。
バスに人と各々の2泊の荷物を積み、他に走る車のない車道を走る。
10分ほどで、古い西洋風の建築に手を入れたその日の宿に着いた。
簡単なレクチャーがある。
曰く。
個室は各々好きに入室して構わないこと。
風呂は常時沸いていること。洗濯などは各自行うこと。
食事は基本管理人が用意するが、地階の食料庫の食材を使って、自由に台所を利用して構わないこと。
この島では携帯の電波、インターネットの類は全く不通であること。
唯一つの外部との通信手段、軍の通信機は2階の談話室に設置されているが、最近調子が芳しくないこと。これは勿論民間人の使用を禁じること。
本日は終日自由行動であるが、宿泊所より西に限ること。東は展望台までとすること。
玄関ホールに伝言板がある為、各々の予定、同行を募る際や伝達事項がある場合は利用すること(メモ)など。
管理人は、玄関ホール左手の居住空間に通常は居るらしいこと。
それらが告げられた後、解散、各自行動となった。
昼頃になると、食堂からカレーの匂いが漂ってきた。
配膳は各自で行うようにとのこと。冷蔵庫に人数分のトマトサラダと、紅茶のゼリーが用意されていた。
ソフトドリンクも適宜に用意されているが、アルコールはない。
管理人に、軍の直属なのかと聞くと、そうではなく、委託らしい。
この島の地権者と、当局は現在も何らかの交渉を続けているらしいが、男はその地権者に雇われているのだと。
そうして、稀に訪れる客人の世話も仕事の内に入るのだと。
それ以外は本を読むだけの毎日であるので、たまの生活の刺激にはいいものですよ、とやはり線細く男は微笑い、自室へ下がった。風呂などの水回りは専用のものが居住スペース内にあるらしい。
長くなり始めた陽もすっかりと暮れる頃、夕食が用意されるだろう。
ミネストローネとミートローフ、温野菜のサラダ、パン、果物のゼリー。
管理人は早々に自室へと引き上げた。どうやら具合が悪いという。風邪でも引いたのだろうかと。
−…あぁ、僕はこの館の管理と、施設の見廻りという職に雇われたので…。はい。もう5年程でしょうか。所謂世捨て人の様なものですよ。僕がこの島に来た時は、もう今の、誰も居ない島でした−…
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