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エルナ。
[返り血を浴び、包丁を取り落として
後ずさるエルナに向き直る]
……ありがとう。
そして……済まない。
[彼女の手を、汚させてしまった。
ものを作り出す手で、ひとつの命を終わりにさせてしまった]
[叶うならば、未来を語ったあの時のように。
血に染まった手を握り、身体を抱き締めてあげたかった。
感謝を伝え、不安と苦しみが少しでも和らぐように。
……だけれども。
奇跡など起こるはずもなく。
エルナに伸ばした腕は虚しく突き抜ける]
[後を追わなければ、と思っても、体が動かない]
…………。
やあ、ヨアヒム。
[やがてヨアヒムの身体から魂が離れれば、眉を下げて声をかけた**]
["姿を持たないソレ"は、宿り主であった肉体が死ぬと同時に、音を立てて青年の魂から剥離した。
"ソレ"は、魂というべきものを持っていないから。
魂の無い存在は肉体が無ければ消滅を待つのみであるから。
分たれた魂へ告げる言葉も"ソレ"は持っていない。
離れれば、ふぅわり。
幾らか、漂って、ぱちん。
――小さな音を立てて、……消えた。 ]
[ べり べり
べり
べり べり
…は塞げなくなった耳で、何かが裂け、破れ、引き剥がされる悍ましい音を聞いていた。
……或いは、魂が両断されるかのような痛みすら、…は感じていたのだった。
…から剥離した何かは、どろどろと濁る黒いものであったけれど、溶け消えるそれらを…は行かないでとばかりに掴んで――掴んで。それでも、消えて…しまった。
――…消えた、瞬間に。
強烈な虚脱感に襲われて、…は見えない身体を抱き締める。己を包む腕さえ――包む体さえ無いというのに。
――…。]
―ある日の記憶―
[――むかし、むかし。
まだお互いが子供だった頃。
出会って数年が経って、村での生活にも慣れた。一回り小さかった体も、少しづつ差がなくなっていた。
遊び盛り、いたずら盛りの男子4人が揃えば、兎を追ったり果物を拾う為に山に入ることもあった。
もっとも、大体は途中から遊びに夢中になってしまったけれど。
『――ヨアヒム、こっちだ』
少し急な山道の斜面で、先に上っていた白い少年が、茶色の少年に向けて手を伸ばす。
体つきは細くとも、ちゃんと引き上げてやるからと。強い意志を目に宿して**]
―回想 3日目:ニコラスとの会話―
[軽く目を閉じ、しばらくニコラスの話>>3:+13を黙して聞き。
彼の考えを全て聞き終えてから。
重く、口を開く。]
「死という救済と平穏を平等に与えられる権利がある」……
……仮に彼らがエルナを殺めていたとしたら、あなたは同じことが言えますか。
[問うておいて、フリーデルは目を閉じて、軽く首を振る。]
私には出来ません。
神に仕える身ではありますが、所詮人間に過ぎませんので。
[しかし、それでもしばし考えて。
ニコラスが何か言ったならば、それも心に留めただろう。
そして不意討ちのように、ニコラスの頬に軽く平手打ちを放つ。速度は穏やかなもので、目には悲しみと諦めの色。果たして幽体が幽体を攻撃する等と言ったことが出来るのか、それはわからないが]
……九割ほど、おまけしておきます。……ニコラスさんの気持ちは、わかりましたから。
[そう、自分の行動を評して。ニコラスがエルナの方へ向かう>>3:+14というのならば、あえて同行はせずに見送った]
―どこか―
[ニコラスといったん別れ、それから行くあてもなくどこかへ。
とりあえず、今はまだエルナは“こちら”へは来ていない、ようだが。
親友の表情が憎悪に歪んだような光景を、一瞬幻視したような気もする――それは、気のせいだと思いたかったが。]
………なんにもないですね、私。
[誰かのために生きて、誰かのために命を捨てた自分をそう評して。
内心で思うのは、もう一人の人狼のこと。客の思惑に合ったパンを提供する達人、オットー。
フリーデルにしてみれば、正直言って彼は苦手な部類の人間に入っていたことを思い出す。彼自身が何をしたいのか解らない……彼自身の欲望がひとつも見受けられない、ためである。
しかし、だからこそ、なのか。
中空に投げた言葉は、オットーに関する感想で。]
………生きている方の化け物は、今は生を望んでいるんでしょうかね………?
[相手には聞こえていないのは解っているが。つまりこれは只の暇つぶしなのである]
[――あるいは。]
……私もいずれ、彼のようになるのかもしれませんね………。
[そうつぶやくが、これは厳密には正しくないことを、フリーデル自身、既に知っている。
厳密には。
既にそうなりかけている、が正しかった。
生ける者のために、何も出来ないという事実が。
少しずつ、フリーデルの存在を透明にしていると。すでに自覚はしていたのだが。……認めたく、なかったのだ**]
―昔々のこと―
[青年がまだ少年であった頃のこと。
思い出せないほどに多くの日常の欠片の一つ。
『ヨアヒム、こっちだ』
自分の名を呼んで、手を伸ばす白皙の少年。
意志の強そうな瞳に、少年は何時も迷わずに手を伸ばすことができたのだったか。どうだったか。
遠い日の記憶。もうはっきりとは覚えちゃいないけれど。]
[ヨアヒムの形を成したそれが、こちらに手を伸ばす>>+14。
ああ、良かったと胸をなで下ろしたのも、束の間のこと。
その手は、腕は、体は、空間に溶け込んでしまいそうなほどに透けていて。
――うまく、つかめない。
ああ、あの幼い日に腕を伸ばしたときは、どうだったっけ。
掴めたのか、滑ったのか、共に――落ちたのか。
『彼らがエルナを殺めていたとしたら、あなたは同じことが言えますか。』
不意に、シスターの言葉が蘇る>>+10。
そのときに答えた言葉は、この姿のヨアヒムを見ても変わらない。――否、この姿を見たからこそ、強く想う]
そっちに、行くな……っ
行っちゃ駄目だ!
[男は、フリーデルに答えた。
「言えますよ」と。
「……奪われれば、そりゃ憎しみを感じるかもしれませんけど、それでもヨアヒムたちは僕の友人ですから。友として、人のまま終わらせてあげたいという気持ちは変わりません」]
…………。
ヨアヒム!
君は、僕と同じ人間だ!
……人として、その命を終えたんだ。
だから――
[消えないでくれ。
透ける手に己の手を重ね、祈るように、ただ願う**]
"君は、人間だ。"
[声は――聴き慣れた声だけは、聞こえていたけれど。
びゅうびゅうと唸り始めた冬将軍の白い吐息が意識を浚っていこうと透いた体へ吹き込んでくるのだった。
冷気に当てられて、青年は「目醒める。」]
――…いいや、
俺は…、――…僕は、……狼だ。
[低い呟きを漏らした青年は、重ねられた手>>+16からするりと己の手を抜くと、一転。ほんの少し、飛び上がり、宙へと浮かぶ。]
……解っているんだろう、ニコラス。
ゲルトや、シスターフリーデルを殺したのは――…、喰ったのは…僕だ。
僕が――爪で、牙で、肉を裂き、血を啜って…殺した。
[酷く冷めた口調で青年は告げた。]
[誰に告げられずとも、透けた身体の青年は頭の奥で悟る。
此処は、"完全な"自分の存在を知覚していないモノには存在できない場所なのだろうと。
つまり、"欠けてしまった"青年は、存在を許されず、また、許されるつもりも無いのだった。
実体を持たぬ身体は端々に黒い塵のようなものを纏わせ、時折不安定にゆらゆらと揺らめいていたか。
手の先から足の先まで見える場所はどこだってそうで、嗚呼、時を止めていられるのも僅かなのかと悟る。
――…だから。]
――…もういい。
[にぃ、と唇を吊り上げ、嘯く。]
"俺が生きていたなら次はエルナだったかも知れなかったんだぜ"
[言い捨てれば、くるりと背を向けた。
上を向くのは…少しだけ、頬の濡れるのを誤魔化すためであったけれど。
浮かび上がり、一度も振り返ることなくそのまま何処までも高く。
――少なくとも、幼馴染の目からは見えなく*なるように。*]
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