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[右耳の傷跡のせいなのか、件の青年が意識的に左側を殴打していた記憶があり、そのせいかと片付けたなら、利き手ではない方の手でクッキーを一つ摘み、口へと放りこんでみる。]
…………
[熱の訪れは期待してなかったが、自身には味覚も残ってないらしいと、肩を落としはするものの――…
少女には、味覚なり熱を感じる器官なりが残っていたならいいな、などと考えながら、クロスに包み缶へと詰める。]
[魔法瓶には紅茶ではなく温めたミルクを拝借し、ブランケットも二三枚。マッチとランタンも鞄に詰めたらもう一度、少女の姿を探す。
そして、姿を見とめることができず、声が出たら楽なのに…と、がっくり肩を落とすだろう。
そこから上のバルコニー、少女の同族が彼女は何処と呼びかけているなど、今の男にはわからずに。
パメラの姿を見かけたならば、身振りと手振りをもって、リーザを見なかったかと問うてみた**]
― 宿の外 ―
[温度を感じない体で、気休め程度に防護外套の襟をしめてると]
『――――――。』
『―――――― ――――!!』
[声が聞こえた。
音を拾えなくなったはずの魂が、あの人の声を拾った。]
[戻ってきた感覚と、彼女の姿が見えないことから、ひとつの憶測が頭をよぎる。
心臓など既に止まっているというのに、男を襲う焦燥は早鐘のように鳴り響き――…。
リーザを探そうと用意していた荷物をその場に置き去りにしたまま、逸る衝動のままに自分が死んだ場所へと駆け出すのだった]
[硬く閉ざされていた窓が開いて部屋の中へ雪が舞い込んで来た。
雪は花のように廻って少女を冷たい腕で包み込み、
白い世界へと彼女を攫って行ってしまった。
終わるその時まで少女は歌っていた。
拙いながらも、ひたむきな小鳥の声で囀る少女の歌は、
大切な彼等のもとへ届いたのだろうか?
うなるような吹雪に少女は歌声は掻きけされてしまう。
まるで泡沫の夢。儚い風花の様に。――雪の中、少女は溶けてきえてしまった。]
[少女は運命を受け入れるように瞳を閉じる。
次に目を醒した少女の視界に飛び込んで来たのは、何処までも続く銀世界。
世界の全てがこの舞い踊る風花の中に消えてしまったみたいだった。
白・・・・
すべてに優しく、すべてを癒し、すべてを隠す
すべてを晒し、すべてを暴き、すべてを見せる・・・・
少女の身体は凍える吹雪に持って行かれてしまった。
視覚を失った少女に映るのは色を失った白い世界。
風が舞う。けれど、その風の音さえも聞こえない。
少女は聴覚も奪われて、
ただ、静寂に包まれて、淋しくて残酷な白い世界の中にひとり残されてしまった。]
[周りを覆うのは雪。
――哀しい、
――淋しい。
少女は言葉を発するが、
その声も厳然たる雪風に浚われてしまった。]
(ねえ、どこにいるの?
はやく、はやく、)
[少女が自身が何かと理解してから、ずっと、
顔も知らなければ聲も聴いたこともないけれども、
世界の何処かにいると信じて呼びかけていた、あの頃の様に、
少女は救いを求める、]
[やがて、動かなくなった自分を担ぎ、歩を進める修道女を見つけた>>408。]
(なぜ、なぜ、なぜ――)
[連れて行ったところで蘇生するわけでもない。
何が彼女を突き動かしたのか、男はその心情を測りきれず。
だが、その行動によって、彼女が自ら死を招くだろうという事ぐらいは男にだって理解はできた]
――――――!
――――――――――!!
[必死に声を届けようとするが、死した際に損傷してしまった魂は言葉を音にすることができずに]
――――――
―――――――――!
[男も何度かそれを試し、無理だと知っているはずなのだが、それでも声を張り上げようとする]
[けれど、聲は帰って来ない、と少女は理解していて。
あの人と過す日々に何時しか呼ぶのを止めてしまった時の様に、
それに、この銀嵐のなか自分を見つけてくれる人なんて居るとは到底思えず。
膝から、崩れ落ちる。諦めて全てを白に還そうとした、その時だった。]
「――― リーザ。 *何処にいる* ?」
[聲が、聴こえた。]
―――――――――――。
―――。
[その言葉の裏にあるであろう、彼女が抱く感情が読み取れてしまえば――…]
“何故”
[自身を運ぶことが優先される理由が、更にわからずに。
唇は“何故”と、形を作り続けるだろう]
[雪の温度を感じぬ体躯は低い白山を透け越えて。
蹲っている少女の前へと姿を現す。
黒い衣が風になびく事はない。
鍔の広い帽子が突風に煽られる事もなかった]
† †
――― リーザ、俺が見えるか。俺の聲が聞こえるか
[少女に向けて伸ばす腕は、やはり*純黒に包まれており*]
† †
[一見、村の少女達と何ら変わりのない少女。彼女に「異変」が生じたのは、
少女が神父に拾われて6年だか7年目を迎えて幾月か経ってのことだった。
冷える朝、ずきずきとした痛みに少女は目をさました。
不思議に思って、自分の指で背中に触れて確かめてみれば、
ちょうど、肩甲骨の付け根、背骨に近い部分。
対になる場所に手探りで見つけた、ふたつのしこり。
その丸みを帯びた腫れ物の一番高い場所に裂け目があって、柔らかな正体のないものが生えていた。
リーザが慌てて鏡で確かめてみれば、
少女特有のシルクの肌に出来た裂け目から小さな翼が生えていた。]
[その時、自分が"人ならざるもの"だと。自身の目で見て、漸く確信を得た。
それらは、妖魔の本能から来る気付きだったと言っていいだろう。
翼を見る以前から自分が普通の人間では無いのではないかと少女は薄らと気付いていた。
大勢の人に囲まれていても感じる孤独の理由を背中に生える翼を見て少女は知った。
また両親が自分を教会に捨てた理由も小さな翼にあるのではないかと考えて、
それからずっと少女は聲を使い同朋を呼び続けて来た。
ねえ、何処にいるの。
早く迎えに来てー―。
"彼"の孤独を感じ取るまでは、そう。]
[新緑の村から度々やってくるヴァイオリン弾き。
少女は彼の声は聴いた事はない。
口が利けないのかもしれないが彼女にはそんな事はどうでも良かった。
だって、ヴァイオリン弾きの奏でる音は奇麗だったから。]
[ある日、少女が小鳥と一緒に遊んでいる時、
「風邪をひくなよ」と、不思議な声を聴いた。
不思議な声は何処からするのだろうと耳を澄ませてみる。]
どこから この不思議な聲は聴こえて来るのかしら。
あなたは、 だあれ?
[まず初めに空耳を疑った少女は返事なんて期待していなくて、
だから不思議な声が再び聴こえたのはびっくりした。
ただ、不思議な存在が自分が見てくれるのだと嬉しくなって。
まさか、その聲が、ちょうど村を訪れていたヴァイオリン弾きだと思ってもみなくて。]
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