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[ぎちり、と翼は畳まれたまま。
腹部への衝撃で一時的に翼を動かす筋肉が強張ってしまったようだった。
幸い、身体の感覚を山猫に寄せていたため、身を翻すことで背から落ちることだけは避けられたよう。
メルヒオルは高所から着地する山猫のように足から舞台上へと降り立った]
もう一度……!
[翼はまだ軋んだまま。
広げようとすると翼は小刻みに震える。
足元には五芒の陣。
既に捉えられているとは気付かぬメルヒオルは、再び足場を使って中空へ飛び上がろうと目論んでいた*]
おおっと…!
[ 降下する軌道を塞ぐようにして、白波の壁が迫り上がる。 ]
なかなか器用じゃねえか、ベルティルデ!!
[ 煌、と、一瞬竜の鱗が輝きを増し、その身の全てを二彩の光で覆い尽くす。 ]
うおおおおっ!
[ 貫くように飛び込んだ光が、白波を超えた時、そこに現れたのは、全身を鱗に覆われた二彩の竜。
手にしていた鱗の剣は、長い爪となって海蛇竜を狙う。
ぶんと振り回した腕は、しかし、骨と鱗の剣に受け止められ火花めいた光を散らした ]
ぐおおっ!
[ 光と共に血飛沫が散る。先に受けた棘の傷が、竜の力を削いでいるのは明らかだった。
その傷も、時と共に治癒はしているのだが、今、この瞬間の交差には間に合わない* ]
[飛び上がろうと足に力を込めたその時、メルヒオルの周囲に光の壁>>*4が競り上がる]
!? くっ……!
[光の壁が伸びる先には、くるくると回る矢があった。
床を蹴り、足場を作って駆け上がるが、光のドームの完成の方が早く、メルヒオルは中に閉じ込められてしまった。
拙い、と本能が危険信号を発する]
[突破叶わず、足場が消えて床へと逆戻りした頃、光のドームの中に異変が起こった。
舞い踊るように現れ出した、光の羽根と花弁>>*5。
傍から見れば幻想的なそれは、確かな意志を持って牙を剥いた]
おおおおおおおお!!
[乱舞する羽根と花弁は容易に避けられる数ではない。
それでも逃れるべく、光の壁すらを足場にして駆け回る。
次々と身を裂き行く刃は、メルヒオルの身体に幾重もの傷を生み出していく。
そんな中でも光の壁を駆け上がり、その頂点となる位置まで来ると、己の血で紅く濡れたランスの切先を、くるくると回る矢を目掛け突き出した]
[この空間から脱出せんと繰り出した一撃。
それが届くか否かの間際で、必殺の一矢がドームの外から飛来する]
《ドンッ》
[少なくない衝撃がメルヒオルの身体を揺らす。
真珠色の尾を引いた矢は、ドームの頂点で動きを止めたメルヒオルの胸の中央を確かに貫いた]
───── かはっ
[矢の衝撃で肺から空気が全て出てしまうような感覚を覚え、呼吸が止まったかのような感覚を得る。
数多の傷、その上に傍目致命傷と言える一撃を打ち込まれ、メルヒオルの身体は遂に力を失った。
右手から滑り落ちたランスと共に、光の羽根と花弁に刻まれながら再び舞台の上へと落ちていく。
落ちたメルヒオルの身体は、力の限界を示すように元に戻っていた*]
[ 力だけであれば、深手を負っていても競り合える、そう踏んでのゴリ押しは、しかし、海蛇竜の意志と、水を自在に操る術に押し負ける ]
くあっ!!
[ 振り下ろされる剣を受け止めようとした竜の爪は、ぱきん、と音を立てて折れ、肩から胸にかけて、ざくりと袈裟懸けに切り裂かれた。 ]
は…俺も負けたかなかったけど、な…
『見事…と言うしか、ないか』
[ 身を覆っていた二彩の光が薄れ、青年の姿に戻った竜は、そのまま、仰向けに地に落ちて ]
きっつ…いなあ……
[ まさに、満身創痍……それでも、声音は軽かった** ]
[舞台へと落ちるまでの間、意識は途絶えていた。
それを呼び覚ましたのは、落下による背への追撃と]
………しん で ない
[舞台へと降り立った者>>*9からの呼びかけ。
声を返すものの、直ぐに起きられるほど負傷は軽くなかった]
かんたん には しなな い
すぐ なお る
[途切れ途切れの声。
その言葉が真実であることは、ヴィンセントの目にも明らかだろう。
深い傷が数多並ぶ中、いくつかの浅い傷が少しずつ治癒を始めていた]
…きみ は、 竜 なの?
つくられ た?
ぼくと おなじ?
[いくつかの問いかけ。
何かを確かめるようなそれは、相手に何を思わせただろう**]
[問いに返るのは否定>>*14。
それを聞き、複雑な想いが綯い交ぜになった息を零した]
召喚師 と、竜 の あいの 子
……そ、か。
本物 なんだね。
[純粋ではないにしろ、ヴィンセントの身に宿るのは紛うことなき竜の腕。
蜥蜴の腕が精々の己の腕を持ち上げ、ぐっと握り込んだ]
─── あげる。
飲めば、治癒が早まる。
[握り込んだ掌を広げ、ヴィンセントの方へと持ち上げる。
掌にあったのは、紅色の小さな粒が2つ。
メルヒオルの血を凝縮して固めたものだ]
つぎ、あるでしょ。
やすまなきゃ。
[勝ち負けのことは口にせず、かと言って、頑張れなどという応援も素直には出来ず。
ただ次の舞闘のことを告げて相手を促す。
メルヒオル自身は、もう少しだけ休めば、観覧席に移動するくらいのことは出来るようになるだろう*]
無事じゃないのは、お前さんのおかげだってーの。
[ 近づいてきたベルティルデに投げた言葉は皮肉気だが、声は恨む風でもない。
手を貸そうという素ぶりを見れば、少し首を傾げてから素直に手を差し出し、意外に身軽にひょいと立ち上がった。 ]
俺の力は大体借り物だからな。そういう意味では、お前さんの方が本物の強さだ。
[ 返した言葉は謙遜でもなんでもない本音だったが、美しかったと言う賛辞には、照れたように笑った。 ]
そーか?ま、目だけでも楽しめたなら良かったぜ。
[ 言いながらも、視線はもう一組の舞闘を演じた二人の召喚者へと向かう。
メルヒオルと繋がる魔力が一瞬途切れた感覚から、勝負の行く末自体は予測済みだったが、生きている姿を改めて目にすると、小さく安堵の吐息をついた。 ]
…俺の願いは、もう叶ってる。
『それは、汝のおかげでもあるな』
[ ばさりと竜は翼を広げる、二彩の鱗がその動きに従ってバラバラと剝げ落ちるように地に撒かれた。 ]
次は皇玉とやるんだろう?
今度はお前の願いが叶うよう、祈っててやるから、格上だなんて遠慮せず、ぶっ飛ばしてこいよ。
[ 言い残して、竜は中空へと身を運ぶ、向かうのはまだ十分には動けぬ風の、
あーあ、お前もだいぶ無茶やってんなあ。
[ 竜が舞い降りたのは、メルヒオルとヴィンセントの対話が一区切りついた頃だったか。 ]
そら、向こうで休もうぜ。
[ メルヒオルが拒絶しなければ、その身を抱き上げようと手を伸ばす。 ]
あんたの相棒も、綺麗な顔して、相当容赦ねえと思ったけど、似た者同士みたいだな。
[ 去り際、ヴィンセントに視線を投げ、口にするのはやはり、恨み節にも似た言葉だが、どこかあっけらかんとした口調に、やはり、相手を責める色はない。 ]
次は、ゆっくりみせてもらうぜ。
『楽しみなことだ』
[ 言い置いて飛び立つ竜は、紅と碧にきらめく鱗を舞台を彩る飾りのように振り撒いていった* ]
……うん。
[ありがとう、と言われて>>*16、上手く言葉にならず、ただ頷くだけになり。
粒が無くなった手をゆっくりと下ろす。
ふ、と短く息を吐いていると、近くにツェーザルがやってきていた>>+14]
ツェーザル。
[動くにはまだ辛い身。
メルヒオルを抱き上げようとする彼に手を伸ばし、彼の服の一部を握り締めた。
そうしてメルヒオルはツェーザルの手で舞台の外へと運ばれて行く*]
― 月の舞台外 ―
[ヴィンセントへと渡した『薬』は無事、彼の竜>>12にも渡った模様。
こちらに黙礼してくる様子を目に留め、柔らかく口端を持ち上げた]
折角の舞台だもん、全力出せるようにしなきゃ。
[その手助けをすることは、勝ち上がった彼らに出来る唯一のことだったから。
素直に出来ぬ応援の代わり、と言ったところだ]
[もう一組からの拍手の音>>6は届いていたが、身体を動かせぬ故に反応する余裕は無かった。
メルヒオル達と入れ代わるかのように舞台に立つ彼ら。
次の闘いで此度の舞闘会の勝者が決まる。
熾烈な戦いが始まるであろうことは、場の雰囲気が物語っていた*]
[ メルヒオルを抱き上げた竜は、ゆっくりと低空飛行で月の舞台の外へと向かう。観戦していたディーターとアデルの側を掠めるように飛んで、ニッと笑みを浮かべたのは、拍手への返礼のようなものだ。
そうして、どちらも傷だらけの身を休めようと、一度個別領域の草原へと向かう。動ける程に傷が癒えたなら、当然、最後の戦いを観戦するつもりだった。* ]
[身体を動かさずにいれば、治癒は徐々に進んで行く。
ツェーザルに抱えられ移動する間も傷は塞がっていっていたが、胸に受けた深い矢傷が塞がるには時間がかかりそうだった]
[個別領域の草原へと着けば、最初にしたように大木の根元に横たえてもらう。
胸の傷に障らぬよう、仰向けに寝転がってしばしの間治癒に専念した**]
― 個別領域 ―
[草原に聳え立つ大木。
その下で寝転がり、休息を取ることしばし。
傷の治癒は進み、重症だった胸の矢傷も内と外の両方から塞がっていく。
完治にはまだ時間がかかるが、動くには支障がない程には傷は治癒していた]
ツェーザル、傷の具合は?
[魔力やメルヒオルの血が必要であれば分け与えようと問いかける。
既に流れた血では治癒の効果はない。
ヴィンセントに渡した時のように凝縮したものならば話は別だが、治癒効果があるのは鮮血の時だけだった。
血を求められるなら、最初に与えた時のように小型化したランスで指先を突く心算*]
― 個別領域 ―
[ 体の方は元気に見える竜だったが、剥がれ落ちた鱗が、ほとんど再生しないのは、やはりそれだけ、力を使ったということだろう ]
大丈夫だよ。
[ それでも傷を案じるメルヒオルに>>+21竜はそう答えて笑う ]
あー、でもお前の血は魅力的だな。
いや刺すなよ?
[ 自分に血を与えようとメルヒオルがランスの切っ先を指に向けると、慌てて止める ]
時間はあるんだから、今はいい。
それより、舞闘会のフィナーレ、見に行こうぜ。
[ ある程度回復すると、決戦の様子を見に行こうとメルヒオルを誘った* ]
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